年別アーカイブ:2022年

公明新聞に寄稿しました。

2022年1月21日   岡本全勝

1月16日付の公明新聞に、「社会的弱者への支援」を寄稿しました。「潮流2022」という、さまざまな社会情勢について識者が執筆する欄だそうです。

私への依頼は、コロナ禍で深刻化する孤立・孤独対策や貧困対策など行政だけでは手が行き届かない支援を行政、企業、非営利団体などの民間とどのように進めていけばいいのか、震災復興を通じて得た経験も踏まえ、課題や提言を書いてほしいとのことでした。

この問題は、行政より先に非営利団体が活躍しています。
日頃考えていること、連載「公共を創る」で主張していることを述べました。すなわち、行政だけでなく企業や非営利団体の役割が重要だということ、これまでの社会保障のようなサービス提供では支援にならず、寄り添い型の支援が必要だということです。

インターネットでの個人監視

2022年1月21日   岡本全勝

1月17日の日経新聞オピニオン欄「個人データ、活用と保護 実務者や識者に聞く」、ハーバード経営大学院名誉教授ショシャナ・ズボフさんの「監視資本主義の克服を」から。
・・・ネット利用者がいま何を検索し、どんなウェブサイトを見ているか情報収集する方法を米グーグルが発見してから20年あまりたつ。この間私たちは20世紀に確立した個人の権利保護の制度がデジタルの時代にうまく機能しないことをよく認識せず、ネット企業の行動を放任してきた。
その結果、リアルの社会では家宅侵入やのぞき見を許容しないのに、パソコンやスマートフォンで個人が何を見ているか企業が勝手に監視・記録し、そのデータを収益に変える行為を許してきた。これまでの産業資本主義では自然資源を原料にしたのに対し、21世紀には監視データを原料とする「監視資本主義」が成立したといえる。
監視資本主義的な企業活動は現時点では合法だが、決して正当ではない。不当な行為を非合法にするために、ネットとデジタル技術の存在を前提にした新しい権利の憲章と法律の整備が必要だ。

オンラインサービス企業は利用規約を通じ情報取得について利用者の合意を得ていると主張する。しかし、ほとんどの人は規約の中身を読まない。それを知りながら規約で広範囲な「合意」を強いている。
金融商品の約款など一方的な合意取得の商慣習は以前からあったが、デジタル時代になって乱用が激しくなった。それに法律が追いついていない。利用者がきちんと認識していない監視行為は違法とすべきだ。すべてのサービス提供者はどんな監視行為をしているのか具体的に明示したうえで本当の合意を得るよう、義務付ける必要がある・・・

連載「公共を創る」105回

2022年1月20日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第105回「産業政策と日本の発展」が、発行されました。
前回から、政府による市場経済への介入を説明しています。今回はその3番目「国民を豊にする」政策です。そこには、産業政策、科学技術振興、雇用確保と労働者保護、社会の持続などがあります。

まず産業政策です。財政の経済安定化機能とは別に、特定の産業について計画や規制、財政や税制などの手法を用いて支援が行われます。
1991年のバブル経済崩壊後、幾度となく巨額の経済対策が打たれました。それは景気低迷を抑える効果はあったのでしょうが、日本の産業が世界の競争から落後することを防ぐには効果がありませんでした。この30年間、先進国や中進国が経済成長を続けたのに対し、日本は停滞しました。1人当たり国内総生産(GDP)で米国などに差をつけられ、韓国に抜かれました。景気刺激策と産業政策とは別なのです。

日本は明治以来、産業政策を重要な国家政策として進めてきました。それが、一時は世界第二位の経済大国を実現したのです。

安全保障としての感染症薬

2022年1月20日   岡本全勝

1月15日の朝日新聞経済面連載「瀬戸際の感染症ビジネス5」「平時も売る「消火器モデル」提唱」から。
・・・菌やウイルスのライブラリーは維持費や購入費で年間数億円にのぼる。化合物も室温の調整やロボットでの管理など、費用がかさむ。これらは感染症が流行しようがしまいが、毎年のしかかる負担だ。
塩野義の2019年度と20年度の決算は2期連続の減収減益だった。大きな要因が、主力の「ゾフルーザ」などインフルエンザ治療薬の不振。18年度は295億円あった売り上げが19年度は24億円、20年度は3億円と激減した。この2年間、インフルが流行しなかったことが原因だ・・・

