年別アーカイブ:2018年

原発被災地復興の難しさ

2018年3月4日   岡本全勝

3月4日の朝日新聞社会面は、大きく「復興、ふるさとに違和感 拠点整備、住民感覚とズレ」を伝えています。
・・・福島県の復興も着実に進んでいる。ただ、7年という歳月が経ち、国や自治体が目指す「復興」と、本来は主人公であるべき住民との間で、溝が深まりつつある・・・

復興の苦労を伝えていただき、ありがとうございます。ただし、この文章を読むと「違和感」があります。住民が帰還をためらっているのに、自治体や国が復興を急いでいるようにも読めるのです。
住民の間に、復興を急いで欲しい人と、そうでない人、さらにはもう戻らないという人がいるのです。その住民の意向を集約して、自治体が復興計画を作っています。それを、国が支援しています。
もし住民の意向を「尊重する」なら、復興に手をつけない選択肢もあります。町と復興庁による住民意向調査で、「帰還しない」という回答が6割や5割の町もあります。もしこれが「民意」とするなら、復興はしないことになります。しかし、帰還したいという住民が一定程度おられ、その方の要望に応えるために、復興拠点を作ろうとしているのです。
特に、帰還困難区域は当分の間帰還できないので、土地と建物については全損賠償し、営業損害賠償のほかに、精神損害と故郷損失賠償も払われました。「戻ることができない」という前提だったのです。それが、射線量が下がり、一部ですが復興拠点を作り、5年後の帰還を目指しています。

残念ながら、戻らないという方が多くおられる中で、元通りの町に戻ることはありません。そのような条件の下で、どのような町を作るか。住民も町役場も苦労しています。もちろん、国も。
行政と住民の間にズレがあるのではなく、住民と住民の間に溝があるのです。

この記事の末尾近くには、次のような主張も書かれています。
・・・ただ、駆け足で進む復興に追いつけない被災者は少なくない。地域や住民のつながりは引き裂かれ、地元の風景も大きく変わった。国や自治体が進める復興の針路は「ふるさとの再生」といえるものだろうか。原発事故前の暮らしを取り戻すことを願う被災者との溝は、国などが復興を急げば急ぐほど深まっている・・・
ということは、朝日新聞の主張は「復興を急ぐな」ということなのでしょうか。あるは、「復興をするな」という主張でしょうか。どのようにすれば良いのでしょうか。

『明るい公務員講座2』準備中

2018年3月4日   岡本全勝

『明るい公務員講座』続編を作成中です。名づけて『明るい公務員講座 仕事の達人編』。
前著『明るい公務員講座』は、初級編でした。『明るい公務員講座 仕事の達人編』では、次の段階に進むため、できる職員になるための、仕事のこつをお教えします。中堅職員、課長昇格を目指している職員向けです。
できる職員になるためには、今の仕事に上達するとともに、判断力が必要になります。前者には「職場の技能」が、後者には「考える力と伝える術」が必要です。
経験を積むと仕事に上達します。しかし、のんべんだらりとしていては、できる職員にはなりません。上達しようという心構えが必要です。技術とともに、心構えが必要なのです。難しい仕事から逃げているようでは、できる職員にはなりませんよね。

連載「明るい公務員講座」のうち『明るい公務員講座』に入れた残りと、「明るい公務員講座・中級編」の一部を再構成しました。職場で必要な技術と心構えのほかに、職場の無駄についても解説しました。働き方改革には、職場の無駄を削減することが必須です。

連載した内容をどのように再構成するか、かなり悩みました。「この本では、何を伝えたいか」。その観点から再構成すると、きれいに整理できました。
文章も、大胆に削除しました。「せっかく書いたんだから、残しておきたいなあ」とも思うのですが。読みやすくするために、ばっさり削りました。
構成は決まり、文章を磨くために、ゲラに手を入れています。編集長にせかされて、新幹線中でも、せっせと作業しています。

大山健太郎・アイリスグループ会長、需要を生みだす。

2018年3月3日   岡本全勝

今日は、福島県郡山市へ。一つお祝い会に顔を出した後、福島相双復興推進機構が主催した「復興シンポジウム」で大山健太郎・アイリスグループ会長のお話を聞いてきました。
勉強になりました。「モノをつくって売る」(プロダクトアウト)から「市場のニーズに合わせる」(マーケットイン)へ、そして「消費者の要求を創り出す」(ユーザーイン)へと変身して、アイリスグループを育ててこられたことがよくわかりました。園芸用品もペット用品も、これまでになかった商品、愛好家が欲しがる商品を開発してこられました。
このページでも紹介している「低温精米」のお話しもありました。生産者や販売者の立場、これまでの考えにとらわれていると、出てこない商品です。今は、3大コンビニチェーンの全国のお店で、売られているとのことです。「アイリスの生鮮米

「帰還しないと決めた人がいるので、元の状態には戻らない。どのようにして新しい町をつくるかだ」という指摘も、適確です。

茶の湯 藪内家

2018年3月3日   岡本全勝

NHK趣味どきっ、3月は、「茶の湯 藪内家」です。本屋でテキストを見つけて、買ってきました。
富山県庁勤務の時に、県庁茶道部に入って、お茶を教えてもらいました。それが、藪内です。西本願寺に連れて行ってもらって、お茶をいただくことも経験しました。その後、機会がなく、袱紗もしまったままです。お茶の点て方どころか、飲み方まで、作法をすっかり忘れてしまいました。

もっとも、お詫びの記者会見の際に、役に立ちました。日経新聞夕刊コラム「あすへの話題」2月1日「お詫びの訓練」にも書きました。

金井利之著『行政学講義』

2018年3月2日   岡本全勝

金井利之著『行政学講義ー日本官僚制を解剖する』(2018年、ちくま新書)を紹介します。
行政学講義と銘打ってありますが、少々変わった行政学講義です。著者自身があとがきで、「多くの教科書とは、かなり異なる構成になっています」と書いています。帯には「支配と権力にさらされる被治者のための教科書」と書かれています。

行政学というより、国民統治の機構と機能、日本の実情についての解説です。通常思い浮かべる国の各省庁と自治体役場の解説ではありません。目次にも、「被治者にとっての行政」「支配と行政」といった項目が並んでいます。
日本の国政を対象とした政治学に近いです。統治の機構としては、構成員として政治(政治家)と行政(事務職、職業公務員)があります。この本では、それらをひっくるめて「行政」としています。私の整理では、政治は権力、行政は政策で象徴できると思います。その点で、この本では政策については詳しくは論じられていません。

また、制度や仕組みの説明ではなく、社会的機能など社会学的な説明が多いです。省庁の内部事情に詳しく、新聞記事には出てくるけど教科書など書物には出てこない話もたくさん書かれています。
日本が実質的にアメリカの自治体であると規定して、様々な見方をするなど、著者独自の見立ても多いです。
初心者より、上級者向けの本と思います。