カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

省庁再編から20年

1月6日で、省庁再編から20年が経ちます。新しい府省が発足したのが、2001年1月6日でした。省庁改革本部での体験を書いたのが「省庁改革の現場から」です。10年前には、次のように書いていました。「省庁再編10年」。その後、復興庁、出入国在留管理庁ができました。デジタル庁設置の作業が行われています。

かつては、5年か10年のうちには、もう一度、省庁再編(大規模なものでなく、見直し)が行われるだろうと、予測していました。いくつか小規模な変更は行われましたが、再編はありませんでした。
省庁再編には、膨大なエネルギーがかかります。それを提言し実行するだけの、理念が必要です。私は他方で、「国民生活省構想」を提起しています。「厚労省再編案」。1月6日の日経新聞は「くすぶる厚労省改革論 省庁再編20年、コロナ後に検証」を紹介しています。

また、省庁改革は、省庁再編だけでなく、内閣官房や内閣府の強化(政治主導の強化)、行政機能と組織の減量、独立行政法人制度の創設、政策評価と情報公開を含んでいました。いずれも、形としては達成しました。また定着しましたが、政治主導の強化は試行錯誤中でしょう。
さらに、省庁改革が目指したものは、「この国のかたち」の再構築でした。これは、まだまだでしょう。それを念頭に、連載「公共を創る」を書いています。

応援と受援をうまく機能させるには。コロナ、保健所の経験

10月20日の読売新聞、検証コロナ次への備え「「夜の街」防げなかった感染拡大」から。

・・・西村氏と小池知事らが打ち出した「感染対策3本柱」は始動からつまずいた。特に問題となったのが、「保健所機能の強化」だった。
都は7月20日、歌舞伎町を抱える新宿区保健所の支援拠点を区内の都施設に開設した。地域保健法に基づく正式な保健所ではないが、拠点は「第2保健所」と称され、多忙な区保健所に代わり、一部の陽性者の感染経路の追跡調査や健康観察を受け持つことになっていた。だが当初、現場の受け止めは冷ややかだった。

新宿区保健所の担当者は「100キロのスピードで走っている車に急に飛び乗ってきて、『運転を教えろ』というようなものだった」と振り返ったという。「区保健所が土日返上、平日も深夜まで忙殺されているのに、第2保健所の都職員は定時で帰っている」とのうわさも広がった。新宿区幹部は「区と都の連携がうまくいかなかったのは、どの業務をどれくらい引き継ぐべきか、双方がわからなかったことが理由だ」と話す。

厚労省も、都と連携して新宿区保健所の支援に当たることにしていたが、これも滞った。
複数の厚労省幹部は、都からの要望で保健師らを全国から集めたが、都が設置した「第2保健所」に行くと、「座る場所はない」と門前払いされたと証言する。保健師らは急きょ、埼玉県などに派遣された。
幹部の一人は「区の方からも『業務はパンク状態なので、(支援を受け入れるために)これ以上仕事を増やさないでほしい』と突き放された。『都や区とは二度と一緒に仕事したくない』と話す職員もいた」と明かす・・・

官庁の人材不足

10月9日の日経新聞「デジタル行政怠慢の20年」「手つかずの人材育成」から。

・・・新型コロナの第1波が日本を襲った4月上旬、民間から厚生労働省のクラスター対策班に加わった人がいる。ビッグデータ分析を手掛けるALBERT(アルベルト)の7人のデータサイエンティストたちだ。
通信会社の位置情報データなどを使い、人同士の接触頻度を分析するのが主な任務。臨時の国家公務員として班に合流した。

だが目にしたのは、データを分析する環境も人材もそろっていない驚きの光景だ。北海道大学や東北大学から参加した研究者や学生らは、各自が持ち込んだパソコンやモバイルルーターでインターネットに接続していた。作業体制の整備が最初の仕事だった。
「致命的な問題だった」と参加した中村一翔氏(33)が振り返るのが司令塔の不在。集めたデータをどう分析し、コロナ対応に生かすのか。データサイエンティストや研究者と意思疎通を図り、全体方針を決める存在が政府にいなかった・・・

