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三位一体改革58

2005年9月22日   岡本全勝
9月2日の読売新聞「点検公約」第5回目は、地方分権でした。「問題は2つある。一つは、バランスが取れた『三位一体』の改革を実現できるかという点だ。・・もう一つの問題は、07年度以降も改革を継続できるのかということだ」(9月3日)
読売新聞社説は「三位一体改革、国地方の役割を問い直せ」を、毎日新聞「知っておきたい政策論争Q&A」では堀井恵里子記者が「三位一体改革」を解説していました。いずれの解説も、「各党は地方分権の意義を説くが、具体的な道筋は示していない」というものです。(9月7日)
8日の東京新聞は、「義務教育費国庫負担金8500億円どちらに、議論不足の二重計上」を大きく取り上げていました。朝日新聞社説は「公務員削減、分権なしには進まない」、読売新聞社説は「指定管理者制度、地域の活性化に生かせるか」を取り上げていました。(9月8日)
9日の読売新聞は、「改革を問う、05衆院選」「データで読む争点10」で、安江邦彦記者が税源移譲を図表入りで解説していました。また、「決戦、05衆院選」で、青山彰久記者が「進まぬ地方分権改革、国との分担乏しい論戦」を書いておられました。
「地方は長い間、『地域づくりとは、国の事業と補助金を導入すること』と考えて事業を乱発した結果、財政規律を失った。膨大な借金と利用率の低い施設が残り、次の世代に負担させる構造を招いた。この体質に終止符を打ち、人口減少時代でも人々が支え合って持続できる地域にするには、まず、無駄を洗い直し、地方に自立の志が必要になる。そして、責任をもって限られた税金を住民から集め、地域の現実に合わせて効率的に使えるよう、行政と財政を分権することが不可欠になる」
「分権改革は、国と地方の責任を決め、国の『統治構造』を転換する意味があり、衆院議員の重要な仕事だ。政党と候補者は分権改革の考え方を最後まで語ってほしい」
「論点」では、谷沢叙彦英国大使館一等書記官が「学校教育改革、英に学ぶ現場重視の発想」を書いていました。「英国では、来年度から始まる教育予算制度によって、自治体は学校に3年間、生徒数を基本に国が計算した通りの金額を交付しなければならない。国が自治体から教育査定権を剥奪するようなものである。・・・だが、大半の関係者が、この改革を中央集権化ではなく更なる分権化と捉えている」
「英国の校長は、企業経営者のような存在だ。中等学校の場合、予算は年間総額350万ポンド(約7億円)程度だが、現場の校長は、どの給与水準の教員や補助スタッフを何人雇うかを含めて、学校に交付される予算の使途を自由に決定できる。そもそも『教員給与費』という区分をして国が関与するような発想自体がない。つまり、学校現場に自由があることが、今回の改革の大前提になっている訳だ・・・」
興味深い比較です。ご一読ください。(9月9日)
総選挙を受けて地方6団体が、以下のような要旨の「地方分権改革の推進を求める共同声明」を出しました。
「今回の衆議院議員総選挙において、自由民主党、公明党の連立与党が圧勝した。このことは、小泉内閣が推進してきた『官から民へ』、『国から地方へ』の構造改革に対する国民の強い支持が表明されたものと考える。地方分権改革は『国から地方へ』の改革の最大の柱であり、待ったなしの改革である。
とりわけ『三位一体改革』については、自由民主党と公明党の連立与党重点政策で『残り6千億円の税源移譲を18年度までに確実に実現するとともに、19年度以降も地方の意見を尊重しつつ一般財源を確保のうえ、地方分権を推進する』とし、全力で取り組むとの決意が示されている。
今後、新たな政権においては、小泉内閣総理大臣の強いリーダーシップの下、我々地方6団体が政府の要請に真摯に応え二度にわたり提出した地方の改革案に基づき、3兆円の税源移譲、義務教育費国庫負担金を含め国庫補助負担金の地方案に沿った改革などを実現されることを強く求めるものである。」
至極もっともなことです。昨日の開票速報中、総理は郵政民営化以降の政治課題を問われ、三位一体改革を挙げておられました。(9月12日)
総選挙の結果をふまえ、各紙が今後の政治課題などを議論しています。例えば13日の日本経済新聞は、総理の12日の記者会見を次のように紹介していました。
「『郵政民営化が実現したら後の政策はないんじゃないか?とんでもない』首相は記者会見で強調した。年金、医療などの社会保障制度改革、国と地方の税財政改革(三位一体改革)、公務員制度改革、財政再建などを列挙し『今後も改革を進めていく』と宣言した」
そして、義務教育費の地方移管、医療費の伸び抑制、公務員給与・定員見直しの3つを別枠で解説していました。
この秋の、郵政民営化の次の課題は三位一体改革であることは、共通認識になっているようです。総理の改革にかける意気込み、そしてそれを期待して投票した国民の意思が実現することを期待しましょう。もっとも、この課題は抵抗が大きく、期待するだけでは進まないので、声高に叫び行動する必要があります。(9月13日)
21日に第3次小泉内閣が発足し、総理が記者会見されました。その中でポスト郵政の政策課題で、第一に三位一体改革と公務員人件費改革を取り上げ、「抵抗、反対が強いが、方針通り進める」と強調されました(22日付け日経新聞、朝日新聞など)。心強い限りです。それでも、各省は補助金廃止に抵抗するのでしょうか。(9月22日)

