朝日新聞8月18日オピニオン欄、アメリカ外交問題評議会上級研究員、マックス・ブートさんの「米共和党 愚かな党のふり、現実に」から。
・・・1950年代には、民主党の大統領候補だったスティーブンソンは「エッグヘッド(はげ頭の知性派)」、共和党の大統領候補だったアイゼンハワーは「まぬけ」、という図式が定着した。この見方は、リチャード・ホーフスタッターの「アメリカの反知性主義」でお墨付きを得た。
民主党は米国の知性派の代弁者だという印象が固まるなかで、共和党員は、政治目的のために、反知性のレッテルを受け入れた。だが、少なくとも最近まで、それは、見せかけのものだった。アイゼンハワーは安全保障問題に比類なき知識を持ち、レーガンは無能な役者に見えて、何十年も公共政策を磨き、演説原稿を自分で書き続けた。ニクソンはキッシンジャーらハーバード大学教授に内外の政策を託した。
レーガン政権時代、共和党は、アメリカンエンタープライズ研究所やヘリテージ財団のような保守系シンクタンク、ウォールストリート・ジャーナル紙、コメンタリー誌などを効果的に活用し、「政策政党」として知られるようになった。
だが、共和党と政策分野のつながりは徐々に弱まっている。かつてはアービング・クリストルやジョージ・ウィルなどの思想家が果たしていた役割を、ラジオトーク番組の司会者やテレビタレントが担うようになった。見境なく、軽率で、すべてを消耗させる怒りの感情が真っ先に漂うようになった・・・
カテゴリーアーカイブ:政治の役割
イギリスのイラク参戦、その検証
朝日新聞8月19日オピニオン欄「イラク参戦、英の誤り」、英王立統合軍防衛研究所前所長、マイケル・クラークさんのインタビューから。
「報告書の指摘の中で何が最も重要だと考えますか」という問に。
・・・英政府全体が組織的機能不全に陥っていた、という点です。特に内閣の機能不全です。後世の歴史家はそこに着目するでしょう・・・
「中東を熟知した英情報将校「アラビアのロレンス」は21世紀にはもういないのですね」という問には。
・・・その通りです。西側情報機関はイラク軍、共和国防衛隊の指揮官らの携帯電話番号をつかみ、彼らの居場所をつかんでいた。一方でイラクの電力や上下水道などの社会基盤がいかに劣化していたかに考えが及ばず、戦後も国家機能が維持できると考えた。イラクの経済状況を全く把握していなかったのです。植民地時代には現地に長年滞在し、人脈を持ち、地域に精通した行政官が何世代も生み出されていました。植民地主義の是非はともかく、彼らは極めて有能で物事を進めるのが得意でした・・・
・・・開戦前の計画は優れたものではなかったが、適切な戦後計画を欠いたことで事態はさらに悪化した。この点について(占領政策を主導した)米国には英国以上に重大な責任があります・・・
・・・重要なのは、戦略的観点で政策を判断することです。イラク戦争の最大の勝者はイランでした。そのために英米の中東における権益維持はより困難になった。イランは域内での米英の最大の敵対相手なのですから。独裁者の除去が倫理的に正しいかどうかは別に、戦略的な計算では行動の結果、域内がより安定したかどうかが問われます。戦略的には米英が目指したものと全く逆の効果になりました・・・
社会の分断、それを解決する政治
イギリスのEU離脱国民投票結果について、EU発展の視点や国際統合の視点とともに、国内の対立(スコットランドとイングランド、富裕層と貧困層、北部と南部、高学歴低学歴等)が現れたという見方があります。例えば、7月5日の日経新聞経済教室、力久昌幸・同志社大学教授「世代・階層間の分断深刻 英国解体懸念払拭できず」。(2016年7月20日の記述も)。社会の分裂が表面化したのです。国際統合という「高い理想の政治」に対し、「庶民の不満の政治」が抵抗したのです。国際政治と見るか国内政治と見るかです。
社会の亀裂を統合するのも、政治の役割です。国民を構成する集団間に格差(経済格差、政治的不平等など)や考え方の違い(宗教間対立)が大きくなり、不満がたまると、騒動や暴動になります。
ところが、イギリスの歴史は、これまでも社会の課題や亀裂を、どのようにして解決していったかの「教科書」なのです。このホームページでも詳しく紹介した、近藤和彦著『イギリス史10講』(2013年、岩波新書)をお読みください(2014年7月27日。覇権国家イギリスを作った仕組み)。
ひるがえって、現在日本の社会の亀裂は何か。私は、世代間対立(年金受給者対若者)や、都市対地方が対立軸だと考えていました。しかし、近年は、日本社会で最も大きな亀裂は、正規対非正規と考えています(2016年6月2日。現在日本社会の亀裂)。日本の政治がこの課題をどのように解決していくか。それが問われています。
ところで、社会の異なる利害を代表するのが、政党の役割です。彼らが、選挙や議会で議論を戦わせて、問題を解決していきます。しかし、イギリスのこの対立は、与野党対立に代表されていません。与党下院議員の4割が離脱を支持しました。日本においても、先に挙げた社会の課題はまだ、政党間対立の主要な争点になっていません。
保守主義とは何か、宇野重規先生
宇野重規著『保守主義とは何か』(2016年、中公新書)が、勉強になりました。詳しくは本を読んでいただくとして。あまり考えることなく、「保守」や「革新」、「保守主義」という言葉を使います。伝統主義、復古主義、新自由主義、さらには保守感情とは、どこが違うのか。よくわかります。
保守感情、伝統主義は古くからありますが、保守主義は「革命」「進歩」という概念、政治主張に対して生まれた考えです。進歩という概念が力を失うと、保守主義も影が薄くなってきます。
宇野先生の、いつもながらの切れ味の良い説明は、わかりやすいです。ただし、第4章日本の保守主義は、対象となる日本の保守主義が曖昧なので、分析は一刀両断にはならないようです。
お勧めです。
憲法改正の回数
7月25日の読売新聞政治面、井上武史・九州大学准教授のインタビュー「社会の変化 対応する憲法に」に、主要国の憲法改正要件と戦後の改正の回数が載っています。それによると、各国の憲法改正の回数は、次の通り。
韓国9回、アメリカ6回、カナダ19回、フランス27回、ドイツ60回、日本なし。
やはり、日本は特異ですね。この70年間、解釈改憲でつないだのか、改正すべきことがなかったのか、改正すべきことがあるのに放置しているのか。
いろいろな原因や背景があります。しかし「日本は、憲法を改正する必要はなかったんだ」と言い切れるでしょうか。私は、時代に合った憲法に改正すべきだと考えています。「憲法を守れ」と「必要な改正はする」は両立するはずです。マスコミが「革新勢力」と呼んだグループが、憲法改正に反対するという「ねじれ」あるいは「命名の間違い」も、あります。