カテゴリーアーカイブ:政治の役割

原発も家族の形も「裁判所が全部決めている」

2016年3月29日   岡本全勝

日経新聞3月20日「風見鶏」は、坂本英二さんの「縮む政治と膨らむ司法」でした。
・・・日本は先進民主主義国家に違いないが、最近は三権のバランスはこれで良いのかと疑問に思う機会が増えた。この数カ月だけでも政府首脳や与野党議員が固唾をのんで司法判断を見守るケースが相次いだ・・・
・・・昨年12月16日、最高裁は2つの判断を示した。
女性に離婚後6カ月間の再婚禁止期間を設けた民法733条のうち、100日を超える部分は「違憲」。
夫婦は同じ姓を名乗るとする民法750条は「合憲」。選択的別姓制度に合理性がないと断ずるものではないと付言した・・・
・・・日本は法治国家だから判決結果に従うのは当然だ。しかし本来は有権者に選ばれた国会議員がもっと処方箋を示し、利害を調整していくべきではないか。
最高裁は「高度に政治的な事案は明白に違憲でない限り、内閣や国会の判断に従うべきだ」との統治行為論の考え方をとってきた。政治が役割を十分に果たさないため、司法の出番が増えているように感じる。
家族の形、衆参選挙での「1票の格差」是正、憲法への自衛隊の明記などは、長い時間があったにもかかわらず見直しが先送りされ続けてきた。今のままでは「国論を二分した状況を放置するより最高裁に決めてもらった方がいい」との声が出かねない・・・
原文をお読みください。

政府の役割、峻厳さ

2016年3月15日   岡本全勝

朝日新聞3月12日オピニオン欄「東日本大震災5年、私たちは変わったのか:5 公と私」、牧原出先生の「政治問う声、社会決める」から。
・・・「3・11」で、政府の行動に何よりも求められるのは峻厳さだと、国民は体感しました。巨大で深刻な問題に、時機を逸することなく、断固として的確に手を打たねばならないという国家の役割が国民にはっきり見えたのです。
冷戦終結後の1990年代には、物事は社会や市場で解決されるだろうという楽観的なガバナンス論が広がりました。その考えに立った最後の政権が民主党政権ともいえる。ところが2008年のリーマン・ショックでは、市場の暴走に国家がしっかり対峙すべきだという考えが浮上した。こうした考え方を、震災は押し広げました・・

政治の言葉の力

2016年3月6日   岡本全勝

3月6日の読売新聞別刷り「皇室ダイアリー」から。
・・・(エリザベス)女王陛下の戴冠式に出席するため、陛下が初訪英した1953年当時、現地の対日感情は厳しかったが、〈チャーチル首相はじめ、知日英国人の尽力により、あからさまに感じることはなかった〉とつづられていた。
チャーチルは、陛下を歓迎する昼食会に新聞界の代表も招いた。「殿下は非常に幸福な青年だ。過去に生きず、明るい前途がある」と演説し、新時代の到来を印象づけ、かつての敵国への悪感情をあおる論調を巧みに抑えたという・・・

戦後イタリア政治

2016年2月21日   岡本全勝

伊藤武著『イタリア現代史』(2016年、中公新書)が、勉強になりました。第2次大戦後のイタリア政治を、紹介した本です。日本と同じように、イタリアも第2次大戦で大きな被害を受け、ともに戦後復興に成功します。同じように、代議制民主主義でありながら、日本と似た点と、大きく違う点があります。内閣は短期間で交代を繰り返します。同じ首相が、何度も登板します。また、既成政党に反抗して、極右と極左がテロを繰り返します。代議政治が、国民の不満を吸収しきれないのです。
右のキリスト教民主党と左の共産党が2大勢力でしたが、ほかにも小党が乱立し、離合集散を繰り返します。社会の背景が違うと、政党や議会の機能が違うことが、よくわかります。制度を輸入しても、社会が違うと機能が違うのです。
奇跡とも言われる復興を成し遂げ、さらにファッションを中心としたブランドで繁栄します。しかし、マフィアとのつながり、南北問題(豊かな北部と貧しい南部)、腐敗した政党への批判が高まり、政治が大混乱します。その結果、キリスト教民主党と共産党が消滅します。選挙制度も変わり、1994年からは、第二共和政と呼ばれる時代に入ります。相変わらず、政権争いが続きます。政党の組み合わせだけでなく、政党内での主導権争いです。このあたりは、私たちにはわかりにくいところがあります。それでも、ベルルスコーニ首相は、通算10年も政権の座につきます。
イギリスやドイツが議院内閣制で日本に似ている、お手本だとも言われますが、案外似ているのは、イタリアです。たくさんの政治家が出てきて、日本人にはなじみのない名前も多く、その点を別にしても、参考になる本です。新書版の長所は、短い分量で、どれだけわかりやすく解説するかです。分厚い本を書くより、難しいのです。著者の力量が、問われます。

京極純一先生

2016年2月14日   岡本全勝

京極純一先生がお亡くなりになりました。大学に入って受けた、先生の日本政治の授業は、驚きと目から鱗の連続でした。まだ、著書の『日本の政治』は刊行されておらず、その内容を授業で教えてもらっていたのです。「タテマエとホンネ」「へべれけ共同体」といった日本の政治文化は、わかりやすかったです。組織への過同調を「びっくり狸の芋姉ちゃん」を使って説明されたのを、覚えています。今なら、お叱りを受けるでしょうか。ご冥福をお祈りします。