三位一体改革57

2005年9月1日   岡本全勝
(時代錯誤)
27日のNHKニュースによると、「文部科学省は、不登校対策や学力向上など学校現場での教育環境の改善に向けた取り組みを直接、支援するため、小・中学校の校長の裁量で活用できる経費として、100億円余りの交付金を新たに創設することを決め、来年度予算の概算要求に盛り込むことになりました」
うーん・・、皆さんどう思われますか。そもそも市町村は、こんな支援を国に期待しているのでしょうか。(小学校は2.3万校、中学校は1.1万校あり)1校当たり、どれだけの金額になるのかは不明ですが、これくらいの金額なら市町村も捻出できます。地方団体は、教員給与費の2分の1国庫負担金2兆5千億円を要らないと言っているのです。このような数十万円の補助金を要望する市町村があれば、その団体は地方分権なんて言わない方が良いですね。
文科省は、もっと先にするべきことがあるでしょうに。地方団体が欲しいのは補助金ではなく、問題を解決する知恵や手法、アドバイスでしょう。
昨日紹介した山出市長会長の意見と、完全にずれています。地方の主張は、「基本的制度と結果の水準は国が決めて、実行は現場に任せてくれ」です。ところが文科省は「現場の個別運営に口出しをしたい」のです。小中学校は市町村立ではなく、「国立」なんですかね。
校長の裁量で使えるお金を渡すのなら、職員給与費を含め全ての運営費を、校長の責任と裁量で使えるようにしたらどうでしょうか。イギリスはそうなっているようです。(8月27日)
(知事会の行動)
27日のNHKニュースによると、「全国知事会は・・・3党のマニフェストについて『いずれも地方の声を真しに受け止め、地方分権改革が重要な柱として盛り込まれている』として、一定の評価はできるという認識で一致しました。ただ、今の三位一体の改革のあとの平成19年度以降の改革の進め方や地方交付税の確保のあり方などについては、具体性に欠けていたり、言及されていない部分もあるとして、来週30日の公示に先だって緊急声明を発表し、地方の声が反映されるよう引き続き、3党に働きかけていくことで一致しました」(8月28日)
29日の日本経済新聞は、「衆院選、郵政・年金に議論集中」「地方分権埋没、自治体が危機感」を書いていました。
「選挙の2大争点は郵政民営化と年金に絞られ、国と地方の税財政改革(三位一体改革)など地方政策は置き去りの感が否めないからだ。全国知事会は税財源移譲の拡大などを公約に盛り込むよう働きかけたが、『地方分権が郵政民営化に埋もれる』との懸念を払拭できないでいる」
「与党公約は3兆円の税源移譲を確約するだけで、政府方針の追認にとどまる。『分権改革の意思表示はあるが、具体論はわからない』と不満がくすぶる」「民主党の『約12兆円分の補助金を一括交付金に切り替える』との公約に対しても不安がでている。交付金は補助金より地方が自由に使えるが、省庁に配分権限を残しかねない」(8月29日)
(文部官僚、現場からの主張)
30日の読売新聞「論点」には、西尾理弘出雲市長が、「教育改革、地方の主体性尊重して」を書いておられました。
「教員給与費の半額を国がもつ義務教育費国庫負担金を地方へ移すことは、教育の分権を確立する重要な第一歩だと思う。憲法上の建前から、教員人件費は国が負担すべきだという議論もある。だが、憲法26条が規定する義務教育を受ける権利とは、あくまで基本目標を定めたものだ。この目標達成のため、国は地方の協力を得て財源を確保して義務教育の体制を整備する、と解釈すべきである。現実には、・・国の負担は3割程度で、地方の負担は7割に達する」
「この際、国はさらに財源を地方へ移して地方の自由度を高め、国の指導・助言の下、地方が切磋琢磨して義務教育の充実・発展を期すようにすべきである。そのためにも、知事や市長の義務教育行政への参画を認める必要がある・・・」
「文部科学省は・・・総額裁量制を導入した、だが、依然として文科省の財源配分の考え方に拘束されている。・・教育現場が、文科省に気兼ねせずに地域の特色を生かす教員配置を行えるようにする必要がある。文科省は『地方の主体性』を真に尊重すべきである」
「文科省は『地方に任せれば、教育格差が生まれる』と懸念する。だが、問題なのは、現行制度が公立学校を硬直化させていることだ。結局、公立中心の地方と、私立が台頭する都会との間で学力格差を広げている」
「義務教育の財源確保は国庫負担金の方が安定するとの議論もある。だが、文科省の国庫負担金の要求は、財政当局の査定で十分認められない歴史の繰り返しだったのではなかったか。地方への税源移譲と交付税で財源確保する方が安定的だと思う」