・・・塩野義が新型コロナのワクチンと治療薬の開発に乗り出したことに、投資家から懸念の声が上がった。インフルと同様、収束すれば収益を得られない可能性があるからだ。塩野義の手代木功社長は「ビジネスとして成り立つわけがない」と打ち明ける。
危機感を募らせる手代木社長が提唱するのが、自ら「消火器モデル」と名付けた仕組みの創設だ。火事に備えて設置する消火器は定期的に交換するが、使われなくても不満に思う人はいない。同様に感染症の治療薬も、流行に備えて平時から売れれば、ビジネスとして成立する、と考えた。要は国が定期的に治療薬を買い上げる制度だ。

海外では、感染症を国家の安全保障上のリスクととらえ、製薬会社を支援する仕組みを整える国がある。内閣官房によると、米国は、平時でも感染症関連に年間5千億円以上を投じ、研究開発を促す。英国は薬を開発した会社に毎年定額料金を前払いし、必要なときに薬を受け取れる「サブスクリプション」の制度を導入した。
日本政府も新型インフルの流行後、タミフルやイナビルなどの治療薬を備蓄する制度を設け、平均して年間100億円前後を備蓄分の更新にあてる。ただ、備蓄は一部の治療薬のみで、薬の有効期限の関係で更新しない年もあり、研究する企業に安定してお金が入るわけではない。
手代木社長は言う。「事業を持続できるかどうかが重要だ。新しいビジネスモデルができなければ急性感染症の治療薬をやめることも考えないといけない」・・・

1月17日の日経新聞1面は「重要物資、供給網を支援 半導体や医薬品 政府、投資計画促す」を伝えていました。
・・・政府は社会・経済活動に不可欠な物品の国内調達を維持するため、サプライチェーン(供給網)の構築を財政支援する仕組みを新設する。半導体や医薬品を支援対象に指定し、事業者の研究開発を後押しする。米欧が同様の支援に乗り出しており、日本も経済安全保障の目玉の一つに据えて日本企業の国際競争力の向上につなげる・・・

高野陽太郎「日本人論の危険なあやまち」

2022年1月19日   岡本全勝

高野陽太郎著「日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠」 (2019年、ディスカヴァー携書)をお勧めします。痛快です。このような表現は、社会科学の書物には、ふさわしくないのでしょうが。

「日本人は集団主義的だ」という日本人論の常識を、国際比較、特に個人的だと言われるアメリカ人と比べて、日本人が集団主義ではないと立証します。
では、なぜ「日本人は集団主義的だ」という言説が「常識」になってしまったのか。そのような言説が生まれ受け入れられる社会的状況、さらにはそれを否定したした研究が受け入れられないことを説明します。「日本人は集団主義的だ」を否定する言説は「商売にならない」ので、論文にも書物にもならないのです。

私は、山岸俊男著『信頼の構造』(1998年、東大出版会)を読んで、目から鱗が落ちました。日本社会は信頼の高い社会といわれていましたが、それは身内には親切ですが、ソトの人には冷たい社会でした。社会一般に信頼関係が強いものではなかったのです。ソトの人との接触が増えると、この弱点が見えてきます。

もう一つ、集団主義には、能動的集団主義(積極的集団主義)と受動的集団主義(消極的集団主義)があるというのが、私の説です。日本人の集団主義は決められたことを受け入れる受動的集団主義であり、組織や社会をつくることに積極的に関与する能動的集団主義ではないのです(連載「公共を創る」第66回、70回)。日本人の多くは、実は自分を大事にする個人主義のようです。世間の目が厳しく、独自行動をとると批判されるので、大勢に従っているのです。社会参加する人が少ないことも、これを裏付けています(連載第34回、55回)。

髙野先生には、同じ問題を扱った「「集団主義」という錯覚」(2017年、新曜社)」もあります。また、「鏡映反転-紀元前からの難問を解く」(2015年、岩波書店)も、先生の著作だったのですね。先生のホームページ「チコちゃんは知らない」。