カテゴリーアーカイブ:政治の役割

若者と政治をつなぐには

2021年9月21日   岡本全勝

9月20日の朝日新聞オピニオン欄記者解説は、秋山訓子・編集委員の「若者と政治、つなぐには」でした。

・・・若者の政治参加が進まない。18歳選挙権は2016年から実現したが、若年層の投票率は低いままだ。
若年層の投票率はほぼ一貫して低い。年代別でみると衆院選は1969年以来、20代の投票率が最低だ。2017年の衆院選では10代の投票率は20代に次いで低かった。
他国と比べても日本の若者の政治への関心は低い。内閣府が18年度に実施した日本を含む7カ国の13~29歳の若者の調査によると、今の自国の政治に「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」と答えた割合は日本が最低だ。「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合も日本が一番低い。
とはいえ、無関心一辺倒でもない。同じ調査で「社会のことは複雑で、私は関与したくない」に、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたのは、日本は6位。つまり、社会に関心がないわけではなく、潜在力があることをうかがわせる。

日本の若者の政治への関心が低いのは、国内がそれなりに安定していることに加え、国や社会の問題を自分のこととして考え行動することを学ぶ主権者教育が活発でなかったことも理由に挙げられるだろう。
欧米では主権者教育は盛んに行われている。7カ国の調査で政治への関心が最も高いドイツは、ナチス台頭への反省から主権者教育に重点が置かれ、総選挙の候補者による小学生向けの公開討論会が開かれることもある。
スウェーデンでも授業で模擬選挙や地域の政治家を招いた討論会が行われてきた。若者・市民社会庁が出した主権者教育の指南書「政治について話そう!」もある。政治がごく身近で日常のことと扱われている。一方、日本で主権者教育が注目されるようになったのは18歳選挙権の導入時から。しかも高校生が中心だ・・・

記事には、各国比較の図も載っています。わかりやすいです。この問題は、連載「公共を創る」でも取り上げています。
学校では、政治制度は教えられますが、政治の運用は教えません。完成形の民主主義と三権分立を教え、それが議論の末にできたものであることを教えません。手本を輸入する日本型教育の典型です。
正解がないこと、議論の過程が重要なことは、日本の学校教育では避けられるのです。そして今、国政と自治体でどのような政策が議論され、政党が競っているかも教えません。それで突然、選挙権が与えられます。

肝冷斎に学ぶ、権力争いと部下の道

2021年9月18日   岡本全勝

中国古典の名詩や歴史を取り上げ、解説してくれる「肝冷斎日誌」。専門的で、門外漢には難解なことも多いのですが。9月17日の宋の宰相・秦檜の最後の場面は、わかりやすく勉強になります。

この話を深く理解するには、南宋と金との戦い、秦檜と岳飛との抗争を知らなければならないのですが。この場面だけでも、勉強になります。
政治は、政策(の提示と実現)と権力(の追求と争い)の二つの要素から成り立っていますが、権力(争い)が前面に出てくると、このようになるのですね。
シェークスピアをはじめ小説や劇としては権力争いが面白いのですが、国民にとっては政策実現が重要です。

あなたなら、どうしますか。
第3案、一度は辞退して、再度勧められた受け取る。日本でのお勧め。
第4案、「では、ひとまずお預かりして、秦檜さまがお元気になられたらお返しします」と言う。
第5案、それくらい親しくなっていたら、2人も秦檜のやり口や考えはわかっていただろう。また、秦檜の方も部下の気質を知っていただろう。よって、こんな方法で2人の部下を試すことはない。