「私は、文部省OBで最初の自治体首長である。文科省の実績は評価するが、義務教育では知事や市長をもっと信頼し、名実ともに教育分権の確立に舵を切るべきである。むしろ、そうすることによって文科省は前向きの政策官庁として飛躍できる」
説得力ある主張です。少し長くなりましたが、引用しました(このような記事がインターネットで読めるようになればいいのですが)。
文科省の現役官僚は、西尾市長の主張に対しどのような反論をするのでしょうか。官僚のさみしいところは、それぞれは優秀なんですが、立場にとらわれて、全体的な視野に立った発言、国民の利益にたった発言をしないところです。たぶん、都合悪いことには反論はせずに、無視するのでしょうが。(8月30日)
31日の日経新聞夕刊では、「三位一体改革どうなるの」を中西晴史編集委員が解説しておられました。「半世紀以上前のシャウプ博士の指摘は、今も輝きを失っていない。・・当時との決定的な違いは、補助金廃止リストまでまとめた地方が中央省庁を追いつめていることだ。相手が不要だという補助金を『必要だ』と強弁して受け取らせようというのは、嫌がる馬の水を飲ませるようなもので、納税者の支持は得られまい」(8月31日)
31日の朝日新聞「9.11総選挙、何が論点」は、義務教育改革で、八代尚宏さんと藤田英典さんのインタビューが載っていました。
八代さんの主張は明快です。「国による画一的な教育から、人々のニーズに応じた弾力的で多様な教育へと転換している。規制改革と地方分権化は小泉構造改革の両輪だ。文部科学省は『教育は大事だから国が決める』というが、大事だからこそ、保護者や子供ら教育サービスの利用者、自治体の声に従うべきだ」
「国が義務教育の水準を定めて、自治体にきちっと義務づける。それをどのような手段で達成するかは自治体の裁量に委ねるべきだ。国は地方交付税で財源を確実に手当てしさえすればよい。財政難で地方交付税が削られる恐れがあるというが、教育や福祉のミニマム(最低)保障は最優先、とすればよい話だ」
「(他の点で各党の政策は)事前規制を緩和するかわりに、その質を保障するための事後評価が不可欠になるという視点が不十分だ。・・・国で評価方法を一律に決めることは疑問だ。むしろ、学校ごとに保護者や地域住民、退職教員らで第三者評価委員会をつくり、徹底的な情報公開を求め、自分たちで考えた指標で学校を評価し、提言するといった案もある。要は国任せの発想からどう脱却するかだろう」
「教育は大事だと言われながら、教職員組合しか利益代表がないだけに、政治家からは票にならないと見られていた。だが、今回の選挙は郵政民営化を契機として業界団体との結びつきを断ち、利権政治から脱皮するチャンスだ。成功すれば、今後の選挙では、不特定多数の人が関心を持つ教育政策が、より重視されるのではないか」
藤田さんの主張は、(教員の給与の3分の1を国が持つことをやめれば) 地域や家庭の格差が広がるというものです。でも、今回の改革は、教員の数を減らそうと言ってませんよね。
「一括交付金の提案は・・・外部委託や民営化が広がり、教育の質の劣化を招く」とも主張しておられます。既に、公立学校の教育に不満を持つ親は、塾に行かせるという「外部委託」を実行し、私学に通わせるという「民営化」を選択しています。これは文部官僚も含めてです。
このHPで何度も批判しているように、教員の給与財源と教育の質を混同する(すり替える)主張は私には理解できないので、これ以上は紹介しません。(8月31日)
8月31日に地方6団体が、「平成18年度予算概算要求に関する共同声明」を出しました。
「我々地方六団体は、政府の要請に基づき、・・昨年提出した地方の改革案に引き続き、平成18年度の政府の概算要求に反映できるよう、7月20日に「国庫補助負担金等に関する改革案(2)」を提出したが、これらの国庫補助負担金改革が、概算要求に反映されていないことは、誠に遺憾である」
「とりわけ義務教育費国庫負担金については、平成16年11月26日の政府・与党合意において、税源移譲額2.4兆円の内数として、地方の改革案どおり8,500億円を税源移譲の対象とするとされているにもかかわらず、文部科学省は、平成17年度暫定措置4,250億円を復元し、国庫負担率2分の1とした約2兆5千億円を要求した。このような概算要求は、地方の改革案に反するのみならず、政府の一員として当然尊重し守るべき政府・与党合意を全く無視したものである」
「また、その他の国庫補助負担金についても、各省庁は、地方分権改革の意義を理解せず、国庫補助負担金の一般財源化を行うことなく、依然として国に権限と財源を残すため、交付金化や統合化している」
この主張の通りです。官僚の一人として、各省の行動に恥ずかしくなります。(9月1日)

