作業工程の共有

3月19日読売新聞「震災6年」は、青柳隆・元ルネサスエレクトロニクス那珂工場長のインタビューを載せていました。
那珂工場は、自動車用のマイコンを作っている工場です。これは、エンジンや変速機の制御に欠かせない部品で、世界の約4割、日本の約6割を占めています。この工場が被災したことで、日本の自動車生産が止まる恐れがありました。復旧に際しては、取引先の自動車メーカーが社員を応援に出してくれて、9月復旧予定が、6月には生産が再開することができました。取引先からの応援は、ピーク時には1日2,500人、延べ8万人だったそうです。その状況や教訓は、原文をお読みください。ここでは、応援を受けた際の言葉を紹介します。

・・・「トヨタ生産方式」の手法も活用させてもらった。大部屋を設け、組織図からすべての作業の工程まで最新の情報を壁に貼りだし、情報共有を徹底する。復旧計画が前倒しされる中でも、大部屋に行けば誰もが一目で現状を知ることができ、作業が円滑に進んだ・・・

私も、常に心がけていることです。職員は、部分部分を担当しています。その際に、全体はどうなっているのか、そして自分がどの部分を担っているのかを知ってもらうことが重要です。すると担当者は、自分がしなければならないことを理解するとともに、関連部署に対して「ここはどうなっているの?」と問い合わせたり、「ここを忘れているのでは」と指摘することができるのです。
全体工程を管理するのはもちろん、トップの役割ですが、細かいところまでは把握できません。大きな方向と関係者への役割分担を決めて、後は担当者に任せる必要があります。そして、担当者から「ここはおかしいのでは」「ここが抜けています」といった指摘をもらって、全体工程表を修正していきます。

そのためには、全体の工程表と役割分担を、関係者に見せる必要があります。まずは、それぞれを1枚の紙にすることです。それを壁に張り出したり、パソコンでみんなが見ることができるようにします。それを、毎日のように必要に応じて更新していきます。
また、大震災の被災者支援や復興では、住民や自治体、国民、マスコミにも、課題と進捗状況を知ってもらう必要がありました。それは、ホームページに載せることで、誰でもどこからでも見ることができるようにしました。現在も、インフラ復旧などは、それを続けています。

原発事故への偏見

福島民友新聞社が、「復興の道標 不条理との闘い」を連載しています。
・・・震災、原発事故から間もなく丸6年。「福島は危険」といった偏見などゆがんだ見方は国内、海外で根強く残る。正しい理解をどう広げるか、必要な取り組みを考える・・・

原発被災地では順次、避難指示が解除され、生活を再開する準備を進めています。ところが、風評という大きな課題が見えてきました。一つは、福島産の農産物が売れないことです。もう一つは、観光客特に学生の修学旅行が戻らないことです。もっとも、これらについては、安全性を広報して、徐々に解消しつつあります。
もう一つの大きな問題は、偏見です。「福島は危険だ」という根拠のない見方が、ごく一部の人とはいえ生じているのです。避難者がいじめに遭ったりしています。

福島民友の取り組みは、的確です。しかし、そのような偏見を持っているのは、福島県外の人なのです。その人たちに、どのようにして正しい認識を持ってもらうか。大きな課題です。
残念なのは、部外者が「よかれ」と思って、福島の一部のことを発言されることです。悪意はないのですが、誤解を広げてしまうことがあります。難しいことです。

上手な事故対応を学ぶ

3月7日の読売新聞に、辻伸弘さんの「サイバー攻撃 事後対応で評価」が載っていました。
・・・サイバー攻撃が巧妙化する中、セキュリティー事故はどんな組織で起きても不思議ではない。
ひとたび、情報漏洩などが発覚すれば、社会から糾弾され、時には「袋だたき」にあうこともある。セキュリティー対策の甘さや対応の遅れが検証されることは当然必要だ。だが中には、発覚後の情報開示や再発防止策の内容の感心させられるケースもある。きちんと対応したところと、ほとんど何もしなかったところが同じように扱われるのはおかしいのではないかー。
そんな問題意識から、私を含むセキュリティー業界の有志5人で昨年から始めたのが「情報セキュリティ事故対応アワード」である。情報開示と説明責任の観点から事後対応を評価し、表彰する取り組みだ。事故を起こしたことを責めるばかりでは萎縮してしまう。むしろ適切な対応を褒めることで社会全体の対応を向上させようという「北風より太陽」作戦である・・・

詳しくは原文をお読みいただくとして、今年の表彰結果がインターネットで見ることができます。

慶應大学での講義・2017年、2018年

2017年4月から、慶応大学法学部で非常勤講師を勤めています。

2018年
春学期・地方自治論Ⅰのページ
春学期・公共政策論のページ
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2017年
春学期・公共政策論のページ
春学期・地方自治論Ⅰのページ
秋学期・地方自治論Ⅱのページ

かつての慶應大学での講義のページ(2007年、2008年、2010年)。

2017年春学期・地方自治論Ⅰ

2017年春学期・地方自治論Ⅰ―地方行政の仕組み
(金曜日1限)。講義の記録

日本の政治と行政は、中央政府と地方政府によって担われています。そして行政サービスの多くは、自治体が提供しています。また、地方自治は、「民主主義の学校」とも呼ばれます。選挙を通じて代表を選び、税金を負担し、行政サービスを受けます。
春学期は、地方自治の仕組みと機能を学びます。

授業計画
1 授業計画の説明。中央政府と地方政府1―地方自治の意味
2 中央政府と地方政府2―国の仕事と自治体の仕事
3 中央政府と地方政府3―自治体の多様性
4 自治体の仕組み1―市役所の仕事
5 自治体の仕組み2―市役所の仕組み
6 自治体の仕組み3―議会
7 自治体の仕組み4―議会と執行部
8 自治体の仕組み5―法律、条例、予算
9 自治体の仕組み6―地方公務員
10 自治体の仕組み7―行政改革
11 統治と自治1―憲法と地方自治
12 統治と自治2―住民の政治参加
13 統治と自治3―コミュニティ
14 地方行政の成果と課題
15 まとめ

秋学期・地方自治論Ⅱ(自治体と地域の経営)は、役所の経営(特に地方財政)と、地域の経営(地域の課題と取り組み)を学びます。