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原発被災地での新たな農業参入

2019年10月9日   岡本全勝

東北農政局の「震災復興室だより」9月号は、被災12市町で新たに農業をはじめた方の特集です。
詳しくは、それぞれの記事を読んでください。皆さん、厳しい条件の下で、頑張っておられます。

ここでわかることは、園芸作物には技術が必要で、米作りには大規模化が必要だということです。
かつての農業は、農家の息子が、田んぼとともに親の後を継ぎました。そして、受け継いだ農地で米を作ったのです。しかし、この半世紀の間に、大きく様変わりしました。稲作は生産効率が上がり、また相対的に価格が下がったので、昔ながら小規模農家では食べていけません。稲作で食べていくなら、大規模化が必須です。家業から事業に転換する必要があります。
他方で、園芸作物は高く売れます。しかし、片手間仕事でできる稲作と違い、技術、資本、そして毎日の労働が必要です。簡単な作業ではないのです。

毎年の新規営農者は、とても少ないです。家業を子供が受け継ぐという旧来の意識では、成り立たなくなっています。ここに、日本の農政の失敗があります。
事業として、従業員を雇って経営するという、発想と仕組みに変えていく必要があります。この半世紀に、日本が経験した「社会の転換」の一つの要素です。そして、手当てが遅れました。
家業から事業への転換が必要だということは、商工業でも同様です。商店街の個人営業の店がなくなり、チェーン店に変わっているのです。

岩手県被災地視察、その3

2019年10月6日   岡本全勝

今回の視察で、もう一つ印象的なことがありました。被災住宅移転跡地にできた、トマト栽培の大規模ハウスです。高さ6メートル、横幅150メートル、奥行き100メートルです。
住宅移転跡地は、住宅を建てることができず、利用用途が限られます。多くの地域で、苦労しています。ここは企業が進出してくれて、ハウスが建ちました。そして、地元の人の雇用の場になっています。「いわて銀河農園

大震災被災地では、いくつもこのような大規模ハウスが建っています。私も、これまでに、いくつか視察しました。ノウハウを大企業やオランダから学び、企業として職員を雇って、野菜を生産しています。このような事業で、何が難しいかを、根掘り葉掘り聞いてきました。勉強になったのは、次のようなことです。

1 よい品質の野菜を、年間を通してなるべく同じ量を生産すること。ここに、技術と経験の善し悪しが現れます。ここまでは、よく聞く話です。しかし、企業として成り立たせるためには、次の2つが重要です。

2 取引先。いくら作っても、売れないと事業になりません。たいがいの大規模農園は、スーパーマーケットや飲食チェーンと契約を結んでいて、安定した売り先を確保しています。

3 従業員の確保と管理。育成や肥料やりなどは、機械化されていますが、収穫は人手です。そして、相手は生物なので、繁閑期があります。すると、フルタイムの従業員だけでなく、パートタイムの従業員も必要となります。
その人たちを集めることができるか。そして、野菜の育成に応じて、勤務を管理しなければなりません。これも、事業としては重要な仕事なのです。

ふたばワールド2019

2019年10月5日   岡本全勝

今日10月5日は、ふたばワールド2019に、Jヴィレッジまで行ってきました。ふたばワールドは、双葉郡8町村がこの時期に開くお祭りです。避難指示が解除されてから、再開されました。帰還した住民と、まだ帰還できない住民が集う機会です。

今年は、Jヴィレッジで開催しました。関係機関の紹介展示、各町村からの物品販売、売店などなど。たくさんの人で賑わいました。
住民、特に高齢者向けのいろんな健康相談が、賑わっていました。私も誘われたので、一つ受けてきました。福島心のケアセンターも、参加していました。

今回目立ったのは、子供さんです。体操のお兄さんにの周りに、たくさんの子供が集まってくれました。
避難指示が解除された地区では、徐々に住民が戻っているのですが、子育て中のお母さんと子供の戻りが遅いのです。このようなお祭りに参加してもらい、安全であること、そしてお友達も戻っていることを実感してもらって、いずれ戻ってきて欲しいです。

