「著作と講演」カテゴリーアーカイブ

東京都庁幹部研修

今日7月11日は、東京都庁の幹部研修「行政経営研修」の講師に行ってきました。
都庁の「研修別計画内容」では、2 幹部研修 (3) 幹部研修(悉皆以外)(15ページ)に位置づけられています。
「外部有識者や都庁トップ層との意見交換、研修生間のグループ討議を通じて、
①自分を再認識する。
②新たな知見を得て、都政運営に必要な経営センスを磨く。
③相互に受容・感化しあう人間関係を構築する。」とあります。

今日の参加者は各局の総務課長で、これから部長、局長を目指すまさに幹部候補です。このような人を相手に講義できることは、やりがいがあります。主催者の要請により、講義と班別討議を組み合わせました。難しい課題で、短時間のうちに答えを出さなければならない、そして正解はない設定ですが、皆さん、さすがでした。反応が良いと、話している方も元気が出ます。

都庁は、警察、消防、教育を除いても、約3万人という巨大な組織です。私も県の総務部長や国で次官を務めましたが、3万人の組織は実感がわかないので、事前にいろいろと事情を教えてもらって臨みました。

連載「公共を創る」第228回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第228回「政府の役割の再定義ー異論に耳を傾けることの大切さ」が、発行されました。

政治家と官僚の関係がうまくいっていないことの説明を続けています。
国会議員が官僚を怒鳴ることは、過去からありました。私もで何度か、そのような目に遭ったことがあります。説明を求められて議員会館の事務所に行った際に、議員の意向に添えないことを説明したら、罵倒されたことがありました。長時間、半ば「監禁状態」に置かれたこともあります。当時はそれが当たり前と思っていましたが、いま考えると変なことでした。
そのようなことが行われたのは、官僚が「力を持っている」「政治や政策を決めている」という前提があったのではないかと思います。政治家が自らの意思を通そうとするなら、個々の官僚を怒鳴って従わせるのではなく、政治主導によって実行すればよいのです。

第2次安倍政権時代以降、「野党合同ヒアリング」と呼ばれる場が、しばしば開催されました。野党議員が合同で、会議室に各省の官僚を呼んで、特定の政策や案件について質問をするのです。そして時に官僚を怒鳴りつけ、官僚が無言のまま立ち往生したり、頭を下げて謝るといった場面がありました。その様子は動画サイトで中継され、「官僚つるし上げ」ともいわれました。

旧自治省では、「二度は反論して良い」と教えられました。さすがに政治家には二度も反論することは控えましたが、状況を見て異論を言うことを試みました。
私の話を最も聞いてくださった(ただし意見を容れてくださるかどうかとは別です)のが、麻生太郎・総務大臣でした。そして、首相を目指しておられた麻生大臣から、政策についての意見を求められるようになりました。
2008年9月に発足した麻生内閣で、筆頭格の首相秘書官に起用されました。首相秘書官になっても、このような関係は変わりませんでした。というより、他の人が言わないこと、時に首相にとっては「耳の痛いこと」を言うのが、私の任務だと考えていました。

「管理職の必須知識」講義

今日7月7日は、市町村アカデミーで、「管理職の必須知識講座」の講義をしました。私の役割は、研修の冒頭で、この研修の意図を説明するものです。この研修は、4年前に、私の発案で作ってもらいました。

その意図を、「コメントライナー」(2022年3月1日号)に、概ね次のように書きました。
・・・企業も役所も、管理職の育成に悩んでいます。職員を使って業務を達成するという任務は変わらないのですが、社会の変化や従業員の意識の変化に対応する能力が必要となりました。
これとは別に、管理職に必要な知識が増えました。情報通信技術とサイバーセキュリティ、コンプライアンス、不祥事が起きた際の広報対応、災害時の業務継続、仕事と生活の調和、セクハラやパワハラの防止、心の不調を抱える職員への対応などなど。
担当している業務の専門知識の前に、このような共通知識が必要になりました。これは意外と気がつかれていません。
これらの項目それぞれに、専門書や研修はあります。ところが、これらの一覧、「管理職ならこれだけは覚えておこう」という教科書がないのです・・・

管理職になったばかりの人、これから管理職になる人が、参加しています。皆さん、熱心です。質問も、ふだん悩んでいる問が出ました。

連載「公共を創る」第227回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第227回「政府の役割の再定義ー官僚の意見を聞かない「政治主導」」が、発行されました。

政治家と官僚との意思疎通の重要性を議論しています。ところが、首相官邸と各省との間で十分な打ち合わせがなされない場合や、信頼関係ができていない場合があるのです。
前回、安倍晋三首相の回顧録から、「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」の記述を紹介しました。財務省が安倍首相を「引きずり下ろそうと画策した」というのです。この記述は、首相本人が語っておられる回顧録です。見出しに部下組織との「暗闘」と書かれるのは、穏やかではありません。

菅官房長官・首相は、本人が自ら、総務相時代に、総務省幹部の反対を振り切って、意に沿わない課長を更迭したと書いておられます。また、財務省主計局長の説明に対し、資料を投げつけ、怒鳴ったとも報道されています。
「役人として面従腹背が必要」と発言した、元文部科学事務次官もいました。「忖度」という言葉も、流行しました。

「面従腹背」にしろ「忖度」にしろ、かつては役所では聞かなかった言葉です。そのような言葉が必要な状況になったとすると、大きな問題があるように思えます。そのような状況では、当時の多くの官僚たちは、力を十分に発揮することはできなかったと思われます。
このような事態が生じたのは、官僚主導から政治主導へ転換しようとする意識が、過度に働いたことによるとも考えられます。「政治主導とは官僚主導の否定である」と意識されたのです。そして、官僚の意見を聞かないこと、官僚の意見に反対することが、「政治主導」と思われたのかもしれません。