三位一体改革58

9月2日の読売新聞「点検公約」第5回目は、地方分権でした。「問題は2つある。一つは、バランスが取れた『三位一体』の改革を実現できるかという点だ。・・もう一つの問題は、07年度以降も改革を継続できるのかということだ」(9月3日)
読売新聞社説は「三位一体改革、国地方の役割を問い直せ」を、毎日新聞「知っておきたい政策論争Q&A」では堀井恵里子記者が「三位一体改革」を解説していました。いずれの解説も、「各党は地方分権の意義を説くが、具体的な道筋は示していない」というものです。(9月7日)
8日の東京新聞は、「義務教育費国庫負担金8500億円どちらに、議論不足の二重計上」を大きく取り上げていました。朝日新聞社説は「公務員削減、分権なしには進まない」、読売新聞社説は「指定管理者制度、地域の活性化に生かせるか」を取り上げていました。(9月8日)
9日の読売新聞は、「改革を問う、05衆院選」「データで読む争点10」で、安江邦彦記者が税源移譲を図表入りで解説していました。また、「決戦、05衆院選」で、青山彰久記者が「進まぬ地方分権改革、国との分担乏しい論戦」を書いておられました。
「地方は長い間、『地域づくりとは、国の事業と補助金を導入すること』と考えて事業を乱発した結果、財政規律を失った。膨大な借金と利用率の低い施設が残り、次の世代に負担させる構造を招いた。この体質に終止符を打ち、人口減少時代でも人々が支え合って持続できる地域にするには、まず、無駄を洗い直し、地方に自立の志が必要になる。そして、責任をもって限られた税金を住民から集め、地域の現実に合わせて効率的に使えるよう、行政と財政を分権することが不可欠になる」
「分権改革は、国と地方の責任を決め、国の『統治構造』を転換する意味があり、衆院議員の重要な仕事だ。政党と候補者は分権改革の考え方を最後まで語ってほしい」
「論点」では、谷沢叙彦英国大使館一等書記官が「学校教育改革、英に学ぶ現場重視の発想」を書いていました。「英国では、来年度から始まる教育予算制度によって、自治体は学校に3年間、生徒数を基本に国が計算した通りの金額を交付しなければならない。国が自治体から教育査定権を剥奪するようなものである。・・・だが、大半の関係者が、この改革を中央集権化ではなく更なる分権化と捉えている」
「英国の校長は、企業経営者のような存在だ。中等学校の場合、予算は年間総額350万ポンド(約7億円)程度だが、現場の校長は、どの給与水準の教員や補助スタッフを何人雇うかを含めて、学校に交付される予算の使途を自由に決定できる。そもそも『教員給与費』という区分をして国が関与するような発想自体がない。つまり、学校現場に自由があることが、今回の改革の大前提になっている訳だ・・・」
興味深い比較です。ご一読ください。(9月9日)
総選挙を受けて地方6団体が、以下のような要旨の「地方分権改革の推進を求める共同声明」を出しました。
「今回の衆議院議員総選挙において、自由民主党、公明党の連立与党が圧勝した。このことは、小泉内閣が推進してきた『官から民へ』、『国から地方へ』の構造改革に対する国民の強い支持が表明されたものと考える。地方分権改革は『国から地方へ』の改革の最大の柱であり、待ったなしの改革である。
とりわけ『三位一体改革』については、自由民主党と公明党の連立与党重点政策で『残り6千億円の税源移譲を18年度までに確実に実現するとともに、19年度以降も地方の意見を尊重しつつ一般財源を確保のうえ、地方分権を推進する』とし、全力で取り組むとの決意が示されている。
今後、新たな政権においては、小泉内閣総理大臣の強いリーダーシップの下、我々地方6団体が政府の要請に真摯に応え二度にわたり提出した地方の改革案に基づき、3兆円の税源移譲、義務教育費国庫負担金を含め国庫補助負担金の地方案に沿った改革などを実現されることを強く求めるものである。」
至極もっともなことです。昨日の開票速報中、総理は郵政民営化以降の政治課題を問われ、三位一体改革を挙げておられました。(9月12日)
総選挙の結果をふまえ、各紙が今後の政治課題などを議論しています。例えば13日の日本経済新聞は、総理の12日の記者会見を次のように紹介していました。
「『郵政民営化が実現したら後の政策はないんじゃないか?とんでもない』首相は記者会見で強調した。年金、医療などの社会保障制度改革、国と地方の税財政改革(三位一体改革)、公務員制度改革、財政再建などを列挙し『今後も改革を進めていく』と宣言した」
そして、義務教育費の地方移管、医療費の伸び抑制、公務員給与・定員見直しの3つを別枠で解説していました。
この秋の、郵政民営化の次の課題は三位一体改革であることは、共通認識になっているようです。総理の改革にかける意気込み、そしてそれを期待して投票した国民の意思が実現することを期待しましょう。もっとも、この課題は抵抗が大きく、期待するだけでは進まないので、声高に叫び行動する必要があります。(9月13日)
21日に第3次小泉内閣が発足し、総理が記者会見されました。その中でポスト郵政の政策課題で、第一に三位一体改革と公務員人件費改革を取り上げ、「抵抗、反対が強いが、方針通り進める」と強調されました(22日付け日経新聞、朝日新聞など)。心強い限りです。それでも、各省は補助金廃止に抵抗するのでしょうか。(9月22日)