黎の字の成り立ち

「黎」という字。黎明などに使います。この字の上の部分を、不思議に思っていました。上左は、のぎへんです。上右は、物の右に似ていますが、「ノ」が一本です。犂も、同じです。この分野に詳しい肝冷斎に教えを請いました。答えを要約して掲げます。

・・・まったく違う「図形記号」だからです。
「勿」は「ふつ」で、「不」と音が近いので「なかれ」と訓じられますが、本来は日月や灯・玉などから光が射しているすがたを表しています(後漢の「説文解字」では)。「物」(ぶつ)は神々しい(光が出るような)異様な特産の動物・物体をいうことばだったので、「勿」を使っています。

「黎」の方は、「犂」などと同じで、禾へんの右側(リ)は牛馬に曳かせる「すき」の象形です。人間が使う「すき」(「力」りき)とほとんど同じ形のものです。「利」の旧字です。
「黎」字は「黍(きび)」に「リ」が付いた、と説明されています。すきとキビでたくさんの実がなって「多い」の意味。「黎民」、多く人民が集まるとその頭が黒いことから「黒い」という意味になり、暗闇の意味を持ち、暗闇の中に明るさが兆すのが「黎明」だ、といわれています・・・

それなら、利にしてくれればよかったのに。