『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2013年2月号、ファリード・ザカリア執筆「先進民主国家体制の危機―改革と投資を阻む硬直した政治」から。
・・・「民主主義の危機」という言葉を耳にするのは、今回が初めてではないだろう。1970年代半ばまでには欧米経済の成長は鈍化し、インフレが急速に進行していた。ベトナム戦争とウォーターゲート事件は人々の政治システムへの信頼を損ない、新たに力を得た社会活動家が、既存の体制への反対を表明しだしていた。
1975年の三極委員会リポート「民主主義の危機」で、米欧日の著名な研究者たちは、先進世界の民主国家政府は非常に大きな問題を前に、機能できなくなっていると指摘した。この報告でアメリカの分析を担当した政治学者のサミュエル・ハンチントンは、特に憂鬱な近未来を予測した。
だが、その後すべてがうまくいくようになったことを、われわれは知っている。インフレは落ち着きをみせ、アメリカ経済はブームに沸き返り、システムへの信頼も回復された。10年後に崩壊したのは、資本主義と西側ではなく、共産主義とソビエトだった。欧米の先行きを悲観する人の声もなりを潜めるようになった。
だが、それから20年もしないうちに、先進民主世界は再び暗い雲に覆われ、悲観主義が漂うようになった。経済成長が停滞し、ユーロが危機にさらされているヨーロッパでは、欧州連合(EU)そのものが解体するのではないかという声も聞かれる。日本ではこの10年間で8人の首相が誕生し、政治システムは分裂している。経済も停滞したままで、さらに衰退の道を歩みつつある。だが、これまで果たしてきたグローバルな役割からみて、おそらくもっともやっかいで危機的な状況にあるのはアメリカだろう・・・
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憲法を改正する力、民主主義
読売新聞2月10日「地球を読む」は、北岡伸一先生の「憲法改正の道筋」でした。
・・私は憲法改正に賛成である。護憲論には強い違和感がある。自分たちのルールを自分たちで作り、作り直すことは、民主主義の基本である。これを否定する護憲論は、民主主義の否定だと思っている。
しかも現行憲法は、占領軍が原案を書き、その監視のもとで成立した。戦争は懲り懲りだと思っていた国民は、戦争放棄などの内容を歓迎したが、十分な検討を経た上での賛成ではなかったし、占領下、強い言論統制のもとで憲法を作ることは国際法違反である。
とはいえ、制定から60年余、憲法は定着した。私は、制定経緯だけを理由に改正すべきだとは考えない。不都合なところがあるから改正が必要なのであり、そうしたところは順次変えていけばいいと考えている。その際、実効性が乏しく、リスクの大きい改正方針は避けるべきだと思う・・
ごく一部を引用したので、原文をお読みください。
シングルマザーの職業紹介
2月11日の朝日新聞に、「求む有能シングルマザー、東京杉並の職業紹介会社」という記事が載っていました。社会に埋もれた有能なシングルマザーを掘り起こして、企業の正社員にする。そんな会社を、5年前に一人の女性が始めました。社員5人だそうです。
私は、この記事を読んで、「なるほど」と思いました。シングルマザーは子どもさんを抱え、収入を得るために必死です。しかし、普通の職員採用では、はねられることもあると思います。でも、腰掛けやええ加減な意欲の人より、よく働かれるでしょう。有能な人も多いです。その人たちを斡旋する。とても効果的な職業紹介です。
これまでに、100を超える会社に紹介してきたとも、書かれています。ぜひ、これからも紹介を求める人からの登録と、斡旋がうまくいくことを期待します。
新卒一括採用、年功序列、終身雇用。これが日本の「標準的雇用」でした。しかし、そのコースを外れる人も多いです。子育てのために退社した女性。就職した会社が、合わなかった若者。会社の職員整理にあった職員。体を壊した職員などなど。そのほかにも50歳代や60歳代で途中退職した人や定年退職した人など、働きたい人はたくさんいます。その人たちの意欲と技能と経験を、生かしたいです。