三位一体改革56

2005年8月26日   岡本全勝
月刊「文藝春秋」9月号「インタビュー、ポスト小泉の資格を問う」に、宮崎哲也氏による、麻生太郎総務大臣へのインタビューが載っています。
宮崎:それでは、いつまで経っても自民党をぶっ壊さない小泉政権に点数をつけるとすれば、何点でしょうか。
麻生:もともと、変人、奇人と思っていましたからね。その点を除けば、僕は結構高い及第点をとっていると思いますよ。・・・後世に間違いなく残る実績を挙げれば、有事法制、国民保護法制・・。総務省に関係あるところを挙げれば、三位一体という名の改革を強烈に進めて、「地方分権、地域主権へ」という流れを作った。・・・
宮崎:中でも、三位一体改革は麻生さんが、所管大臣として先頭に立って主導されました。党内的にも、抵抗がかなり大きかったんじゃないですか。
麻生:廃止しようとしている国庫補助金には既得権益が横たわっているんですから、そりゃ大変ですよ。それに、これだけ税収が減っている最中に、3兆円を国の財政から引き剥がして地方に税源移譲するというんだか
ら、もちろん激しい抵抗に遭いました。「うまくいく」と考えていた国会議員や役人は、おそらく一人もいなかったんじゃないかなあ。
宮崎:逆風の中、初年度で8割、2兆4千億円の税源移譲を達成できた。
麻生:3兆円の税源移譲を先に決めるという決断と、減らす補助金の内容を地方に考えさせるという、2つのアイデアを持ち込んだのが私であることは認めるけれど、事実、このアイデアを実現できたというのは、大きかったんじゃないでしょうかね。
「私は、三位一体改革を実現するために、総務大臣を引き受けたんです。ですから、最後の最後はちゃんとこちらの言う通りにやっていただきます」と言って、その通りにやっていただきました。(8月22日)
22日の朝日新聞「9.11総選挙、小泉改革の行方」は、三位一体改革で、神野直彦東大経済学部長へのインタビューでした。
「内閣発足時、既に国から地方への機関委任事務は廃止され、地方分権の残された課題は、自己決定権を財政面で確保する税源の移譲だった。国の税収が減るため昔から財務省が反対しており、首相のかけ声で税源移譲が論じられるようになったのは高く評価できる。『霞が関』をねじ伏せた点は大きい」「・・基幹税で行うはずの税源移譲は暫定的なままで、政府は早く恒久化を実現して欲しい」
文科省が、義務教育費国庫負担金の廃止・税源移譲に反対していることについては、「米国では、よい先生を集めようと教育税を高くする地方もある。国は教育政策で何度も失敗してきた。結果責任を負うのは国民で、国民の手が届くところで教育のあり方を決めるべきだ」 (8月23日)
24日の朝日新聞「9.11総選挙、郵政対決を越えて」では、内田晃記者が「三位一体、具体策足踏み。首相が自ら道筋描け」を書いていました。
8日夜解散直後の小泉首相の記者「会見は、郵政一色だった。小泉政権は『官から民へ』と並び、地方分権を象徴する『国から地方へ』を二枚看板としてきたが、この日の会見で首相が『地方』に触れることはなかった。このままでは、三位一体改革は郵政民営化に埋没してしまうー。知事たちは危機感を強めた。」
「前回03年総選挙では、三位一体改革に弾みがついた。初のマニフェスト選挙となり、民主党が『5つの約束』の冒頭で『4年以内のひも付き補助金全廃』をうたった。自民党も『06年度までに補助金4兆円廃止』を盛り込んだ。・・・数値目標は、自民党族議員や既得権益を守りたい省庁の抵抗を押し切る武器になった。『突破口』を開けた小泉首相の手法は斬新だった。」
「ところが、具体策作りの段階になると状況は一変した。・・・首相は事務方への『丸投げ』が目立つようになった。・・・首相自らが開けた突破口の先にどのような社会をつくるのか、そこまでの道筋を含め、示す責任がある。」
24日の日本経済新聞社説「05衆院選、改革を問う」は、「補助負担金廃止の規模で違い際だつ」でした。
「自民党の政権公約は6月に小泉内閣が決めた『骨太の方針2005』の域を出ていない・・。地方側が求めている2007年度以降の第2期の改革についても、『地方の意見を尊重』にとどめ、実施の約束はしていない。これに対し、民主党は18兆円の補助負担金の廃止を打ち出した。そのうち5.5兆円を地方に税源移譲し、12.5兆円を一括交付金に改める。」