帰りは、JR常磐線のJヴィレッジ駅から、電車で帰ってきました。この駅は、Jヴィレッジに隣接していて、便利です。ただし、催しのある日しか営業しないので、時刻表を確認してから乗る必要があります。

岩手県被災地視察、その2

2019年10月3日   岡本全勝

今回の視察は、新しくできた追悼記念施設も見てきました。

陸前高田市には、国と県がつくった追悼記念施設が、先月できたばかりです。奇跡の一本松の近くにあります。それぞれのホームページをご覧ください。
高田松原津波復興祈念公園東日本大震災津波伝承館
祈念公園は、高さを抑え、海に向かって「祈りの軸」がある、なかなか良くできた意匠です。展示施設のほか、道の駅も併設されています。たくさんの人で賑わっていました。

釜石市では、鵜住居地区に市がつくった追悼記念施設ができています。
うのすまい・トモス
こちらも、祈りの場と展示施設と売店があります。鵜住居駅前なので、駅前広場とにぎわいの場を兼ねています。ラグビーワールドカップ試合場となった、鵜住居スタジアムの近くです。

宮古市では、災害遺構となった田老観光ホテルを見てきました。ガイド付きで、壊れた防潮堤とホテルを案内してもらえます。ホテルは2階までが津波にぶち抜かれて、鉄骨だけになっています。ホテル6階の元客室で、そこから撮影された津波の様子を見ることができます。毎日、たくさんの観光客が勉強に来ています。

津波被災地では、インフラや住宅の復旧が進み、被害の痕がわからなくなっています。このような施設を巡ってもらうと、あの怖さを知ってもらうことができます。
広島の原爆ドームと同様に、学生の教育旅行や観光の場所になるとよいですね。皆さんも、機会があれば行ってください。

岩手県被災地視察

2019年10月1日   岡本全勝

9月30日、10月1日とかけて、岩手県沿岸部の被災地を視察してきました。毎年この時期に、復興状況を確認するために行っています。(2018年

昨年反省したので、今年は三陸自動車道を使わず、国道で移動しました。自動車道を使うと早いのですが。山の中を直線で通っているので、沿岸部の集落を通らないのです。
市町村役場には早く到着するのですが、集落の状況がわかりません。山の中を通っているので、初めて訪れる人は「なぜここで津波災害が起きたのだ」と思うでしょう。

集落は沿岸部にあり、そこを国道がつないでいました。町中を過ぎると上り坂になり、峠を下りて、次の集落に入る。そのくり返しです。車は、上下と左右に揺れます。それに比べ、高速道路は揺れもなく、早いです。トンネルと橋が続きます。
車で通過する人や荷物には便利になったのでしょうが、交通量の減った集落は、寂しくなるでしょうね。

今回は、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市です。インフラの復旧は、防潮堤を除いて、ほぼ終わりました。山田町、大槌町、釜石市鵜住居など、町の中心部の復旧が遅れていた地区にも、住宅や商店が建ちつつあります。町の中で重機やダンプが動いている姿を見ません。
陸前高田市だけは、かさ上げ面積が大きかったこともあり、まだ町中に重機が動いていて、土がむき出しのところがあります。これも、あと1年半でほぼ片付く見込みです。
ただし、防潮堤の建設は、まだいろいろなか所で工事が続いています。それを除けば、津波の痕跡を探すのが難しくなりつつあります。
8年半の時間を感じ、よくここまで来たなあと、感慨にふけりました。

課題は、産業振興です。主力である水産業が、振るいません。魚が捕れないのです。サンマも、鮭も、ウニやアワビも。海水の水温上昇が、原因のようです。漁港も水産加工場も復旧したのですが、魚が揚がらないことには、仕事になりません。養殖に力を入れる漁協も増えています。

天気は快晴に恵まれました。昼は25度を超え暑いくらいですが、朝は15度を下回ります。東京とは違います。稲穂が黄金色に実った田んぼ、刈り取りが終わり「はざかけ」してある田んぼが広がっています。紅葉はまだですが。