カテゴリーアーカイブ:社会

日本語研究はグローバル化ではない?

2026年5月1日   岡本全勝

4月9日の日経新聞夕刊、グレゴリー・ケズナジャットさんの「グローバル化の言語」から。
・・・大学院を卒業したとき、在留資格を変更した。在学中は「留学生」として滞在していたが、卒業後にこの資格は失効になるので、日本に残って就職する場合はいわゆる就労ビザを取得する必要がある。僕はその頃に新しく導入された「高度専門職」の資格を申請することにした。
高度専門職の在留資格は、審査の結果がポイントによって決められることが特徴だ。ごく簡単に説明すると、国が求める「グローバル」人材の理想像に近いほど点がつく。大学卒業者は10点だが、博士号取得者は30点、30歳未満ならそれだけで15点加算される、年収が高いほど点数が増えるなど、社会人、納税者としての貢献度が数値化されて評価対象になるのだ。

申請時、僕はそれほど若くもなく、年収も微々たるものだったけれど、研究者の場合、論文も評価対象になるので、これでぎりぎり取得できるのではないかと期待した。在学中に発表した、日本近代文学に関する論文のコピーを用意して、他の申請書類とともに入国管理局へ提出した。
ところが係員が予備審査を終えると、ポイントが不足していると伝えてきた。なぜなら、僕の論文は対象外であるからだという。原則として、SCOPUSなどの海外の有名な研究データベースに記録されている論文のみが認められるそうだ・・・

・・・結果として、日本文学の研究者の場合、英語ではなく日本語で研究を行い、国内の学術誌で論文を発表すると、日本の在留資格を申請する際にかえって不利になる。あまりにも不思議な答えで、落胆を通り越して滑稽に思えた。
法務省が意図的に文学などの文系研究の業績を対象外にしたわけではないだろう。高度専門職の資格が創設されたとき、おそらく理系の研究者が想定されていたと思われる。しかし英語で書かれた論文が評価対象になり、日本語で書かれた文系研究の論文が実質対象外になるのは、国のグローバル化に対するアプローチをうまく表象している。
日本でグローバル社会を築き上げる必要性について情熱的に語る声をたびたび耳にする。だがその課題は外国語、とりわけ英語と関連づけられることが多く、日本語の中ですでに行われているグローバル化は往々にして視野に入らない・・・

縮む夫婦の年齢差、1歳以下が半数

2026年4月29日   岡本全勝

4月11日の日経新聞に「縮む夫婦の年齢差「1歳以下」が半数 半世紀で縮小、価値観の近さ重視」が載っていました。

・・・夫が妻より数歳年上なのが当たり前、妻が年上の「姉さん女房」は珍しい――。そんな夫婦像も今は昔、過去半世紀で夫婦の年齢差は大きく縮まった。背景には何があるのだろうか。

厚生労働省の人口動態統計で夫婦の年齢差(初婚同士)を見てみると、1970年時点で最も多かったのは「夫3歳上」(13%)。夫が2〜4歳年上の夫婦が全体の4割近くを占めていた。一方で2024年のデータを見ると、最多は「夫婦同年齢」の23%で、「夫1歳上」(14%)「妻1歳上」(11%)と続く。年齢差が1歳以内の夫婦が全体の48%とほぼ半数になっている。
1970年時点で全体の1割に過ぎなかった「妻年上」の夫婦は26%まで増えた。29歳以下の男性の32%が年上の女性と結婚しており、若い男性ほど年上の妻と結婚する比率が高くなっている。

「20世紀に多かった『年上男性婚』の急減が、婚姻全体の減少にもつながっている」と指摘するのは、ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さん。ここ数年、日本の年間婚姻件数は50万件ほどと、ピーク時(1972年)の半分以下になっている。
こうした変化の背景にあるのは何だろうか。天野さんは「若い世代の理想の夫婦像が、親世代や勤務先の経営者の世代と一変している」ことを挙げる。

国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、理想とする女性のライフコースとして、出産後も仕事を続ける「両立」と答えた未婚の男女の比率が、出産後に再び働く「再就職」の比率を、2021年に初めて上回った。
かつては収入の少ない若い女性が、経済的安定を求めて年上の男性と結婚し、専業主婦になる傾向があった。ただ近年では「収入の伸び悩みが長期化し、女性が専業主婦になるリスクが顕在化した」と大谷大学社会学部講師(家族社会学)の永瀬圭さんは指摘する。
永瀬さんは研究で、近年は収入が高い女性ほど結婚への意欲も高いことを明らかにした。男女双方が結婚相手に経済力を求める風潮が強まり、女性も自身の収入が低いと結婚へのハードルを感じやすくなったという。年収が近い人と結婚する傾向が強まると、年齢の差も自然と縮まる・・・

インターネットでの偽情報、企業被害

2026年4月27日   岡本全勝

4月9日の日経新聞に「SNS偽情報、主要企業5割が被害」が載っていました。
・・・SNSのフェイク情報で被害を受ける企業が増えている。日本経済新聞の調査では、インターネット上でフェイク情報がでまわったことがある企業は5割を超えた。企業が取れる対応策は限られており、現行の法制度を不十分とする回答は8割に上った。官民の情報共有と対策が急務だ。
調査は国内主要企業の社長(会長など含む)を対象にした「社長100人アンケート」を基に3月2〜19日に実施し、143社から回答を得た・・・