「補助金を通じた地方統制という集権型体制の部分修正で済まそうとする自民党と、補助金廃止で分権型社会への転換を図ろうとする民主党の違いは際だっている。政権選択の争点として、議論を深める価値はある」
この社説の主張の通りなんですが、問題は金額の次に、というか金額の多寡以上に「どの補助金を」と、「どの税金で」なのです。民主党の主張はありがたいのですが、どの補助金を廃止するのか不分明なのと、どの税金を移譲するのか不明なのです。そこが一番苦労しているところなんですがね。金額が大きいだけでは、喜べないのです。(8月24日)
(教育に関する国の責任と地方の責任)
26日の朝日新聞「私の視点」では、山出保全国市長会長が「分権改革、もっと地方に任せよ」を書いておられました。「この選挙では、郵政改革に注目が集まりがちだ。しかし、それでも仮にも『国から地方へ』の分権改革が後退するようなことがあってはならない。むしろ、選挙を機にいっそう推進されることを強く期待する」
「国は地方の教育力を信頼すべきだ。学力の到達目標を明示し、到達度を把握するのは国の責任としても、その目標に至るカリキュラムや授業時数などは柔軟に地方に任せてほしい。国と地方の役割分担を明確に法律に書き込めばいい」
「義務教育は国の責任と言いながら、国の負担は既に3割を切っている。これを維持することが、なぜ、国が責任を果たすことになるのか。重要なのは、教育水準と費用に地域間格差を生じさせないための担保を法令上どうするかなのだ」
その通りですよね。これまで行政・官僚は、入力(インプット)ばかりに力を入れて、結果や成果(アウトプットやアウトカム)を測ってきませんでした。教育の場合は、予算額と教職員の数を増やすことに力を入れて、教育の成果である学力や生徒が身につけるべき生活力、本人や父兄の満足を測ってきませんでした。今の文部行政・学校に、国民や父兄が満足できない理由はこれです。(8月26日)
(マニフェストと分権)
26日の新聞各紙に、民主党の全面広告(赤い枠取り)が載っていました。「民主党、8つの政策です」という表題で、1は行革、2は年金、3が教育で、4が分権でした。
「4 分権革命~地域のことは地域で~地域の工夫を引き出すために、ヒモつき補助金18兆円を、地方の財源に切り替えます。」
5がイラク支援、6が農業、7が道路公団、8が郵政改革です。
分権は、高い優先順位にあります。少なくともこれで、分権改革は後退はしません。ここまで来たことを、まずは評価しましょう。問題は、どうして進めるかです。(8月26日)
(政府の方針に反する省の行動?)
朝日新聞26日夕刊に、内田晃記者が「義務教育国庫負担金、文科省と総務省が再び火花」を書いていました。「国と地方の税財政改革(三位一体改革)の焦点である『義務教育費国庫負担金』をめぐり、対立してきた文部科学省と総務省が、06年度予算の概算要求でも火花を散らしている。昨年秋に決まった05~06年度での暫定的削減に反発する文科省が2兆5千億円の満額を要求。地方への税源移譲を進めたいとする総務省は、予定通りの削減を前提に要求する」
ご承知の通り、「政府・与党は昨年11月、激しい議論の末、同負担金2兆5千億円のうち8,500億円を2年間で暫定的に削減することで合意。これを受けた05年度予算では削減額の半分に当たる4,250億円がすでにカットされた」ものです。
まだ正式に決められたことではないようですが、もしそうだとすると、文科省が政府が決めた方針に反する行動をとるとは、「すごいこと」ですね。先だって、総理の郵政民営化方針に反するとして、総務省幹部が更迭されたことは、記憶に新しいところです。同じく「造反した」国会議員も、党公認を受けられませんでした。
このような例を出すまでもなく、政府が決めた方針に反する行動を大臣と官僚がとって良いものなのか、許されるものなのか、注視しましょう。日々、これまでにない日本政治の教材を見せてくれますね。(8月26日)