ところで、肝冷斎は落とし穴にはまりつつ、元気がないと言いながら、元気よく野球観戦も続けています。

自民党の評価

2021年9月9日   岡本全勝

9月7日の朝日新聞オピニオン欄、久米晃・元自民党事務局長の「向かい風の自民党」から。

――選挙参謀を務めながら、自分のことを「自民党支持者ではない」と言うことがありますね。
「私は保守の人間であって、無原則な支持者ではありません」
――保守とは、どういう意味で言っていますか。
「日本の歴史と伝統文化を守り、常識と秩序を守る態度のことだと思っています。常識は時代に応じて変わるものだとは思いますが、あまり変えたくはない」
「保守の私からみても、自民党の政策が間違っていると思うことはあります。感染症対策も災害対策も、不十分だった点があると言わざるを得ません。個人的には、党の考え方すべてに賛成していたわけではありません」
――自民党の支持者もそうでしょうね。
「世論調査で有権者が『自民党支持』と答えたからといって、すべての人が自民党候補に投票するなどということはありません。勝てる候補は自民党支持の8割の票を取りますが、負ける候補だと6割しか入らないのが実態です」
「自民党支持というのは固い支持ではなく、ゆるやかな『期待』のようなものです。『保守的な無党派層』と言った方が近いかもしれない。よく無党派対策が必要と言われますが、自民党支持を固めることができるかどうかが、昔も今も選挙対策の基本です」

――近年の有権者の心理をどのように見ていますか。
「昭和の時代、自民党にとっては『夢と希望』を語るのが選挙でした。所得倍増、列島改造、経済の復興が代表的です。ところが、ある程度の生活環境が整うと、何を訴えればいいのか、見つけにくくなった。その影響で、平成以降の選挙は有権者の『不平と不満』の表明の手段になっている。政治に期待するものがなくなったということでもあります」
――そうなったのも、自民党の責任ではありませんか。
「そうですね。この状況を野党が作ったわけではない。ただ、国民の要求が多様化し、多くの人が納得できる『夢と希望』を語れるかというと、すごく難しい」

――自民党のありようも変わってきたということですか。
「そもそも自民党は欧州で見られるような政党ではないと思っています。ドイツのキリスト教民主同盟や社会民主党は、イデオロギーや思想があってできた政党で、そこから議員が出てくる。でも、日本の自民党は議員バッジをつけた人が集まって、政党を名乗っているわけです。質が違うと思いますよ」

異なる価値観を統合する場

2021年8月13日   岡本全勝

8月5日の朝日新聞オピニオン欄「夫婦別姓、国会か司法か」が、国民の間の異なる価値観を、どのように統合するかです。予算査定のように「足して二で割ることができない」ことも多いです。どれか一つに決めなければならない場合もあります。

・・・夫婦の姓を同じにしなければ結婚できない今の制度について、最高裁大法廷は2015年に続いて再び、憲法に違反しないと判断した。決定は「制度のあり方を考えるのは国会だ」としてボールを国会側に投げた。決めるのは国会か、それとも司法か。ボールはどこにあるのか・・・

価値観の違い、どうあるべきかの判断は、それぞれの利害得失をあげることはできますが、それを秤にかけることはできません。そして、理論では決まりません。
ここで問われているのは、その決定を国会がするのか、裁判所がするのかということです。国民の代表であり、唯一の立法機関である国会が、国内の異論の決着をつける場所です。国会が決めない、それが憲法に違反するなら、裁判所の出番でしょう。アメリカでは、しばしば最高裁が判断を下すことがあるようです。

子どもの臓器移植の家族同意について、2009年法改正を総理秘書官として官邸から見ていました。行政府の長として総理はどのような立場に置かれるかを考えていたのです。自民党も党議拘束をかけず、議員個人の判断に任せたと記憶しています。「生命倫理をどう議論するか

冷戦長期化は有益

2021年8月12日   岡本全勝

8月5日の日経新聞経済教室経、経済安全保障の論点、國分俊史・多摩大学教授の「冷戦長期化は有益の視点を」から。

・・・米中冷戦は30年以上続くと聞くと、多くの企業人はけげんな表情を浮かべる。しかし冷戦が長期化する方が、日本および世界にとって有益という考え方に人々は気付いていない。冷戦が実際の戦争(熱戦)にならない状態こそが平和な状況という理解に乏しいのだ。
急激に力の均衡が崩れる方が、戦争リスクは高まる。新しい現実への準備が紛争当事国のみならず、周辺国にもできていない状態で勢力均衡が大きく崩れると、新秩序が台頭するまでに混乱が生じる。これを機に現状変更を仕掛けようとする勢力の動きも活発になる。

冷戦を引き起こさない努力と、起きてしまってからの努力では、力の投じ方が全く違う。米中冷戦が起きないことを願ってきた人々は、起きてしまった状態に早く蓋をして、沈静化したいという思いに駆られて早期決着を望みがちだ。だがそれこそが緊張を急激に高めて最悪の結果を招く・・・