今日11日のNHKクローズアップ現代は、「新戦略 “日本式”生活習慣を輸出せよ」でした。アジアで、日本式生活が売れているという話です。上海で、スーパー銭湯が大流行。チベットで、日本式の検診車が喜ばれ、検診データは日本で読み取っている例。ベトナムで、日本式の給食が受けている例などです。
ものではなく、サービス。それも、清潔、安全、丁寧、新設、高度などが、売りです。かつてこのホームページで、原研哉さんの「日本が提示する生活文化」(2009年10月15日)などを紹介しました。原研哉著『日本のデザイン―美意識がつくる未来』(2011年、岩波新書)。
明治維新以降、日本は欧米にあこがれ、服装や食べ物、机椅子などたくさんの生活様式を輸入しました。戦後も、アメリカンライフにあこがれ、ジーパン、コカコーラ、マクドナルドを買い求めました。それらも、単なるモノではなく、生活習慣や生活体系として受け入れたのです。TVのホームドラマを見て、暮らし方に「あこがれ」たのです。もちろん、もう一つのキーワードは、豊かさへのあこがれです。
かつて、私たちはアメリカのファッション雑誌をうらやましく眺めましたが、今アジアでは日本の雑誌が受けています。新興国で、日本の生活様式が受け入れられるかどうか。それは、清潔、おいしい、安心だという「品質」とともに、日本国や日本人の生き方が「あこがれ」の対象となる必要があります。
押し売りや押しつけは、できません。向こうさんが、その気になってくれないとダメなのですから。しかし、サービスを輸出することは、できます。また、単品では、すぐにまねをされてしまいます。全体としての生活様式であり、それぞれのサービスに共通する日本人的清潔・安心・おもてなしです。
月別アーカイブ: 2013年11月
日本発、ダントツ商品、ダントツサービス・・
11月8日読売新聞連載「日本ブランド」、坂根正弘・コマツ相談役の発言から。
坂根さんは社長時代に、全地球測位システム(GPS)などで機械の現在地や稼働状況を把握できるシステム「コムトラックス」の標準装備化を進めました。ライバル社の追随を許さない商品やサービスの提供で、業績を大幅に改善しました。
・・コムトラックスはもともと、建機の盗難対策として有料でつけていましたが、お客様から「メンテナンスに来てほしい」と山奥に呼ばれても場所を聞かずに済み、台数が増えるにつれ、稼働状況から市場の変化が把握できるようになった。社長就任後、これは自分たちにメリットになると考え、標準装備にし、「ダントツ商品」になりました。販売で力を入れた中国でも、巨大市場の動きが手に取るようにわかり、速やかに生産台数を増やしたり、タイミング良く生産調整をしたりできたのです。
ただ、ダントツ商品はいずれ、ライバル企業に必ず追いつかれてしまいます。コムトラックスは今、「ダントツサービス」の段階に来ています。今後は、お客様の問題を解決する「ダントツソリューション」、現場力の勝負になります。そこで強みを発揮するのが、チームワークときめ細かさ。これが日本の強さです。
日本の企業が海外で勝つためには、技術にのみ頼るのではなく、ビジネスモデルで先行し、ものづくり、サービス、ソリューションの現場力の勝負に持ち込むことです。
技術力に裏打ちされた経済力があって初めて、日本が国際的に尊敬され、発言力が増すんだと思います・・日本は安全や情報通信技術などの技術力も高い。技術の本質的な競争力で負けているわけではないんです
・・政府は、為替、エネルギーなど国際競争上のハンディキャップを取り除き、「あとは民でやってくれ」と主導することが必要です。政官学民のトップらが自信を持ってやれば、日本経済は必ず復活できます・・
東京消防庁の活躍、板書が有効
座談会の続きです。
新井総監:3.11直後は、部長以上が集まる最高作戦会議を、1日に朝夕の2回行っていました。
松浦参事(作戦室長):最高作戦会議のための資料作りも、(事前に作ってあった)作戦室運用マニュアルとひな形のおかげで、異動直後の人であっても、報告などに漏れがないようにできていました。
最近は、パソコンを使って情報を整理するという風潮ですが、ホワイトボードにどんどん書き込んだ方が、早いし整理もしやすかったです。いつまで昔ながらのやり方をするのだと言われることもありますが、結果的には、ホワイトボードに書いたものをベースに報告書を作成するのが一番だと思います。
松井救助課長:ホワイトボードには、要点だけを書きます。余計なことを書かないので、一番信頼できるし、皆が同時に見ることができます。
五十嵐副参事:板書は、本当に訓練の賜物です。宮城県の災害対策本部で、訓練どおりに板書をすると、皆が情報を理解できるようになりました。時系列で書いて、必要な情報を後から、追記できましたし、こういう時はアナログが一番です。
松井救助課長:シナリオ訓練しかやっていないと、本番で書けないのです。実践的なブラインド型訓練をしていないと駄目ですね。