三位一体改革55

2005年8月13日   岡本全勝
(事務の国への返上)
先日「指定都市市長会が、生活保護に関する各月の基礎数値を国に報告することを、停止することを決めた」と書き、あわせて「事務本体の国への返上」について記者さんとの会話を紹介しました。
指定都市市長会が、資料一式を届けてくださいました。そこには、「仮に、(国庫負担割合)引き下げが強行されるということであれば、生活保護事務を続けることは困難であり、法定受託事務である生活保護事務については、国に返上せざるを得ない」「しかし、一気に返上した場合には、市民生活に与える影響が懸念される」と書かれてあります。
そして、
①準備行為として国への報告を停止する
②国への事務の引き継ぎの具体作業に入ることを検討する、としています。
法定受託事務ですから、法律的にはあり得る選択肢です。2000年に第一次分権改革を達成し、国と地方が対等になったことの効果が、現れてきています。
(地方からの提案)
指定都市市長会は、これにあわせて、「生活保護制度の抜本的改革に向けての提案」も発表しています。教育改革についても、提言しています。
これからの住民サービス事務は、国が企画するのではなく、実状に通じた自治体が問題点の指摘と解決策の提示をすべきです。これが、自治体が内政に責任をもつ姿でしょう。
指定都市市長会は、人口が22百万人。総人口の17%を占めています。これからも、どんどん提言してほしいです。
また、地域ごとに保護率に差があることについても、単身高齢者割合・失業率・離婚率などとの相関が高いこと、国民年金の未納率とも相関が高いことを分析しています。なかなか興味深いです。事務局のHPをご覧ください。(7月30日)
8月1日の朝日新聞社説は「義務教育費、分権の流れを見失うな」でした。「自治体の当事者意識は薄く、横並びの教育が全国にはびこっている。その一因として、政府が何事につけ、口を出してきたことが挙げられるだろう。
独自に少人数学級を実現し、授業日数を増やすなど、様々な試みが各地で芽生えている。自治体を励まして理念を実現する道をともに考えるのが、中教審の本来のあり方だろう。自治体が自らの負担と責任を踏まえて地域に根ざした教育行政を展開できるよう、国と地方の関係を見直し、改善を図る必要がある-。98年にこう答申したのは、ほかならぬ中教審だ」
毎日新聞は、連載「知事たちの闘い」第19回「分権と政治」を載せていました。(8月1日)
(教育論)
10日の朝日新聞「私の視点」に、三春町の前教育長が「教育の地方分権」を書いておられました。
「長年、予算を背景とした国のコントロールによって、中央依存の体質が強められていることにも原因があろう。・・・地方においては、中央の意向にただ従うだけで良しとしている長年の惰性を排する意識改革と、強い実行力がまず求められることを感じた。たとえば、ゆとりの教育の実施に際しても、県教委の役割にはこの施策の単なる伝達や指導の機関であるよりも、地域の実態調査などを通じていかに円滑に実施できるかを具体的に探る立場があったはずである」
