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糸魚川大火から4年

12月22日の日経新聞夕刊が、「糸魚川大火4年 住民4割戻らず 事業所再開も低調 高齢化や後継不足」を伝えていました。
・・・2016年12月に新潟県糸魚川市で108世帯223人が被災した大火で、住民の居住先がほぼ決まった結果、約4割が被害に遭った地域に戻っていないことが22日までに、市への取材で分かった。被災地内で再開した事業所数が半数以下にとどまったことも判明。いずれも高齢化や後継ぎ不足が原因とみられ、復興が一定の区切りを迎える中で、全国の地方都市に共通する問題が浮かび上がってきた・・・

東日本大震災の被災地でも、住民の帰還が進まず、人口減少に悩んでいます。町の再建が遅れた地域ほど住民の戻りが遅いという実態があるのですが。この記事にあるように、地域の社会・経済的条件がより重要です。働く場があるか、若者が帰ってくるかです。
津波被災地でも、住民の戻りは一律ではないのです。宮城県では、仙台市とその周辺は人口が増えています。そこから遠くなるほど、人口の減少は大きいです。
災害を機に人口減少が加速したことは間違いありませんが、三陸沿岸ではそれまでの10年間でも10%人口が減っていたのです。
住民が戻るかどうか。それは災害の大小以上に、社会・経済条件によります。例えば(起こってもらっては困りますが)東京近辺で災害が起きたと想定すると、たぶん町の復旧とともに、人は戻ってくるでしょう。

浪江復興米の販売

12月19日のNHKニュースが、「福島 浪江町 10年ぶりに収穫「復興米」の販売会」を伝えていました。はめ込まれた映像を、ご覧ください。

・・・東日本大震災の津波と原発事故で大きな被害を受けた福島県浪江町で、ことし、震災後初めて沿岸部で収穫されたコメの販売会が行われました。
浪江町は、震災の津波で大きな被害を受けたほか、原発事故で町の全域に避難指示が出されました。
町の沿岸部では3年前に避難指示が解除されましたが、農地の復旧に時間がかかり、宮城県から進出した農業生産法人がことしの春になって地元の農家から借りた水田およそ24ヘクタールでコメ作りを再開しました。
19日は、この秋、10年ぶりに収穫されたコメを味わってもらおうと町内の道の駅で販売会が行われ、栽培した福島県のオリジナル米「天のつぶ」を「浪江復興米」と名付けた2キロ入りの50袋が店頭に並べられました・・・
英語ニュースでも、伝えられています。

浪江町での米作りは、このホームページでも何度か紹介しました。「稲刈り」。
映像には、被災直後の風景も写っていて、黄金色の田んぼと比べ、感慨無量です。関係者の皆さん、ありがとうございます。

仮設住宅の入居費

仮設住宅の入居費について、今後の議論の参考にしていただくために、書いておきます。一部の方から問題を提起されて、いまだに整理できていないのですが。

災害で自宅が壊れた人に、応急仮設住宅を無償で提供します。光熱水費は有料です。以前は、プレハブの仮設住宅だったのですが、東日本大震災ではそれだけでは足らないので、空いている既存の公営住宅やアパートも提供しました。「プレハブ仮設」に対して、「借り上げ仮設」と呼んでいます。建設することなく提供できるので、早く提供でき、かつ住環境も良いのです。

これまでの災害では、2年程度で退去してもらえました。よって、プレハブの仮設住宅も極めて簡素なものです。基礎もしっかりせず、鉄板1枚の壁、間取りも4畳半二間です。ところが、北国ではそれでは寒いと言うことで、断熱材を張り、風呂の追い炊き機能も追加しました。そして多くの人は2年では退去できず、長い人は8年近くも住むことになりました。

さて、地元の人から提起された問題は、次のようなものです。
1 自宅を流された人に、無料で住宅を提供するのは理解できますが、家賃を払ってアパートに入っていた人に、無料で住宅を提供するのはなぜでしょうか。知人にそのような人がいて、借り上げ仮設入居中に家賃分を貯金した人がいました。
2 発災後は混乱し生活も大変なので、無料で提供するのはわかります。しかし、長期にわたって無料で適用するのは良いのでしょうか。例えば2年間は無料で、その後は有料にしてはどうですか。プレハブ仮設は住みにくいので無料でも良いと思いますが、借り上げ仮設住宅は普通の住宅なので、無料なら出ていく気にならず、長居する人が出ます。
3 仮設住宅も家賃を取って、退去時に「移転支援」として家賃を返す(補助する)仕組みとしてはどうでしょうか。そうすると、仮設住宅から次の住宅に移ることが円滑になると思いました。

復旧事業費地方負担なし、関係者の声

先日の私のインタビュー記事「朝日新聞インタビュー「ミスター復興が語った後悔と成果」」に、地元関係者からお便りをいただきました。一部改変してあります。

・・・「地方負担ゼロも、それが当たり前という空気の中で(11年秋に)決まった。私も最初そう思ったが、しばらくしてよくなかったかなと」について、支援を受けた立場で言うのもなんですが、私もそう思います。
今回の被害は大きすぎて1%の負担でも被災自治体の負担は相当に上がり立っていられなかったかもしれませんが、地方負担ゼロにより事業の精査、見直しがおろそかになった面があるともいます。

それはハードだけでなく、ソフト面、例えば、人的応援において、早期の復旧復興にあたり他自治体からの応援は必要不可欠でしたが、応援を受ける自治体が「応援されることに慣れ、また、人件費負担もない」ということで応援要請が継続し、その一方でプロパー職員の育成が遅れたのではないかとも考えております・・・

後段の指摘も重要です。
被災市町村は被災者支援に追われ、新しい街づくり工事には十分な人手を割くことができませんでした。そもそも、市町村にはそれができる職員はいません。それで、他の大きな自治体から技術職員を派遣してもらいました。
ところが、その後に聞こえてきたのは、「街づくり工事を応援職員だけでやっていて、役場内で孤立している」との声でした。「用地買収など苦しい仕事を、応援職員に押しつけている」といった批判もありました。
応援職員に頼らざるを得ない実情もわかるのですが、このあたりは応援を受けている市町村幹部に配慮してほしいことでした。私も首長には注意喚起し、要請したのですが。

岩手・宮城の仮設住宅、来年3月末までに解消

12月12日の読売新聞が「岩手・宮城の仮設住宅、来年3月末までに解消 最大時6万5483戸」を伝えていました。
・・・東日本大震災で被災した岩手、宮城県で最大6万5483戸(16万7368人)あった仮設住宅が、震災から10年となる来年3月末までに解消されることがわかった。津波の被災地に最後まで残る98戸218人(11月末時点)の大半は、災害公営住宅などへ転居の意向を示している。一方、東京電力福島第一原発事故で被災した福島県の避難者は、県内外の仮設約900戸に約1600人が暮らし、解消のめどが立っていない・・・
参考「災害公営住宅完成