月別アーカイブ:2019年8月

連載執筆状況

2019年8月4日   岡本全勝

みなさん、お元気でお過ごしですか。梅雨が明けると、とても暑い日が続いています。今年の暑さは、こたえますねえ。

とはいえ、連載「公共を創る」の締めきりは、待ってはくれず。あんなにたくさん書きためたと思っていたのに、あっという間に、貯金が残り少なくなりました。
続き(第1章3(3)主体と手法の拡大)は7月中旬にはほぼ書き上げ、不安なところを関係者に確認してもらっていました。他方で、右筆に手を入れてもらうことを督促して、昨日、完成させました。

ここのところ、昼もなにかと用務が入り、夜は異業種交流会が続いています。昨日は冷房を入れて、頑張りました。

経済政策の課題

2019年8月3日   岡本全勝

7月29日の日経新聞経済教室、小峰隆夫・大正大学教授の「参院選後の安倍政権の課題(上) 社会保障改革議論 超党派で
・・・参議院選挙が終わった。今回の選挙結果は直接的に安倍政権の経済政策に修正を迫るものではない。だがこれを機に、選挙前から引き継がれてきた課題や選挙中に各党が繰り広げた議論を踏まえて、これからの経済政策に求められる基本的な方向を3つ指摘したい・・・

・・・第1は非常時型の実験的・冒険的政策から平時の正統的な政策への回帰を図ることだ。バブル崩壊後の約30年の日本経済は資産価格の暴落、不良債権問題、デフレ、金融危機、2008年のリーマン・ショックなど、次々に未知の課題に直面した。いずれも前例のない出来事だったため、対応は実験的な試行錯誤の連続とならざるを得なかった。
その結果、ゼロまたはマイナスの超低金利が続き、日銀が新規発行される国債を買い占めるとともに一般企業の大株主となり、先進国中最悪の財政状態になった。財政金融政策の姿は持続不可能なものといえる。
一方で、経済の現状はもはや異例の政策対応を必要とするような異常時とは言えない・・・

・・・第2は生産性の向上に本気で取り組むことだ。長期的にみた日本経済の最大の課題は、生産年齢人口の減少(人口オーナス=負荷)という流れに対抗して、生産性を引き上げ、持続的な成長を実現することだ・・・前述の期間、日本の労働力人口は0.7%増加する一方、労働力人口当たりの生産性は0.5%の上昇にとどまる(図参照)。主に動員型で対応してきたということだ。生産年齢人口が減ったのに労働力人口が増えたのは、それまで労働力人口ではなかった女性、高齢者、外国人が参入したからだ。
こうした動員型の対応はいずれ限界に達するから持続可能ではない。また新たに参入してきた労働力は、賃金や生産性の低い非正規労働が中心だった。これが、雇用情勢が逼迫しているにもかかわらず平均賃金があまり上昇せず、平均的な労働生産性も高まらない主要な理由の一つだ。今後は労働者1人当たりの生産性の上昇を主要な目標として成長戦略を練り直すべきだ・・・

・・・第3は超党派で財政・社会保障改革に取り組むことだ。持続的な財政・社会保障の構築が日本経済にとって最重要の課題だと誰もが分かっている。だが参院選での各党の議論は、とても問題の解決に向かっているとは思えないものだった・・・
・・・財政・消費税・年金などの問題は、真剣に議論すれば国民負担を伴わざるを得ない。こうした問題を政争の具、選挙の争点にすると、負担を嫌がる国民にこびる公約が乱発され、問題解決からは遠ざかるばかりとなる。参院選でこのことが改めて確認されたといえる・・・

連載「公共を創る」第12回

2019年8月2日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第12回「哲学が変わったー成長から成熟へ 東日本大震災が覆した常識」が、発行されました。
今回からは、東日本大震災という個別の災害対処でなく、それを日本社会の変化や行政の役割の変化という、大きな構図の中に位置づけてみます。