「現職教員には、教師への信頼を取り戻すべく、さらなる意識改革を期待したい。職員組合も、待遇改善などの経済的な要求に終始するのではなく、教師が研鑽を積むべき環境や条件をいかに整備、確保するかを自らが提示し、この実現に向けて、むしろ教育委員会などを督促することこそが、果たすべき役割であろう」(8月10日)
(地方団体の攻勢)
地方6団体が、9日に「衆議院総選挙に向けての共同声明」を出しました。
「国においては、『官から民へ』、『国から地方へ』という構造改革の下、地方への税源移譲を基軸とした地方分権改革を進めてきたが、改革の後退は許されない。
今回の総選挙において、各政党や各候補者が「地方分権改革」の実現を公約として掲げ、積極的に国民に訴えていくことを強く求める。そして、選挙後の政権が、『地方分権改革』を強力に推進することを期待する」という内容です。各党が、マニフェストに分権をどのように書き込むかを、見守りましょう。(8月10日)
【小泉改革】
総選挙後の政権について、新聞が様々な予想をしています。誰が選挙に勝つか、政権につくか、政策はどう変わるかです。共通しているのは、小泉政権でないと、郵政民営化が進まないことと、もう一つは三位一体改革が進まないのではないか、という予想です。
前者(郵政民営化)は「官から民へ」、後者(三位一体改革)は「国から地方へ」の象徴です。共通点は、現在の政治権力(旧来型の自民党族議員と各省)を転換しようとするものです。そして、総理のリーダーシップがなければ進まないのです。
違いは、郵政民営化については、官から民へのシンボルであっても、すべてではないとの評価もあります。また小泉総理一人ががんばっている、との見方もあります。それに対し、三位一体改革は、これこそが中央集権を地方分権に変える骨格であり、また、地方団体全体がエンジンになっているという違いがあります。しかも、郵政は特定分野での改革であり、三位一体は包括的・全分野での改革です。(8月9日)
(地方団体の攻勢)
13日の朝日新聞「私の視点」では、増田寛也岩手県知事が「地方分権でも論戦望む」を書いておられました。
「今回の総選挙は、郵政問題だけが争点では決してない」「われわれ自治体関係者も、今回の総選挙で、各党が国と地方の税財政改革(三位一体改革)を含む地方分権改革について政権公約にしっかりと掲げ、政策論争をすることを強く期待している」
「・・小泉首相の決断で、総額20兆円の国庫補助金のうち、まず3兆円について具体的に動き出した。これに続く第2期分の改革について、各党は明快な処方箋をぜひ示してほしい」
「・・『地方案を真摯に受け止め、進めてほしい』という首相の指示が無視され、各省や族議員が一体となって権益保持を図ったことにある。霞ヶ関に漂う『三位一体改革はもう終わり』という奇妙な安心感に、どの党が毅然として対峙するのか。その実行力も問いたい」
「各党の政権公約が公表された際、地方分権改革の政策がどれくらい明確に掲げられているか、知事会としてしっかりと評価し、公表することにしている」(8月13日)
政府の依頼に応えて、16年8月に地方6団体が補助金廃止案を提出しました。各省はほとんどこれに応えず、政府与党で決定したことは、ご承知の通りです。また今春には、残る6,000億円について、再度地方案を提出しました。各省別の実現度(抵抗度)などを「地方案の実現度」に、表の形で整理しました。ご利用ください。(8月13日)

