黎の字の成り立ち

「黎」という字。黎明などに使います。この字の上の部分を、不思議に思っていました。上左は、のぎへんです。上右は、物の右に似ていますが、「ノ」が一本です。犂も、同じです。この分野に詳しい肝冷斎に教えを請いました。答えを要約して掲げます。

・・・まったく違う「図形記号」だからです。
「勿」は「ふつ」で、「不」と音が近いので「なかれ」と訓じられますが、本来は日月や灯・玉などから光が射しているすがたを表しています(後漢の「説文解字」では)。「物」(ぶつ)は神々しい(光が出るような)異様な特産の動物・物体をいうことばだったので、「勿」を使っています。

「黎」の方は、「犂」などと同じで、禾へんの右側(リ)は牛馬に曳かせる「すき」の象形です。人間が使う「すき」(「力」りき)とほとんど同じ形のものです。「利」の旧字です。
「黎」字は「黍(きび)」に「リ」が付いた、と説明されています。すきとキビでたくさんの実がなって「多い」の意味。「黎民」、多く人民が集まるとその頭が黒いことから「黒い」という意味になり、暗闇の意味を持ち、暗闇の中に明るさが兆すのが「黎明」だ、といわれています・・・

それなら、利にしてくれればよかったのに。

日本的思考パターンへの苦言

川北英隆・京都大学名誉教授のブログ、5月18日の「日本的思考パターンへの苦言」から。詳しくは、原文をお読みください。

最近、1990年頃からの30年強の間、日本経済が何を考えてきたのかを、当時の指揮者であり識者だった人達にヒアリングしている。そこで分かってきたことが3つある。
1つは、90年以降の日本のバブル崩壊について、当時は何も知見がなかったことである。
2つに、日本の金融システムが揺らぐとは誰も考えなかったことである。政府の統制下にある金融というか銀行が不健全になるとは、想定外だった。
3つに、将来ビジョンを描く必要性である。
現実化したリスクに対処するには、リスクをある程度処理できたとして、その後にどのような世界を作ろうとするのか、そのイメージが明確でないと、リスクへの対処が行き当たりばったり、つまりパッチワークになる。この点は今の日本に一番欠けているというか、ほとんど誰も想定していないことではないのか。日本という経済社会の最大の抜けであり、課題である。

連載「公共を創る」第151回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第151回「橋本行革における4分類」が、発行されました。
今回から、第4章3「政府の役割の再定義」に入ります。これまでの150回の議論を踏まえ、結論を導きます。活力と安心に満ちた社会を取り戻すためには、どうしたらよいのか。行政は何をなすべきか。
冒頭に、これまでの150回を、簡単に要約しました。

まずは、政府の役割を整理します。手始めに、2001年に実行された省庁改革の際に、橋本龍太郎首相が提案した国家機能の4分類と、それを基に藤田宙靖先生が整理された行政目的別の機能分類を説明します。

本土の沖縄論

5月16日の朝日新聞オピニオン欄「沖縄の語り方」、安里長従さんの発言から

・・・歴史をたどれば、薩摩藩による琉球侵攻は経済搾取でしたし、沖縄戦もあった。米統治下における人権の制限、復帰後も日米安全保障条約を維持するための装置としての沖縄振興の問題もある。歴史的に続く非対称な権力関係の中での貧困問題なのです。

本土の左派は沖縄に寄り添うと言いますが、日米安保に反対なので沖縄から本土への米軍基地移転に反対します。結果、基地は沖縄に置かれ続ける。沖縄の負担軽減が目的ではなく、自分たちの願望を実現するために沖縄を手段として語っているわけです。

ここには構造的な差別があります。本土が優先され、沖縄が劣後という構造的差別です。沖縄の貧困も基地問題も、「自由の不平等」という同じ根から生じた構造的な問題なのです。でも、本土の沖縄論はそこに触れません・・・

古語解説「灰皿」

かつて、どの職場にもあった道具。たばこを吸う際に灰を捨てたり、吸いかけのたばこを置くための道具。灰を溜めるために、縁が盛り上がり皿状になっていた。またその縁に、火のついたたばこを置く溝があった。

幹部の部屋や個人宅の応接室の卓には、大きなガラス製のものが置いてあり、未使用のたばこ入れや、立派なライターがそろいで置いてあった。
会議室などでは、簡易なアルミ製の円盤状のものが置いてあった。これは時には、議論が激高すると投げつけれれ、宙を舞うことがあった。軽くて円盤状なので、よく飛んだ。この行為を「灰皿を投げる」と呼ぶ。
灰や吸い殻がたまった灰皿を洗うのは、若手職員か女性職員が朝に出勤して行う仕事とされた。

近年は、公共の場では喫煙が禁止され、灰皿も置かれなくなった。若手職員に聞いたら、「私が採用されたときには、灰皿はありませんでした。流し場の棚の上に置いてあるアレですか?」と答えが返ってきた。
古語解説「気配り