それによると、偽情報が出回ったことがあるとの回答は55%。被害の内容(複数回答)は、偽ホームページ47%、静止画34%、偽キャンペーン28%、動画24%です。
偽の電子商取引サイトとユーチューブ広告が出て、会社に苦情が殺到した例もあります。

高齢外国人の介護支援が課題に

2026年4月26日   岡本全勝

4月8日の日経新聞に「高齢外国人 介護支援遠く 65歳以上10年で5割増」が載っていました。

・・・1980〜90年代に来日した在留外国人が高齢期を迎えている。多くが生産現場を支えてきた人々で、65歳以上は10年で5割増えた。ただ保険料を納めているのに、言葉や習慣の違いから介護サービスを利用できないケースもある。制度を周知し、公的支援につなぐ取り組みが欠かせない。

「日本語できますか」「ちょっとなら」。3月、群馬県大泉町で暮らすペルー出身の70代女性は、地域包括支援センターの職員の訪問を受け、片言の日本語で自身の健康状態を伝えた。「心臓が悪くて病院に行った。今は大丈夫」
来日して30年余り。家電製品を組み立てる工場の作業員として働き、社会保険料を納めてきた。家庭内では母国語で会話するため、退職後は「日本語を忘れてきている」といい、同居する家族の付き添いなしで通院するのは難しいと打ち明ける。
センターに事業を委託する社会福祉協議会の担当者は「多言語で声をかけられることが理想だが、対応できる人材がいない」と話す。訪問事業で高齢の在留外国人と面会する際は身ぶり手ぶりで伝えるほか、日本語が理解できる家族に書類を読んでもらうよう頼むのが「今の限界」という。
2024年末時点の出入国在留管理庁のまとめによると、65歳以上の在留外国人は全国で23万人。14年末(14万人)から10年で5割増えた。このうち多数を占める韓国・朝鮮籍の在日コリアンを除くと、14年末(3.2万人)から9.5万人と3倍近く増加し、多国籍化が進んでいる。

日本に3カ月以上滞在する在留外国人は、原則として40歳以上になると介護保険料の納付が義務付けられると同時に、介護保険サービスを受ける権利も得る。ただ、利用には外国人特有の壁がある。
日本で長く暮らし保険料を納めていても、外国人コミュニティーの中で生活しているため、母国語しか話せなかったり、一度覚えた日本語を忘れてしまったりする高齢の在留外国人は少なくない。コミュニティー内では高齢になった本人だけでなく、親が要介護になる前に子ども世代が制度への理解を深める機会も限られているのが実情だ。

入管庁が2024年、在留外国人約2900人に介護保険に関する困りごとを複数回答で聞いたところ、37%が「制度の詳しい内容が分からない」と答えた。外国人住民が多い自治体も、対応する人手やノウハウが足りないといった課題を抱える。
民間支援団体「外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト」の木下貴雄代表によると、高齢化の問題は言語だけでなく、文化や習慣、食事などの面でもみられる。例えば、デイサービスのレクリエーションでは日本の歌を歌ったり折り紙をしたりすることが多いが「母国ではなじみがないため、孤立感を抱く人も多い」。今後は認知症を患う高齢外国人の増加も見込まれるため、公的サービスが利用しづらいままだと家族の負担が増すなど悪循環に陥る恐れがあると懸念する・・・

世界で進む視力の低下

2026年4月23日   岡本全勝

4月6日の日経新聞に「近視の経済損失、25年後に年間15兆円?」が載っていました。
・・・視力の低下が経済成長の足かせになるかもしれない。2050年に世界人口の半数が近視になり、国内の経済損失は年間15兆円に上るという試算もある。緑内障や白内障を引き起こすリスクも高まるとされる。世界保健機関(WHO)は「近視は重大な問題だ」と警鐘を鳴らす。

人口の4割近くを高齢者が占める25年後の日本。3人に1人が強度の近視を患い、医療機関には視力低下に悩む患者が連日殺到する。膨れ上がる医療費を支える数少ない現役世代も、家族のケアのため離職を迫られる――。視力低下に有効な手立てをとれなければ、こんな未来が待っているかもしれない。
眼病治療薬の開発などを手掛ける窪田製薬ホールディングスの窪田良社長は「近視は単なる視力低下ではなく、労働生産性の著しい低下や失明リスクを招く現代の生活習慣病だ」と指摘する。
眼科医でもある窪田氏が、人口動態の見通しなどを加味して推計すると、最悪のシナリオでは50年に近視による経済損失が年間15兆円に達する。現在は年間6兆円程度で、損失規模は25年で2.5倍に膨らむ。
16年の米眼科学会誌に掲載された論文によると、50年に世界人口の約半数にあたる47億5800万人が近視となる見通しだ。世界全体の経済損失を年間4100億ドル(約60兆円)とする研究もある。

日本の近視人口は増加の一途をたどる。文部科学省の学校保健統計によると、25年度には視力が1.0未満の割合が小学生で4割近く、高校生では7割超に上った。それぞれ19%、53%だった1986年度と比べて大幅な増加だ。
スマートフォンやタブレット端末の普及のほか、新型コロナウイルス禍の感染対策で家の中で過ごす時間が増えたことも拍車をかけたとみられる・・・

図では、世界の人口のうち2000年では23%が近視でしたが、現在は30%を超えています。そして2050年には50%になると予測されています。