目次詳細:第四章

2005年7月31日   岡本全勝

第4章 地方行政と分権
1 国と地方の関係
1-1 中央集権と地方分権
1-2 地方自治の機能
①身近なところで判断すると、いい結果が出る
②中央政府は忙しい:国は国の仕事を
③中央政府では縦割りの弊害が出る:調整に手間取る
④民主主義の学校:受益と負担が見えやすい
⑤政治の安定化:地方の対立を中央に持ち込まない
1-3 明治維新
近代国家形成のために、中央集権化

2 分権
2-1 分権の必要性
①東京一極集中:中央集権で権限、財源、人間、情報が集中。地方は衰退
②新たな問題に対応できない中央政府:身軽にすべき
③行政依存体質:国民がお上頼りに
④豊かさを感じない画一性:多様性が生まれない
2-2 日本の分権の3段階
①事務の分権
②財源の分権
③規制の分権

3 三位一体改革
3-1 三位一体改革とは
(1)地方財政改革
①地方分権
②財政再建
3-2 これまでの成果
(1)経過
(2)進捗状況(目標と達成度)
3-3 その意味
(1)財政改革
①財政の分権
②財政の健全化
(2)政治改革
①政治主導
②地方団体の変身
3-4 残されたこと・これからの期待
(1)三位一体改革
①その1
②その2以降
(2)政治改革
3-5 これからの市町村財政
(1)財政再建がもたらすもの
(2)税源移譲がもたらすもの
(3)補助金依存脱却がもたらすもの

第5章 転換の方向
1 成熟国家の政治と行政
①官僚主導から政治主導へ:政と官
②中央集権から地方分権へ:国と地方
③規制改革:官と民
④依存から自立へ:国民と官

2 制度と運営
2-1 制度は輸入できるが運営は輸入できない
2-2 国民の成熟

3 政治にできること