カテゴリーアーカイブ:社会と政治

世界に出ていかなかった政治

2009年10月3日   岡本全勝
日本が、世界第2位の経済大国になるまで、経済規模の拡大とともに、企業は発展しました。そこには、国内での競争があり、社会も活き活きとしていました。しかし、日本が世界第2位の経済大国になった時、そこで次なるフロンティアを目指したかどうか。それが、企業にも日本社会にも、分かれ道になったというのが、私の仮説です。
個人にしろ企業にしろ、発展するためには、(内に)高い志を持つか、欲望を持つか。(外で)他人と競争するか、強制されるか。いずれかが必要です。
海外を目指した企業がさらに発展し、国内に閉じこもった企業は、そこで発展を止めました。もっとも、その時点で、直ちにダメになったのではありません。1億人という国内市場があるので、そこそこ発展します。しかし、ダイナミズムは失われ、さらに海外企業が入ってきた時に、負けてしまうのです。
それと同様に、日本社会をリードしていた「業界」が、世界を目指さず、国内に閉じこもったことが、日本社会の停滞を招きました。代表選手が、「銀行」「政治と官僚」「マスコミ」の3つです。これらは、戦後の日本の発展に、大きく寄与しました。しかし、世界第2位の経済大国になった時、そこで安住してしまったのです。引き続き、国内では威張っていながら、海外で勝負しなかった業界です。
「銀行」は、日本の企業・産業の代表として、挙げました。もちろん、単なる企業の一つではなく、金融という「血管」を通して、日本の金融構造を決めていました。規制によって、守られていた業界の代表です。バブルの時に海外に大きく出ていきましたが、うまくいきませんでした。そして、金融自由化が進むと、安心だといわれた銀行が、いくつも倒れました。
「政治と官僚」は、今回の議論の中心です。もちろん、政府は主権国家であり、通常は、国境を越えて働くことはありません。しかし、国際社会での議論に、積極的に参加するのかどうか。議論を、リードするかどうか。国際政治の世界もまた、世界市場と同じく、競争の世界です。そこでの競争が、日本政治を活性化します。
もちろん、「そんなことをしなくても、国内政治は活性化する」とおっしゃる人もあるでしょう。確かに、新しい課題を取り上げ、解決していくことが、国内政治を活性化します。しかし、過去の成功に安住すると、新しいことに取り組まない。また、既存の仕組みを変えないように、なるのです。予算や人員の配分を、変えようとはしないのです。
繰り返します。個人と同様に組織も、内に高い志を持つか、外で競争するか。発展するためには、いずれかが、必要なのです。フロンティアという言葉は、それを示しています。

海外で競争しないことが日本の停滞を招いた

2009年10月2日   岡本全勝
昨日の続きです。「国際貢献をしなかった」という話は、私の昔からの持論です。今回の主張は、それが、国内にも大きな影響を与えた、ということです。すなわち、「海外に出て行かず、国内で閉じこもったことが、今日の日本の停滞を招いた」ということです。
例えば、企業です。国内経済が発展・拡大している時は、国内で規模を大きくしていれば、企業は発展しました。そして、国内企業との競争が、その会社を活性化しました。しかし、国内市場のパイが飽和に近づいた時、国内で競争していても、企業は発展しません。もちろん、新しい商品やサービスを開発すれば、新たな発展があります。
しかし、テレビにしろ自動車にしろ、もう、そんなにびっくりするような技術革新はありません。そして、日本の国内市場は、人口の減少により、縮小するのです。
その際に、海外に市場を求めた企業は、発展しました。もちろん、海外企業との厳しい競争や、日本と異なる言葉や商慣習に、打ち勝つ必要もありました。それに負けた企業は、敗退します。しかし、それは国内で競争しても同じことです。日本市場に閉じこもって、現状維持、または減少で満足するか。海外で競争するかです。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン。これが市場経済です。
さらに、国際化は、海外企業が日本に参入してくる、ということです。国内市場で満足していても、入ってくる海外製品や海外企業に負けることもあります。規制に守られた産業は、発展しませんでした。農業が代表例です。
これがどうして、日本の停滞を招いたか。それについては、次回に解説します。

