カテゴリーアーカイブ:政治の役割

なぜ「正しい」政策ができないのか

2026年6月3日   岡本全勝

5月15日の日経新聞オピニオン欄、門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの「なぜ「正しい」政策ができないのか」から。

・・・政府は補助金を出して燃料油価格を抑えている。これに対しては①富裕層ドライバーも得をする不公平②財政負担の増大③需要抑制に逆行④脱炭素化とも矛盾――など多くの批判がある。
日経本紙が4月に実施した経済学者50人のアンケートでは、「ガソリン価格を抑えるための補助金支給は、縮小または撤廃するのが望ましい」という考えに、43人が「強くそう思う」「そう思う」と回答している。「そう思わない」は1人だけだった。
経済政策を巡り経済学者の意見がこれほど一致するのは珍しい。この政策の是非はもはや論点ではないということだ。論ずべきは、経済学者がそろって批判する政策がなぜ実施されているのかであり、その理由と対応策を示すのが経済論壇の役割である・・・

・・・コロナ禍に見舞われた2020年に、10万円の特別定額給付金が一律支給された。経済的な損害が大きい人に絞って30万円を支給する案もあったが、迅速に実行できないことが大きな壁となった。
その反省もあり、マイナンバーカードなど行政のデジタル基盤は、ある程度整備されてきた。しかしリアルタイムの所得把握などは進んでおらず、6年たったいまも、30万円支給案を実行できるかどうかは甚だ疑問である・・・

女系・女性天皇

2026年5月30日   岡本全勝

5月23日の読売新聞「論点 皇位継承(2)」笠原英彦・慶応大学名誉教授の「男系限定 世襲危うく」から。

・・・戦後の1947年に施行された現在の皇室典範も明治の方針を踏襲した。しかし、従来の側室制度を除外したことで、永続的に男系皇族を確保するのが難しくなることは明白になった。それにもかかわらず、明治に採用した男系限定を改めようとしなかった政治の不作為が、皇位継承者の急激な減少を招いた。
この状況を重くみた小泉内閣の有識者会議は、2005年の報告書で「男系による継承を貫こうとすることは、最も基本的な伝統としての世襲そのものを危うくする」とした。議論の核心を突いた指摘だろう。

一方、旧皇族の男系男子を養子として皇室に迎える案は「禁じ手」だ。旧典範で天皇と皇族の養子を禁止した際、伊藤らがまとめた解説書は「宗系の紊乱(血統の乱れ)」を避けるためと記す。現在の養子案では皇室の誰が養親になるかによって皇位継承順位が変わる恐れがある。皇位に恣意が加わる余地を排した歴史の知恵に学んでほしい。
皇位継承者の純潔を保つには、現在の皇室と直系でつながる女系・女性天皇を認めるべきだと考える・・・

OECD「日本は消費税18%まで引き上げを」

2026年5月27日   岡本全勝

5月14日の日経新聞に「OECD「消費税18%まで段階引き上げを」 高齢化対応促す」が載っていました。このような提言を、日本政府と国会は無視し続けるのでしょうか。後世の人は、どのような評価をするでしょうか。

・・・経済協力開発機構(OECD)は13日公表した対日経済審査報告で消費税率の段階的引き上げを提言した。最大18%とする試算も例示し、少子高齢化に対応する財源の確保を促した。

OECDのコーマン事務総長は13日の日本記者クラブでの記者会見で「引き上げは全体の租税負担を増やさずに可能だ。ターゲットを絞って低所得層を支援し、消費税による歳入を経済成長につなげる必要がある。財政も持続可能になる」と訴えた。
日本は消費税率を19年に10%に上げたまま据え置いている。OECD加盟国でも低水準にとどまる。

対日審査は隔年で、前回24年も消費税の引き上げを提起していた。動きがないことから、改めて対応が必要と訴えた。税率を年1%ずつ上げて18%にした場合、財政収支が国内総生産(GDP)比で3%程度改善する可能性があるとの試算も添えた。
消費税は社会保障を支える財源として有力と位置づけた。世代間で負担を公平に分担できるほか、財源としての安定性も大きい。貯蓄、投資といった経済行動をゆがめにくい利点もある。
税率を上げれば税収が増える。低所得世帯に絞った給付などの再分配策に充てるべきだと提言した。

