カテゴリーアーカイブ:社会と政治

日本の売り込み

2008年7月20日   岡本全勝
19日の朝日新聞に、アメリカの編集者であるステーリさんが、「日本の小説、海外に売り込む仕掛け必要。作品には世界に訴える力」を書いていました。日本の小説が英語に翻訳されて海外の書店に並ぶ機会は、とても少ないのだそうです。
・・日本の出版業界に欠けているのは、積極的なプロモーションだ。日本文学の英文情報を充実させ、海外の出版社に売り込めばいい。日本のアニメーションや漫画が欧米で受け入れられた結果、「日本の小説も若者に売れるのではないか」「村上春樹に続く大物を探そう」という考えが海外の出版社に潜在的にある。
・・ソニーやトヨタという工業製品に続き、和食や漫画が国際化した。次は日本文学の番だ。小説という日本の精神文化の世界に、海外の文学ファンを呼び込もうではないか・・
工業製品はモノであって、言葉がいらないから、性能で売れた。ポケモンは、暴力場面がないとともに、「ピカー」としか言わないから(日本語をしゃべらないから)海外で売れた、という説があります。もっとも、ピカチュウ以外の登場人物は、しゃべってますが。アニメや漫画は、絵とストーリーで理解でき、「深い言葉」がいらないので、日本語でも翻訳が簡単なのでしょう。
海外で闘わない「業界」に共通するのは、国内で一定の市場があり経営が成り立つこと、そしてそれに安住していることです。

ミスによる事故の原因究明

2008年7月6日   岡本全勝
6日の朝日新聞「耕論」は、ヒューマンエラーの責任として、業務上の個人のミスと刑事罰について、3人の方の意見を載せていました。
柳田邦男さんは、高裁判決文の「初歩的なミス」「あってはならない誤り」を批判し、ミスに初歩的、専門的の区分はない、ヒューマンエラーを絶対許さないとの前提で安全対策を考えたら、そのシステムは崩壊すると述べておられます。「人間は間違える」ことを前提に、対策を考えるべきと主張しておられます。そして、現場の個人を厳罰に処しても、関係者が萎縮し、事故の背景や構造が分析されない、不利益なことを黙秘すると真相究明ができないことを指摘しておられます。
池田茂穂さんは、検察の限界を述べておられます。その際、「日本の行政はどちらかというと、消費者より製造者の側に立っている場合が多いように思う。国土交通省や航空・鉄道事故調査委員会は事実を解明すると言っているが、実際はこうしたさまざまな力学の中で真実が隠され、核心に迫れていないのではないだろうか」と指摘しています。
佐藤健宗さんは、刑事裁判ではできない事故調査を、第三者機関が行う必要を述べておられます。そして、アメリカに比べ、国交省の役人が調査官になるようでは、中立性に疑問が残ると述べておられます。
詳しくは、原文をお読みください。

車減少社会の到来

2008年6月22日   岡本全勝
日経新聞が19日から、「縮むクルマ経済」を連載していました。主要先進国で初めて、日本の自動車保有台数が減り始めました。当然、予測されたことですが。少子高齢化に、若者の車離れ、ガソリン高が追い打ちをかけました。それは、自動車業界だけでなく、ロードサイド型の小売業・飲食店・娯楽産業に、モデルの転換を迫ります。これについては、連載を読んでください。
さらに、道路建設をはじめとする公共事業や、公共交通とまちづくりの哲学も、これまでの方向を変える必要があります。コンパクトシティーは、その一つの考えです。産業界は市場経済が淘汰してくれますが、公共事業やまちづくりは、政治と国民が考えを変えないと、方向転換できません。

社会のルールを誰が決めるか

2008年6月7日   岡本全勝
昨日、「経済活動のルールを誰が決めるか」を書きました。26日の日経新聞「論点争点」が、「健全サイトの認定機関、法規制回避へ自主対応」を書いていました。これは、有害情報を誰が規制するかです。
青少年の保護のために、携帯電話のサイトでの違法・有害コンテンツの閲覧を制限する話です。自民党は、国の審議会が有害サイトを指定し、プロバイダーにそのサイトを青少年が閲覧できなくするように義務付ける法案を考えました。これに対し、業界が自主規制を始めたのです。コンテンツ業界やプロバイダー、電気通信事業者が、監視機構を立ち上げました。外部の有識者が審査して、認定するそうです。
これには前例があり、放送倫理・番組向上機構も、法律による規制を回避するために、民間が自主規制したのだそうです。
表現の自由と青少年保護、難しい問題です。新しい技術によって新しいサービスが普及すると、社会のルールづくりが課題になります。(5月26日)
6日の日経新聞経済教室は、塩沢修平教授の「企業の社会貢献活動のあり方」でした。社会システムを、市場・政治・狭義の社会の3つのシステムからなると捉えておられます。これは、拙著「新地方自治入門」第8章「公の範囲は」で解説したのと同じ考えです。そして、公共サービスで政府・企業・NPOは競合すること、政治・市場を補完する上で企業の役割は重要と述べておられます。

経済と政治・国家間交渉

2008年5月25日   岡本全勝
24日の朝日新聞変転経済は、「95年、日米摩擦解消の切り札、トヨタの海外生産」「国際プラン準備しています」でした。生産台数世界一になったトヨタ自動車の、海外生産への転身についてです。
1960~70年代は貿易と資本の自由化を迫られ、1985年のプラザ合意で円高が加速しました。1990年代の日米通商摩擦と超円高(1ドル=80円にもなりました)という逆風を乗り越えたのは、海外生産の加速でした。
興味深いインタビューが載っています。日米自動車協議の担当だった、渡辺修通産省機械情報産業局長が、次のように述べておられます。
「・・以前の日米交渉では、通産省が早く妥協しようとして業界にずいぶん無理をしてもらった。数字はビジネスの結果として出てくるものだが、部品購入の数値目標はあらかじめ約束させるもの。政府が受け入れれば、業界に再び無理をお願いすることになる。それはやめようという原則を貫きました。答は、民間にしか出せなかったのです・・」
次のようなくだりもあります。
・・約4千人いた本社事務部門の社員の2割を、中長期の経営課題などに対応するチームの専従者として引き抜いた。残りの8割で従来の業務をこなし、事務の合理化も進める・・
これを2人の有力副社長が、後押しした。1人は財務・経営企画担当の奥田碩で、「変えろ、変えろ。何も変えないやつが一番悪いとゲキを飛ばし続けた。もう1人は人事担当の磯村巌。仕事が増えることをいやがる既存組織の抵抗を見て、全部長を集めて「これはやるんだ」と厳命した。「お前が引き抜かれるかもしれんぞ」と一喝した・・