国際社会での位置と自覚

2009年10月1日   岡本全勝
この1年間、いろいろなことを、考えることができました。あまりに幅広くだったので、うまく整理できていません。それは、世界の中の日本、これからの日本の在り方、政府と社会の関係、政府と市場の関わり方などです。どのような切り口で、分類するのがよいのか。少しずつ書くことで、整理したいと思います。
日本が、世界第2位の経済大国になったのは、1968年(昭和43年)でした。西ドイツを抜いて、アメリカに次ぐ規模になったのです。もっとも、東側ではソ連がいたので、西側で第2位と言った方が正確でしょう。
今年で41年。半世紀とは言いませんが、結構な長さです。この事実を、改めて考えさせられました。
その間、日本人は、世界第2位の経済大国であるということを、自覚していたでしょうか。もちろん、経済の規模で国のありようが決まる。そのようなものでは、ありません。しかし、各国が集まって構成している国際社会では、その「からだ」の大きさにふさわしい立ち居振る舞いが、期待されるのでしょう。
「国際連合への負担金を、たくさん納めていればよい」というものでは、ありません。私が言いたいのは、国際社会での議論、ルールづくり、秩序維持にどれだけ貢献したかです。
日本は、自国の経済発展にのみ専念し、世界への貢献を怠っていたのではないでしょうか。家庭にたとえると、町内会費を納めるが、会合では発言しない、共同作業には出ていかない、といったところでしょうか。少し極端な言い方をしています(この項、続く)。
なお、連載していた「行政構造改革」では、第3章三2「日本の政治は何をしたか、何をしなかったか」(2)「決断する」(2008年10月号)で、国際貢献を取り上げました。今日の議論は、その延長になります。

日本の風景、点と面

2008年9月22日   岡本全勝
21日の朝日新聞「耕論」「何を目指す?観光庁」、池内紀さんの発言から。
・・日本では総じて、観光地が「点」でしかない。宮島なら厳島神社だけ、姫路なら姫路城しか見ない。点のまわりには雑然とした町しかなく、商店街はシャッターが下りたまま。観光客は点から点へ飛び石で移動するしかない。
ドイツやオーストリア、スイスといった国の観光地は、点ではなく「面」だ。例えばライン川なら、川を中心にして、川沿いの町、背後の丘や森、点点とある古城が全部一体になっている。全体を面として、建物の造りや色などにも厳しい規制をしている。
そうした本当に魅力ある観光地というのは、5年や10年ではできない・・50年、100年単位の取り組みは、中央の役所が関与すればできるというものではない。それぞれの土地に暮らし、風土を愛している人々に任せればいい。例えば、ぼくが、観光庁に一番してほしいのは、せめて世界遺産を中心とした観光地から、看板や広告をなくすこと・・・(9月21日)
22日の読売新聞「平成を歩く」は、「おわびの作法」でした。「誠意を欠けば、火に油・・・」という記事で、最近はやり(?)の企業のおわびを解説しています。反響を呼んだ(問題になった)謝罪会見の表も付いています。
おわびについては、このホームページは先達です。自慢することではありませんが、後輩たちが悩まないように、載せてあります。

日本語とワープロ

2008年9月16日   岡本全勝
YOMIURI PC編集部『パソコンは日本語をどう変えたかー日本語処理の技術史』(2008年、講談社ブルーバックス)が、勉強になりました。
かつて、ワープロを作る際に、日本語が科学的に分析できていなくて、技術者が苦労したという話を聞きました。どのように、文字を入力するかです。アルファベットを使っている言語は、26文字を、キーボードで入力すればいいのです。タイプライターです。もちろん、大文字と小文字やコンマやピリオド、改行なども必要です。
しかし、日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字を使うので、これら3種類が必要なのと、漢字が膨大で、キーボードで入力できないのです。日本語タイプライターは、普及しませんでした。現在は、ローマ字で入力して変換する方法が、主流です。でも、変換が、これまた難しいのです。同音異字がたくさんあります。
その次に、皆さんも経験あるでしょうが、変な語句に変換されることです。漢字を一つ一つ変換していけば、そんなことは起こりません。しかし、それでは面倒です。一つの文章や、文節で変換すると、「え~」というような変換が起こります。
「バブル」と打った後に、「のじだい」と入れると、「野路代」と変換された経験をお持ちでしょう。今は、「の時代」となりますがね。
名詞が主で、その後に付く助詞は従なのです。話している時も、「の」はその後の「時代」につくのではなく、その前の「バブル」に付くのですよね。同音異字・同音異義語の変換をどうしたら早くできるか。文脈の中で最適の語をどうして探すか。このような分析は、国文学は役に立たず、技術者が解決していったのです。
わたしは、かつて、音声入力を使っていたこともあります。マイクに向かって読み上げると、パソコンが文章に変換してくれるのです。その際にわかったのは、一語一語では、変換できないのです。前後の文脈からパソコンが良さそうな語を探してくれます。「のじだい」では、パソコンは困ってしまいます。「の」「じ」「だ」「い」と区切って発音したら、パソコンはさらに困ってしまいます。文章は、単語が単に順番に並んでいるのではなく、前後の意味の中で並んでいるのです。
日本語がワープロを進化させ、ワープロが日本語を分析しました。そのほかにも、興味深いことが書かれています。