カテゴリー別アーカイブ: 慶応大学

慶応大

慶應義塾大学、地方自治論第12回目

今日は、慶應大学で地方自治論、第12回の講義でした。
今日は、住民論、住民自治論です。法律の定めによる住民の権利義務の説明とともに、市役所に対する主体と客体の関係を説明しました。主体とは、「主権者」として、選挙やその他の手段を使って、自治体(役所)を統制することです。客体とは、行政サービスの客体となることです。

しかし、これらの説明は、自治体や市役所を「他人」として扱っています。自治であるのは、住民がともに地域をよくしようとすることです。
そこで、近年広がってきている「協働」という概念を説明しました。例えば、町内の道路脇の花壇の手入れです。市役所に要求して市の事業として花壇を手入れしてもらう。市役所は、業者に委託して花を植え替えたり水をまいてくれるでしょう。しかし、町内会が、自分たちの家の前の花壇の手入れを引き受けたら、市役所はその分、手を引くことができます。花の種代くらい補助してもよいでしょう。「私、要求する人。市役所、それに応える人」という発想は、市役所と住民を対立したもの、サービスの提供主体と客体としてしか見ていません。

協働には、もっと広い意味があります。自治会でありコミュニティ、地域自主組織、さらには各種の地域活動です。ママさんバレーボールも、スポーツ少年団も、祭りも、地域での住民のつながりを支えています。自治会という旧来型包括的なつながりから、機能別のつながりが増えてきています。
この対極が、無縁社会です。孤立、孤独死、さらには災害が起きた際に、地域のつながりの強さが見えます。ふだんは「面倒なこと」と思われる近所づきあいも、いざという時は強力な助けになります。
学生からの感想には、「身近なことでよくわかった」という記述が多かったです。

早いもので、これで12週が過ぎました。あと、実質2週間です。

慶應義塾大学、公共政策論第12回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第12回の授業でした。今回は、前回、前々回に出してもらっていた、学生からの質問に答えることから始めました。企業の社会的責任やNPOの限界、安心の保障は国民の自立を妨げるのではないかなど、適確な質問ばかりです。
ほかに、「採用面接の際は何を見ていますか」という問も。これは、私の経験を踏まえて、突っ込んだお話をしました。公共政策論の範囲ではありませんが、実務家教員こそがお話しできる分野です。

本論は、戦後日本70年間の経済成長、社会の変化、暮らしの変化を数字で説明し(経済成長の軌跡)、豊かさが目標だった時代と、豊かになった時代の、行政の役割の違いをお話ししました。
エリートを育てることと、何かのきっかけで落ちこぼれた人を救うことと。これまではもっぱら前者に力を入れていましたが、後者にも力を入れる必要があります。これは、スウェーデンの中学社会科の教科書を見せました。
日本社会の変化とともに、社会の不安と公共政策の範囲が変わってきます。これが私の主張です。

学生諸君
授業中に言及した、戦争を会社に外注することについては、次の本が参考になります。
菅原 出 著『民間軍事会社の内幕』(2010年、ちくま文庫)

慶應義塾大学、地方自治論第11回目

今日は、慶応大学で地方自治論、第11回の講義でした。
先週取り上げた議会と条例について、たくさんの質問をもらっていたので、それへの回答で半分時間を使いました。
例えば、「『地方公共団体は法令に違反してはならない』との定めがありますが、反した場合はありますか」。これは、いくつか実例を挙げて、解説しました。
「条例の効力は、区域内、住民だけに及ぶのか。参政権のない外国人にも及ぶのか」。良い質問ですね。時間があれば、最初にこれらを丁寧に説明すれば良いのですが、そうもいきません。すると、教科書を読んでもらい、授業ではポイントだけ説明して、残りは質問に答えることが効率的です。

条例論の延長で、自治体が先導した政策を説明しました。公害・環境、福祉、情報公開、景観行政などなど。多くはその後、国の施策になっていますが、定住外国人対策はまだ国の出足は鈍いようですね。
今回は、具体の事例を最新の情報にして資料を配布しました。整理してくれた小栁君、ありがとう。

学生諸君
授業で紹介した本は、近藤康史著『分解するイギリス―民主主義モデルの漂流』(2017年、ちくま新書)です。

慶應義塾大学、公共政策論第11回目

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第11回の授業でした。三井住友海上火災保険株式会社の本山部長に来ていただき、企業の社会貢献について、お話しいただきました。
この授業では、社会(公共生活)を支えているのは、行政だけでなく、企業やNPOも大きな役割を果たしていることを説明しています。NPOについては、第7回の授業で、日本財団の青柳さんに来ていただき、話してもらいました。

企業については、どなたに来ていただくか、悩んでいました。企業の社会貢献は、本業、本業関連、本業とは関連が薄い貢献が、あります。
この会社を選んだのは、損害保険そのものが、社会を支えているからです。国民にとって、国家が基礎的な保険機能と最終の保険機能を果たします。前者は、例えば健康保険や失業保険です。後者は、例えば大震災での被災者支援です。
しかし、国家の前に、経済活動としての民間保険が、国民や経済活動のリスクを引き受けています。火災保険、自動車事故の保険、海外旅行の際の保険などなど。この機能がなければ、個人の生活も企業活動も、とてもリスクの大きなものになります。すると、本人が引き受けるか(破産する恐れがあります)、活動に乗り出さないか(新しい事業ができません)となります。

また、その事業の延長として、CSRに取り組んでいます。今日は、そのお話をしてもらいました。
この会社が取り組んでいる「事故防止、防災・減災」「気候変動への対応」「高齢社会への対応」「地域社会の発展」という4つの項目。これらは、私が授業で「社会のリスク」として取り上げた項目です。学生諸君には、すんなりと理解してもらえたと思います。

これまでの私の講義に関して、学生からは「企業は、本業とCSRをどのように関連づけているのですか」「儲からないCSRに支出することについて、株主は納得するのですか」といった質問も、寄せられていました。
本山部長の説明は明快で、私も勉強になりました。ありがとうございました。

慶應義塾大学、地方自治論第10回目

今日は、慶応大学で地方自治論、第10回の講義でした。
先週講義した議会について、学生の質問に答え、また新たに用意した資料(議会の活性化、都知事と都議会、杉並区議会だより)を配って、問題などを説明しました。ちょうど、都議選が始まり、また小池知事が最大会派の自民党と戦う構図を見せているので、学生には関心を持ってもらえました。
このように、教科書に書いていないこと、今現実に話題になっていることを取り上げると、講義の価値があります。もっとも、そのための準備が大変なのですが。

引き続き、「条例論」に入りました。