大震災は、私たちが持っていたいくつかの「常識」を覆しました。それは、日本社会の基底で起きている変化を、露見させたのです。
日本は災害列島であること。防潮堤で守り切ることはできず、逃げることも必要であること。防災とともに、減災が重要であること。原発が安全だというのは神話であったこと、などです。

「ヒトラーの時代」

2019年8月2日   岡本全勝

池内紀著『ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか』(2019年、中公新書)を読みました。帯にあるように、政界デビューから人気絶頂期まで、1925年から1939年までの15年間です。

第2次世界大戦を引き起こし、ユダヤ人の大虐殺を行った「希代の悪人」です。それが、20世紀のドイツに、そして当時最も民主的と言われたワイマール憲法の下に現れます。政治と行政の大した経験もなく、「民主的手続き」で独裁者になります。そして驚くべき蛮行を実行します。
どうして、ドイツ国民は彼を選び、熱狂的に支持し、蛮行に手を汚したか。これまでに、多くの研究や書物が出ています。この本は、新書版という小さな、だから読みやすい形で、分析しています。

なんと言っても、第1次世界大戦後の、ドイツの天文学的インフレ、社会の混乱、そして秩序をもたらさない政府が、ヒトラーの出現を許した背景でしょう。
彼が政権に就いてから、次々と良い政策を行います。インフレの沈静、大量の失業者の解消、社会保障、労働者保護などなど。労働者への旅行の提供、フォルクスワーゲン・アウトバーン・国民ラジオ、そして(格好良い)制服などなど。国民に取り入る政策や文化の数々が紹介されます。それらがなくては、独裁だけでは政権は長持ちしなかったでしょう。
国民への宣伝にも、これまでにない新機軸を打ち出しましたが、宣伝だけで国民の支持を得て、そしてつなぎ止めることは難しいでしょう。
4年で政権を退いていたら(死んでいたら)、ドイツ史上最も偉大な人物として歴史に残っただろう、という意見もあります。

しかし、それら新政策と同時に、異論を許さない全体主義国家、ナチス以外を認めない一党独裁、収容所建設を進めていたのです。彼が発案した、あるいは指導したとしても、それを受け入れ実行した多くの国民がいたからこそ、実現したものです。
それらに手を貸した人たち、また見て見ぬふりをした人たち。残念ながら新書版の大きさでは、それらを望むのは、無い物ねだりですね。

「アルプスの少女ハイジ」

2019年8月1日   岡本全勝

「アルプスの少女ハイジ」って、皆さんご存じですよね。かつて、テレビのアニメでも、ヒットしました。小説を読んだことがない人でも、足の悪いクララが、ハイジに助けられて、アルプスの大自然の中で、歩けるようになったということは知っているでしょう。私も実は、その程度しか知らなかったのですが。

NHK番組「100分de名著」6月は、『アルプスの少女ハイジ』だったのです。私は放送は見ずに、テキストを読みました。松永 美穂著『シュピリ「アルプスの少女ハイジ」』(2019年、NHK出版)です。

紹介に、次のようにあります。
「世界的な人気を誇る日本のアニメ作品が、ゲーテによる教養小説の流れを汲み、19世紀のヨーロッパ社会や宗教観を色濃く反映した原作をもとに作られたことは、あまり知られていない。登場人物の心の葛藤や闇、豊かな宗教性・自然観にも焦点を当て、アニメには描かれていない原作の深淵な魅力に迫る」

両親を亡くし、山のお爺さんに育てられるハイジが、経験を積んで成長していくことが、この物語の一つの主題です。
そして、150年後に読む私たちにとっては、当時の社会を理解する、歴史学として読むことができます。19世紀後半の貧しいスイスの山の暮らし、工業化が進むドイツの都市。そこをつなぐ鉄道ができて、この物語が成り立ちます。それにしても、親を亡くした子供の多いこと。かつては、それが当たり前だったのです。
童話と思わずに、お読みください。松永さんの解説を読んでから、原作を読むと、勉強になるでしょう。