日本には、まだまだ潜在的労働力がたくさんいます。それを活用しない手はありません。その人たちと職場をつなぐ。そのつなぎ手が必要なのです。これら「働きたい人」の斡旋業が出てくることを期待します。
これからの行政や商売のキーワードの一つは、「つなぐ」ですね。被災地のニーズと支援したい人や支援制度をつなぐ。働きたい人と求めている企業をつなぐ。人やお金はたくさんあるのですが、それが生かされていない。それをつなぐ。これまでの制度や常識を破って、新しい仕組みを考えるのは、両方の知識を持った人しかできません。
ソーシャルワーカーという仕事
宮本節子著『ソーシャルワーカーという仕事』(2013年、ちくまプリマー新書)を紹介します。「ソーシャルワーカー」という言葉は、皆さん聞かれたことがあると思います。でも、その仕事の内容を知っている人は、多くはないでしょう。私も、そうです。
カタカナであることが、まだ身近でないことを表しています。例えば「介護保険」という言葉の方が、後からできたと思いますが、こちらはほとんどの人が知っているでしょう。「ケア・マネージャー」となると、どうでしょうか。
宮本さんは、次のように書き出しておられます。
・・・私たちは、生まれてから死ぬまでの人生を歩む時、さまざまな幸せな出来事や不幸な出来事に遭遇します・・不幸せな時にはさまざまな手助けを得ながら持ち直して暮らしを立て直していきます。ソーシャルワーカーの仕事は、この”手助け”をすることです。つまり、この社会で生きていく中でのある種の生きづらさに遭遇してそれを緩和したい、よりよく生きていきたいと人が願う時、ソーシャルワーカーの出番がきます・・・
そして、次のような場合を挙げておられます。
・失業、疾病、老齢、障害等で、経済的に生活が立ちゆかなくなった時
・経済的には何とかなるが、疾病、老齢、障害等で、日常生活を過ごすことができなくなった時
・高齢となり身体やメンタルな介護が必要になった時
・離婚等で家族関係を再構築しなければならなくなった時
・保護者がいなくなったり、虐待をする不適切な保護者であったりする時
・学校に居づらくなったり、学校に行けなくなってしまった時
・配偶者から深刻な暴力を受けて生活を維持できなくなった時
・地域社会から孤立している時
・刑務所から出所したが生活の再建がうまくいかない時
「ひとの生活に介入し、個人と社会をつなぎ直す」とも、書いてあります。私のこのHPで書いている「社会関係リスク」の、「お医者さん」と言ってもよいでしょう。
この本では、著者の経験した実際のケースを元に、一人で暮らしていけない人を救うとはどういう仕事か、そして知識と技術と心が必要だということが、述べられています。かなり「厳しい」ケースが載っています。この職業が大変なものだとうことが、わかります。
プリマー新書は、中高生を対象とした新書のようですが、この人たちにわかるように書くのは、難しいです。だから、大人が読むと、わかりやすいです。
終末期での仏教の出番
1月28日の朝日新聞夕刊に、「僧侶が寄り添う終末期、仏教版ホスピス『ビハーラ』」が紹介されていました。20年前から、仏教を末期ケアに取り入れている新潟県長岡市の病院の例です。末期がん患者らの緩和ケア病棟、ベッド数27です。中央部に、ナースステーションと仏堂があり、菩薩像が置かれています。
「ビハーラ」は、サンスクリット語で休息所や寺院の意味です。キリスト教に基づくホスピスではなく、仏教を背景とした看取りの場を指すことばとして、提唱されています。
お年寄りが、お経を読むことを許さない雰囲気がある病院もあるとのことです。「それは医療行為ですか」と。自宅では毎日、仏壇に手を合わせていた人たちです。手を合わせることで、心が安らぐのでしょう。
「お坊さんなんて、縁起でもない」という人もいるようです。しかし、平安時代の浄土思想以来、仏様が迎えに来てくださるという考えは、日本の庶民に広く行き渡っています。「葬式仏教」では、お迎えが来てから(亡くなってから)、お坊さんの出番がありますが、これも変な話ですよね。
たくさんの人が、功徳を求め、また「ぴんぴんころり」という死に方や、あの世(極楽浄土)での生まれ変わりを願って、お寺に参りお賽銭を入れます。遺族のためだけでなく、本人のためにも、最後の苦しみの場に、仏教の出番があって良いでしょう。
大震災を期に、宗教が社会で果たす役割が見直されている、一つの例です