年別アーカイブ:2023年

人事院初任研修2

2023年7月13日   岡本全勝

3日に基調講演を行った人事院の初任研修。今日は、その際に与えた課題の発表です。
90人の研修生たちが15班に別れて、与えられた課題を議論し、発表します。
指導教官は私のほかに、被災者支援本部で一緒に苦労してくれた、辻恭介君にお願いしました。去年はコロナ対策で、研修生たちは自宅や職場からのオンライン参加でしたが、今年は入間の研修所で合宿です。ただし、何人かは新型コロナに罹患して、欠席でした。

各班ともよく調べてあります。論点の整理、資料の作成、発表も良くできていました。採用されて4か月とは思えません。
これまでにない事態にどのように対処するか。その場合は、想像力の勝負になります。
各課題とも正解のない問題です。他省庁の職員と集まって議論をして、一定の結論を出す。それがこの研修の狙いです。成功でした。

講義・管理職の必須知識

2023年7月12日   岡本全勝

今日12日は、市町村アカデミーで、「管理職の必須知識」の講義をしました。これは、去年作った研修です。「市町村アカデミー新しい企画

私の分担は、この研修の意図を話すことです。
管理職に必要な知識は、大きく分けると3つだと思います。担当業務分野の専門知識、管理職の能力(事務と職員の管理)、そしてこの「必須知識」です。

そこには、情報通信技術とサイバーセキュリティ、コンプライアンス、不祥事が起きた際の広報対応、災害時の業務継続、仕事と生活の調和、セクハラやパワハラの防止、心の不調を抱える職員への対応などが含まれます。
いずれも、私が公務員になった頃は、重要視されなかった、あるいは問題にならなかった知識です。でも今は、知らないと「ケガ」をします。
この点は、意外と知られていません。多くの管理職論の書物には、書かれていないのです。

そして、このような知識は、どんどん新しくなります。性的多様性はその例でしょう。近年急速に、意識が改まりました。「一身にして二生を過ごす
すると必要なのは、「これで知識を得た」ではなく、新しく生まれる必要知識を知るという「姿勢」です。

性的多様性法、委員会審議2時間

2023年7月12日   岡本全勝

6月21日の朝日新聞夕刊「取材考記」、松山紫乃記者の「法案審議 熟議せず成立、国会の役割とは」から。

・・・通常国会の最終盤を迎えるなか、マイノリティーの人権、尊厳の擁護を目的とする法整備の動きも進んでいた。性的少数者に対する理解を広めるための「LGBT理解増進法」だ。各党の主張が異なり、与党案のほか立憲民主・共産・社民党案、日本維新の会・国民民主党案の3案があった。

国会を取材するなかで、自民党中堅議員の言葉が印象的だった。「野党の意見にも向き合い、修正協議にも応じる。国会は政局ではなく、充実した審議をもっと行うべきだ」。実際、難民認定の申請中でも外国人の送還を可能にする入管難民法の改正をめぐり、与野党の実務者が修正合意を模索した。最終的にまとまらなかったが、そのプロセスからは真摯に法案審議に臨んでいるように見えた。

LGBT法は違った。各党とも自分たちの支持者を意識した言動ばかりが目立ち、法案審議は先延ばしし続けた。修正協議の指示が首相から出たのは、衆院内閣委員会の審議入り前日の8日。維新などの案を与党が丸のみする形で協議を終えた。内閣委の審議は、わずか約2時間。その日のうちに採決され、1週間後の16日には成立した・・・

正式名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律

コメントライナー寄稿第12回

2023年7月11日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第12回「一身にして二生を過ごす」が、7月10日に配信されました。

高度経済成長によって、私たちの暮らしは大きく変化しました。私たちは今、もう一つ大きな変化を経験しています。経済成長期にできた「標準的家族の終わり」です。漫画「サザエさん」に描かれているです。夫婦と子2人の4人家族、父親は仕事に出かけ、母親は家庭を守ります。ところが今や、片働きより共働きが多くなりました。家族の数は1人暮らしが一番多いのです。

人権意識も大きく変わりました。私が就職した頃の人権教育は、同和問題が主でした。現在では、いじめや体罰、家庭内暴力、パワハラ、セクハラ、性的少数者へと広がりました。特に男女間の格差解消は、革命的な変化です。

福沢諭吉は江戸と明治の二つの時代を生き、『文明論之概略』で「一身にして二生を経るが如し」と述懐しています。明治維新に続き戦後改革でも、憲法体制が革命的に変わりました。
平成と令和を生きている私たちは、憲法は変わらなかったのに、革命的経験をしています。しかも前2度の革命より、暮らしの形と社会の意識は大きく変化しています。政治革命を伴わない社会革命です。

言語が階級を作るインド

2023年7月11日   岡本全勝

6月21日の日経新聞夕刊「映画でみる 大国インドの素顔(3)」、インド映画研究家・高倉嘉男さんの「お受験熾烈、英語力で決まる人生」から。

・・・2023年に中国を抜いて人口世界一に躍り出たとされるインドは、単に人口が多いだけでなく、若年層が総人口の半分を占める若い国でもあり、受験戦争も熾烈だ。
さらに、インドには言語が教養人と無学者を分断してきた歴史がある。庶民の言語とは異なる高等言語が政治や文学の場で使われ、その言語にアクセスできない者は無学者扱いされた。古代の教養語はサンスクリット語だったが、中世、イスラーム教の浸透に伴ってペルシア語がそれに取って代わり、英国植民地になった後の近現代では英語が教養語に躍り出た。
現在、インド人英語話者の数は総人口の1割ほどとされている。この1割がほぼそのまま上位中産階級から上流階級までの社会的上層を形成し、富と権力を手中に収めている。インドの身分制度というとカースト制度が有名だが、カースト制度以上に古代からインド社会を分断してきたのは言語だ。

近現代の都会を舞台にしたインド映画を観ると、台詞には現地語に加えて英語がかなり使われていることに気付く。単に現地語文の中に英語の単語やフレーズを交ぜるだけでなく、現地語文と英文を往き来しながら会話をする。日本人の耳には奇妙に聞こえるのだが、これが教養あるインド人の一般的な話し方であり、インド映画はかなり写実的にそれを再現している。英語を適宜交ぜながら会話をすることで、彼らは自身の教養を証明し、エリート層としての仲間意識を確認し合うのだ。
それだけではない。多言語国家インドには無数の現地語があるため、英語には共通語の役割もある。IT企業など、高収入が期待される多国籍企業が就職先として人気だが、その絶対条件も英語力だ。つまり、インドにおいて英語ができない人は、教養層から排除され、社会的・経済的な地位の向上も難しく、異なる地域から来た人とのコミュニケーションにも困ることになる・・・