カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

都市への人口集中

14日の日経新聞「景気データ」は、都市部への人口流入が加速していることを、伝えていました。東京・名古屋・関西の三大都市圏への転入超過数が、2005、2006年と急増しています。
高度経済成長期に、大都市への人口流入が進みました。その後、石油危機などで転入が急減し、1976年に転出超過になりました。1980年代後半のバブル期に、再び転入が増え、第二期の大都市集中でした。バブル崩壊後は急減し、1993年には転出超過になりました。そして1996年から転入が増え始め、第三期の大都市集中になっています。
生産性の高い大都市に人口が集中すると、経済成長につながるという主張があります。しかし、一方で大都市集中は社会問題を生むとともに、現在では地方と都市の格差問題をも生んでいます。

大店法緩和

8日の朝日新聞変転経済は、大規模小売店舗法緩和でした。中心市街地への、大型スーパー出店を抑える目的の法律でした。日米構造協議を受けて、徐々に緩和され、最終的には廃止されました。そして、郊外・ロードサイドに大型店ができ、中心市街地は寂れました。もちろんその背景には、地方の車社会があります。
市街地でのスーパー対商店街という対立が、市街地対郊外店の対立に変化していたのです。経済合理性と言えばそれまでなのでしょうが、車のない子供やお年寄りには冷たい社会です。また、町のにぎわいがなくなることは、町の再生産に失敗したと言うことでしょう。町のパンフレットを作るときに、「我が町の繁華街です」といって、ロードサイドの大型店の写真を載せるのでしょうか。
ヨーロッパでは、少々不便でも郊外型大型店を規制しているところもあると聞きました。まちづくりをどう考えるかということです。

リスク学と行政

大論文「行政構造改革」執筆のために、改めていろんなことを勉強しています。関係論文にあたったり、行政法の教授に教えを請うたり。随筆ではないので、それなりに大変です。平日の夜は懇談会があったり(今日は台風で中止。よって、これを書いています)、土日は疲れて・・。なかなか進みません。「副業」だから、仕方ありません。
三権分立を再確認するために、憲法の教科書を新しく買いました。昭和憲法は書き換えられていませんが、議論はどんどん進んで変化しているのですね。改めて、驚きました。
行政の新しい任務を考えている過程で、「リスク学入門」(岩波書店、2007年)を少しかじりました。現代社会で、リスク(危険・不確実性・不安)が増え、大きくなっています。もちろん原始時代の方が、人間の能力は小さく、自然災害や病気、飢えなどのリスクは大きかったのです。しかし、科学技術の進展で、それらのリスクが小さくなり、豊かになりました。ところが、その科学技術の発展が、新たな危険や不安を生んでいるのです。環境汚染、遺伝子組み換え、原子力発電所の事故、BSE、薬害。いじめや迷惑メールなどもあります。また、寿命が延びたことで、生活費・痴呆の不安も生じます。
「産業社会」が豊かさの光の面であるのに対し、リスク社会はその不安の影の面です。私の主張では、これまで政府は、産業振興で豊かさを増やす施策を行っていました。もちろん、その過程で、リスクを減らす施策にも取り組みました。社会保障・環境行政などです。しかしまだ、産業振興の方に重点が置かれ、生活の安全安心のための施策が少ないのではないか、ということです。その一端は、「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊「地方財務」8月号に書きました。
さらに言うと、豊かさという目標に誘導するのが、これまでの行政でした。豊かさを達成し、各人の幸せが単一のものでなくなった時に、幸せの追求は各人にしてもらい、行政はそのための条件作り=障害除去が仕事になると思うのです。

温暖化と農産物

30日の朝日新聞は、「温暖化後はこんな夏」を伝えていました。温暖化で米の収量が落ちるだけでなく、九州での1等米の比率は、1980年代半ばまで80%程度だったのが、2009年産では30%まで落ち込んだそうです。大変なことだと思います。が、どうもこの記事だけでは、腑に落ちません。
なぜ、南方が原産の米が、温暖化で収量が落ちたり、味が落ちるのでしょうか。もう少し説明して欲しいです。学生時代には「東北や北海道では米が良く育たないので、かつては苦労した。品種改良で米が取れるようになった」と習いました。インドや中国南部では、どうなっているのでしょうか。品種が違うと言えば、それまでですが。また、温暖化って、80年代から始まっていたのでしたっけ。
リンゴが色づかなくなったという記事もありますが、一方で温暖化で育ちやすくなった作物もあると思うのですが・・。

所得格差

25日の新聞は、厚労省の発表した「2005年所得再分配調査」を伝えていました。それによると、当初所得のジニ係数は、前回2002年の0.498と比べ、0.526と拡大(格差が広がって)います。その主な要因は、高齢化です。すなわち、高齢者は金持ちと貧乏の差が大きいのです。また、この格差は、近年広がり続けています。
当初所得に、税金の徴収と年金などの社会保障の給付を加味したのが、再分配後所得です。これは、より平等になります。再分配後のジニ係数は0.387と、前回の0.381と比べほぼ横ばいです。社会保障が機能しているということです。もちろん、この0.387が水準としてよいものかどうか、という問題はあります。さらに課題は、若年層での格差の拡大と、地域間の格差です。