官製ワーキングプア

10月4日の朝日新聞「官製ワーキングプア 広がる不安」から。
・・・公務をしているのに不安定で処遇が悪い「官製ワーキングプア」が増えています。コロナ禍で働き方がますます厳しくなっています・・・

・・・全国のハローワークにはコロナ禍の影響を受けた働き手や企業の担当者が集まる。失業手当や雇用調整助成金といった国の支援制度を利用するためだ。困った人のセーフティーネットの役割を果たす国の機関だが、職員には非正規の人がめだつ・・・東日本のハローワークで数年前から相談業務をする40代女性も不安を感じている。職場の相談員の9割は非正規で、みんな自分が「雇い止め」されないか、毎年おびえている・・・

・・・財政難をうけた行政改革のかけ声のもと、公務員の数は全体的に抑えられてきた。一方で行政に求められるサービスは多様化している。現場を支えるために採用されたのが非正規の公務員だ。総務省の調査では、2016年には地方公務員のおよそ5人に1人まで増えている・・・
・・・公務員は「親方日の丸」で高い給料をもらっていると見られがちだが、非正規にはあてはまらない。公務員制度は正規職員を前提にできており、「法の谷間」に置かれた非正規は待遇などが大きく見劣りしていた。 「会計年度任用職員」という新制度が今年4月にスタートし、非正規にも賞与などの手当が払えることが明確になった。それでも、不安定な立場は変わらない。公務員は民間のような雇用契約ではなく、非正規労働者を保護する枠組みの外にいる。通算5年を超えれば無期雇用へ転換を要求できる「5年ルール」も適用されない・・・

・・・コロナ禍は公共サービスの機能が低下していることもあらわにした。国が困っている人や企業にお金を配ろうとしても民間企業の力を借りないとできない。いろいろな支援事業が巨額の税金で民間委託され、その現場を支えるのは非正規労働者だ・・・

内閣官房の肥大化

9月29日の朝日新聞に、「内閣官房「分室」、安倍政権で40に膨張」が載っていました。
・・・安倍政権で目玉政策が打ち出されるたびに、省庁横断的に対応するため内閣官房に設けられてきた「分室」が過去最多の40にまで膨れあがっている
・・・分室は、法律や閣議決定などに伴い、特別職の官房副長官補がトップを務める内閣官房副長官補室(通称・補室〈ホシツ〉)の下に置かれる。内閣官房に与えられている総合調整の機能を使い、複数の省庁にまたがる重要政策に対応しやすくするのが役割だ。
内閣官房によると、分室は、中央省庁再編時の2001年には5室あった。その後、増えたり減ったりした。7年8カ月余り続いた安倍政権では、31室が役割を終えて廃止されたが、それを大きく上回る48室が新たに作られ、今では40室までに膨らんだ。各省庁から1~2年程度出向している職員を中心に、官房に約800人が常駐しているという・・・

・・・新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、対策強化のために3月下旬にできた「推進室」は多忙を極める。その一方で、安倍政権が選挙などのたびに打ち出したスローガン、「働き方改革」「1億総活躍」「人生100年時代」などを冠した分室は、4月1日時点で常駐の職員がいない。複数の分室の役職を兼務する職員も少なくない。ある官邸幹部は「中には何を今しているのか分からないものもある」と認める。
ただ、議員が主導した法律に伴い設置された分室もあり、「廃止や移管すると、『政府の意識が低い』と映ってしまう恐れがあり、なかなか簡単に減らせない」(官邸幹部)といった事情も、分室が減らないことの背景にある・・・

どのような室があるか、記事を見てください。
このような内閣官房をはじめ総理官邸を支える仕組み、そして各省など国家行政機構についての解説書って、ないのですよね。地方行政・地方自治は、大学に講座があり、研究者がいて、マスコミにも専門家がいて、学会もあります。本屋に行くとたくさん関係書が並んでいます。ところが、国家行政・中央政府の研究って、組織だって行われていないのです。「市場」が成り立たないからでしょうが。

幸い、私は総理官邸や内閣府などに勤め、霞が関全体を見るという経験をしました。もちろん、各省の細部までは知りませんが。時間ができたら(現在の連載が終わったら)、次の取り組みとして、国家行政を分析したいと考えています。いつのことやら・・・。