新井総監:長期間活動をどう行うのかも問題点です。東京の場合、最初は1週間交代くらいで出したわけですが、片道十何時間もかかる往き帰りが結構大変で、隊員の疲労が問題でした。十何時間かけて現地へ行って、3日間くらい被災地で活動して、十何時間かけて戻ってくる。現地の地理がようやく把握できた頃に、交代することになるといった状況でした。
最初に行った隊員は、休みを取れない過酷な活動になるのは仕方がないのですが、半月後やひと月後に行く隊員は、もう少し長期間現地で活動できるような体制、要するに兵站を十分に確保しなければならないと思います。最後には、観光バスを借り上げて、隊員を観光バスで送り込みました。消防車両は現地においたままで、人だけを入れ替える方式をもっと早く導入できたら良かったと思います・・
不作為型不祥事、幹部の責任
11月4日の日本経済新聞法務欄「不作為型の不祥事、教訓は」は、経営陣が問題への適切な対応を怠ったために危機に直面する「不作為型の不祥事」が続発していることを取り上げていました。JR北海道(線路の異常か所の放置)、みずほ銀行(暴力団への融資を放置)、カネボウ化粧品(化粧品による病状発生を放置)、高級ホテルでの長期間の食材偽装などです。問題は、事故や事件が起きたことではなく、それを放置していた経営者の対応と責任です。
長友英資・元東京証券取引所最高自主規制責任者:最近の(やるべきことをやらなかった)不作為型不祥事の原因は、危機の芽に対する経営トップの感度が低すぎることだ。単に組織とルールを整備するだけのコンプライアンスでは解決しない。問題のきっかけをつかむ情報を「部下が対処すべきこと」と考え、経営者が自らの問題だと判断できなかったのだろう。
みずほ銀行はコンプライアンス担当執行役員を更迭したが、違和感を覚えた。資料が膨大で問題の部分に意識を向けられなかったというが、膨大な情報の中からリスクをかぎ分けるのが経営者の能力であり責任だ。
浜田真樹・日本公認不正検査士協会理事長:企業は同じような能力・背景などを持った人材の集積度合いが高いほど、業務成果が上がる。一方で、反対意見を排除したり情報収集に偏りが出たりして、誤った方向に進みやすくもなる。
視野が狭まった組織の暴走を防ぐには、最終的にはリーダーの力しかないとされる・・ネガティブな細かい情報でも把握して議論できる組織を整えるのは経営者の責任だし、その経営者を外部の眼で監視する仕組みも必要だ。
増田英次・弁護士:・・コンプライアンスそのものを目標とせず、企業理念の実現や目標達成の過程の中に法令順守や問題点の発見を含むことだ。前向きな作業の中に位置づけなければならない。今のコンプライアンスは、あまりに無味乾燥。大切なのはルールではなく、社員の意識と企業風土を変えることだ。社員の仕事に対する情熱や喜びのような「感情」を軽んじたコンプライアンスは決して成功しない。
長友氏:・・過去の判例でも、取締役が「知らなかった」ことの責任を問われ得ることは明確だ。日本野球機構の統一球問題ではコミッショナーが「昨日まで(仕様変更を)知らなかった。不祥事ではない」と言ったが、本来は大いに恥ずべきことだ。
増田氏:重要なのはコミュニケーションだ。不祥事が起きる組織では上司と部下がうまく意思疎通できていない。組織が目指す理想の将来像を社員が共有することに力を入れるべきだ・・
詳しくは原文をお読みください。
新型うつ
NHK取材班著『職場を襲う「新型うつ」』(2013年、文藝春秋)を読みました。
うつ病で休職している社員が、元気にマラソンを完走したり、遊んでいる姿を自らインターネットに公開している。自宅休養中に海外旅行に行って連絡が取れない。うつ病で休んでいる職員が、東京ディズニーランドの会社の福利厚生割引券を申請してきた。ある日突然、うれしそうな表情で「うつ病」と書かれた医師の診断書を提出して、休暇を申請する。
職場のルールを守れないのに、自分を被害者だと思って、社内コンプライアンス窓口や労働基準監督署に訴えて、職場の上司を振り回す。二日続けて遅刻したことを注意したら、パワハラだと訴えた。仕事ができなかったのは、このパソコンが悪いからだ。誰々さんが教えてくれなかったからだと、他人のせいにする。
できない職員なのに「自分はできるのに、上司が評価してくれない」と周りのせいにする。職員が休むと、その母親がやってきて、「本人は連絡を取りたくないと言っているので、私と連絡を取ってください」という。自分の息子が悪いとは絶対言わない・・。
このような「新型うつ」が、若手職員に増えているのだそうです。新型うつで休職した若手職員をカバーするため、労働が増えて、上司や同僚が「従来型うつ」になるという、笑えないことも起きています。
「私の職場にも、そんな職員がいるわ」と思い当たる方、あるいはまだそんな職員がいない方でも、必読の書です。
「この人の場合は、本当に大変な病気だな」と思えるケースがある反面、「これは単なるズルじゃないのか」と思うような例もあります。読み終えて、複雑な気持ちになります。
出てくる事例は、若手職員に多いようです。また、この本では取り上げられていませんが、外国ではどうなのでしょうか。