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復興の3要素、その1

2019年1月4日   岡本全勝

被災者の私有財産への公費投入」の続きにもなります。著作や講演で使っている図を更新しました。
東日本大震災の復興に携わって、何が必要かを考えた際に整理した図です。

 

 

 

 

 

 

 

 

「1インフラ・住宅の再建」は、皆さんもおわかりでしょう。私は当初、これを復旧すれば、大震災からの復興は終わると思っていました。
しかし、現地に行くと、まず孤立防止が課題になりました。これは従来は、地域での助け合いに任せていました。しかし、それではうまくいかないことが、阪神・淡路大震災でわかりました。そこで、「3コミュニティの再建」のうち「見守り」が行政の仕事になったのです(この時点では、まだコミュニティの再建ではありませんでした)。
担当する省庁がないので、被災者支援本部、復興庁が担いました。実施は、自治体を通じて、NPOなどにお願いしました。

次に、津波被災地では商店が流されて、買い物ができませんでした。従来は商工業の復旧は、事業主に任せていました。政府がやったのは低利融資です。日本は自由主義・資本主義国ですから。しかし、現地は放っておくと、商業の再開は見込めませんでした。近くの町も、お店は流されています。住民は、ものを買うことができないのです。これでは、暮らしは戻りません。阪神・淡路大震災との違いです。そこで、仮設店舗の無料提供を始めました。これが、「2産業・なりわいの再生」です。
また、商工業を復旧してもらうために、グループ補助金をつくって、施設設備の復旧に公費を投入しました。これも、初めてのことです。それぞれ、経済産業省がつくってくれました。
さらに、この表には出ていませんが、二重ローン対策もつくりました。新しく工場や商店をつくるには、借金が必要です。その前に、流された土地や建物を担保に借りた借金が残っています。返し終わっていない借金の上に、もう一つ借金をしなければならないのです。
この項続く

平成30年の回顧1、復興

2018年12月28日   岡本全勝

年末になったので、今年の回顧を始めましょう。
まず、第1回は、復興についてです。引き続き、内閣官房参与、福島復興再生総局事務局長として、大震災からの復興に関与しています。

被災地では、復興が着実に進んでいます。いくつかの町で、復興工事は完了しています。「復興の状況
津波被災地では住宅再建が9割以上終わり、多くの人が仮設住宅から恒久的な住まいに移っています。とはいえ、8年は長かったと思います。発災直後の47万人(推計)から、5万4千人にまで減りました。「避難者数の推移

あと2年3か月で、発災から10年になります。復興創生期間が終わり、一つの区切りとなります。復興庁も、10年の時限組織です。次に向けて、被災地域の復興状況を調べ、自治体に何が残っているかを聞き取りました。
地震・津波被災地域は、生活インフラの復旧はほぼ完了し、総仕上げの段階です。 被災者の見守りや心のケア、コミュニティの形成は、なお対応が必要です。
原子力災害被災地域は、中長期的対応が必要であり、今後も継続して取り組む必要があります。

東北復興新聞に、復興についての私の考えを簡潔にまとめました。ご覧ください。「復興庁は何をしたのか。元事務次官が語る国の”責任”」(2018年4月18日)
その2へ続く。

大震災に対する税制措置の解説

2018年12月27日   岡本全勝

林宏昭編著『日本の税制論』(2019年1月、清文社)が出版されます。
関西大学経済学部と、中国北京の中央財経大学財政税務学院との共同研究の成果です。中国(語)で、日本の税制(第1部)やトピック(第2部)を、日中の研究者が出版されました。その第2部トピック部分が今回、日本語として出版されたのです。「税と経済成長」「社会的公正と税制」「土地と課税」「税と社会貢献」「超高齢化」など、興味深いテーマが並んでいます。

林先生の要請で、私と小栁太郎くんで「第5章 東日本大震災に対する税制上の措置とその特徴」を書きました。これまでにない大災害への対応、多岐にわたるそして時間とともに課題と対応が変化した税制特例を、わかりやすく整理してあります。

二人で書いた形になっていますが、冒頭を私が書き、本体ほとんどは小栁くんが書いています。月刊誌『地方財務』2017年12月号に「東日本大震災に対する税制上の措置とその特徴」を書いてくれました。それを下敷きにして、外国の方にもわかりやすいように加筆しました。
小栁くんは、復興庁で税制特例を担当してくれました。その後、梶山弘志・内閣府特命担当大臣の秘書官を務めました。その忙しい中で、執筆してくれました。

被災者の私有財産への公費投入

2018年12月23日   岡本全勝

月刊『文藝春秋』2019年1月号、五百旗頭真・兵庫県立大学理事長の「二つの大震災 安全神話を越えて」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・平成を振り返ってみると、度重なる災害を通して、災害対応・復興のノウハウがこの国と社会に着実に蓄積されていきました。ある意味、震災が平成日本を鍛え上げたと言えるでしょう・・・
・・・(阪神・淡路大震災の際に)兵庫県の貝原知事は震災直後から、地元主導の復興計画を説き、国に向けて「創造的復興」を訴えました。これは「単に震災前の状態に戻すのではなく、21世紀の成熟社会にふさわしい復興を成し遂げる」という趣旨のものでした。
しかし、国の反応は厳しいものでした。大きな障壁となったのは、「被災地の公共施設を旧に復するのは国の責任だが、よりよいものをつくるのであれば地元の資金で」という、当時「後藤田ドクトリン」とも呼ばれた行政の論理です。要するに「焼け太りは許されない」との上から目線の冷たい線引きでした。加えて、被災者に対して、私有財産は自分で立て直すのが筋だという行政の論理が貫かれてました。

実は、この考えの源流は明治時代にまで遡ります。明治13年の「太政官布告」は、災害の際に破壊された個人財産については公費の対象にならないと定めたもので、この点で、大蔵省を中心とする行政の論理は明治以来のものです。他方、内務省などは護民官的な救援強化を推進してきました。
政府はこの「後藤田ドクトリン」を盾にして「法体系系の整合性」を説き、公共部門の復旧はさせても、被災者個人の生活再建に国費を投じることは認めようとしなかったのです・・・

慶應大学、地方自治論Ⅱ第11回目

2018年12月21日   岡本全勝

今日14日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第11回目の授業。公営企業と第三セクターについてお話ししました。
あわせて、複式簿記と単式簿記(大福帳)との違いを、簡単に説明しました。学生たちが社会に出て企業などで活躍する際に、複式簿記の基礎知識は必須です。
さらに、視野を広げて、政府(中央政府・自治体)、非営利団体、企業のサービスや財の提供も説明しました。

話に夢中になっていて、出席カードを配るのを忘れました。授業時間の終わりに気がついたのですが、もう時間かなかったので、今日は配布と回収をやめました。これで、年内の講義は終了です。