高市早苗首相は物価高対策で食料品の消費税率を時限的にゼロにする方針を掲げ、超党派の社会保障国民会議で検討を進めている。コーマン氏は「荒っぽい対応だ。高所得者の方が恩恵が大きくなる」と否定的な考えを示した。
日本は債務残高のGDP比が200%を超え、主要先進国で突出して高い。「中期的に財政を持続可能にする難題に直面している」と強調した。

首相は「責任ある積極財政」を看板として、財政規律に目配りする姿勢をアピールする。市場は財政拡張が成長につながらず、債務だけが増大するリスクを懸念する。
足元で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは1997年以来約29年ぶりの高水準で推移している。13日は一時2.6%まで上昇した。高市政権が発足した2025年10月当時の1.6%台から1%近く高くなっている。
金利が上昇すれば借り換えコストが増し、債務の膨張圧力となる。「公的債務を低下軌道に乗せることを最優先課題とすべきだ」と指摘した。消費増税などによる歳入確保や歳出改革に加え、中長期的な財政再建の道筋を描くよう求めた。
財政健全化の指標として基礎的財政収支の早期の黒字化に言及した。補正予算については「大規模な経済ショック時に限定すべきだ」とクギを刺した。生産性を高めたり労働供給を増やしたりする構造改革も必要だと唱えた・・・

コロナ特例貸付、45%が返済免除

2026年5月26日   岡本全勝

5月12日の朝日新聞に「コロナ特例貸付、45%が返済免除 計6千億円超 生活再建進まず」が載っていました。

・・・コロナ禍で収入が減少した世帯が利用した「コロナ特例貸付」で、貸し出された総額1兆4431億円の45%にあたる6540億円余が「返済免除」となったことが厚生労働省への取材でわかった。コロナ禍後の物価上昇によって、利用世帯の多くが依然として生活再建に苦しんでいるためとみられる。

コロナ特例貸付は、都道府県の社会福祉協議会が低所得世帯を主な対象として実施している「生活福祉資金貸付」の特例制度。原資は国の補助金で、コロナ禍で収入が減ったと申告した世帯が最大200万円まで借りられた。2020年3月~22年9月に計382万件の利用があった。
返済の時点で住民税が非課税だったり生活保護を受給したりしていると返済が免除される仕組みで、厚労省によると、25年末時点で返済免除は6540億円、生活が苦しい場合に返済を原則1年遅らせられる「猶予」は301億円、猶予の手続きをしていない「遅滞」は1715億円だった。
返済があったのは1323億円で、残る4552億円は返済時期が到来していないという。

全国社会福祉協議会(全社協)がまとめた報告書によると、利用世帯の月収は中央値が15万~16万円程度。コロナ禍前は6割以上の世帯が月収20万円以上だったが、借入時には9割近い世帯が20万円未満に落ち込んでいたという・・・

過疎問題にみる産業政策

2026年5月25日   岡本全勝

東日本大震災の復興に携わってわかったことの一つに、人は産業となりわいがないと暮らしていけないということです。それは、商業などのサービスの必要と、働く場の必要です。その観点から見ると、かつての過疎対策は、少し視点がずれていました。
都会並みの道路や上下水道などの整備に力を入れました。それらも必要だったのですが、働く場のない、買い物の場のない所には、人は住み続けることができません。兼業農家か、近くの働く場所に通うか、それがないと農山村では集落は維持できません。行政サービスの充実も、働く場所があり、住民が住み続けることがあってのことです。

産業構造の変化は、農山村での生活を終わらせました。では、対策はあったのでしょうか。私は、日本の国土政策(過疎過密対策)には、大まかに言って、次のような選択肢があったと思います。
1 東京一極集中(+政令指定都市が生き残る)。これは地方分散政策を行わない場合の道筋ですが、現在の状況はこれに近くなっています。
2 全国各地の集落が存在し続ける。これまでの地方振興政策はこれを目指したようですが、無理なようです。
3 1と2の中間。全国で、県庁所在都市や中核的都市を生き残らせ、そこから遠い集落はここに集約する。

過疎対策の次に取られたのが、地域活性化政策です。その走りは、一村一品運動でしょう。全国各地で、地域を活性化する取り組みです。自治省・総務省も地方制度を所管するだけではすまなくなり(住民がいなくなると自治制度自体が不要になります)、取り組むようになりました。安倍政権でも、地方創生に取り組むことになりました。
地域おこしでは、いくつかの成功事例があるのですが、全国展開にはなっていません。移住も成功している例があるのですが、残念ながら地方の人口を増やす、あるいは減少を止めるほどではありません。
1を止める、2では難しいとなると、3が選択肢だと思います。そして、その肝は産業政策です。