インターネットでの個人監視

1月17日の日経新聞オピニオン欄「個人データ、活用と保護 実務者や識者に聞く」、ハーバード経営大学院名誉教授ショシャナ・ズボフさんの「監視資本主義の克服を」から。
・・・ネット利用者がいま何を検索し、どんなウェブサイトを見ているか情報収集する方法を米グーグルが発見してから20年あまりたつ。この間私たちは20世紀に確立した個人の権利保護の制度がデジタルの時代にうまく機能しないことをよく認識せず、ネット企業の行動を放任してきた。
その結果、リアルの社会では家宅侵入やのぞき見を許容しないのに、パソコンやスマートフォンで個人が何を見ているか企業が勝手に監視・記録し、そのデータを収益に変える行為を許してきた。これまでの産業資本主義では自然資源を原料にしたのに対し、21世紀には監視データを原料とする「監視資本主義」が成立したといえる。
監視資本主義的な企業活動は現時点では合法だが、決して正当ではない。不当な行為を非合法にするために、ネットとデジタル技術の存在を前提にした新しい権利の憲章と法律の整備が必要だ。

オンラインサービス企業は利用規約を通じ情報取得について利用者の合意を得ていると主張する。しかし、ほとんどの人は規約の中身を読まない。それを知りながら規約で広範囲な「合意」を強いている。
金融商品の約款など一方的な合意取得の商慣習は以前からあったが、デジタル時代になって乱用が激しくなった。それに法律が追いついていない。利用者がきちんと認識していない監視行為は違法とすべきだ。すべてのサービス提供者はどんな監視行為をしているのか具体的に明示したうえで本当の合意を得るよう、義務付ける必要がある・・・