カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第250回

2026年2月26日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第250回「政府の役割の再定義ー気付きにくい経済と社会の実体的な変化」が発行されました。日本社会が、昭和の働き方から「男女共同参画で仕事も私生活も両立させる暮らし」への転換途中にあることを説明しています。

アジアやアフリカの発展途上国政府幹部に、日本の行政と社会の発展を講義する機会がたびたびあります。当初は、国と地方の行政制度と政策、経済発展と政府の役割を話していたのですが、彼ら彼女らと議論するうちに、日本が成功した要因は行政の有能さだけでなく、それが可能となった社会があったからだと気が付きました。
これまで政府は、モノやサービスの提供に力を入れてきました。しかし現在の大きな課題は、経済停滞と社会の不安です。地域の活力低下と少子化がその象徴です。政府の役割と政策を根本的に変える必要があることは、まだ多くの国民に理解されていません。官僚たちも同様です。モノや制度をつくることに慣れていて、意識や仕組みを変えることを、政府の役割とは理解できていないのです。
ところが、この変化は一部で現実のものとして進みつつあります。男女共同参画、子育て、働き方に関する社会の意識と仕組みは、この30年間に大きく変わりました。

第36回と第37回で「この国のかたち」を変えるためには、国民の意識と生活を変える必要があること、そしてその対象として三つを指摘しました。「国民の政治参加と社会参加」「働き方」「多様性と変化への覚悟」です。また、第149回と第150回で、戦後の日本政治と学問を規定した対立軸が過去のものとなったこと、しかし社会と政治の新しい対立軸の設定に失敗していることを指摘しました。そこで私は、現在の対立軸として、「非正規格差」、昭和後期には適合していましたが現在は足かせになっている社会の慣行についての「保守と革新」、排斥か包摂かという「多様性への対応」の三つを挙げました。これらについての認識と改革が必要なのです。
省庁改革では「この国のかたち」の転換に取り組みました。しかしその省庁改革から四半世紀もたつのに、そしてバブル経済崩壊から35年も経つのに、経済や社会の行き詰まりを解決しようという課題への取り組みは好転しないのか。それは、その後の議論が間違っていたからです。

ところで、「第4章 政府の役割再考」が100回になりました。執筆に着手する前に、大まかな構成を考えたのですが。書いていくうちに、どんどん広がりました。特に「3政府の役割の再定義」(第151回~)が、予想以上に膨らみました。こんなに多くなるなら、章を分割すべきでした。でも、もう少しで完結します。

連載「公共を創る」第249回

2026年2月19日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第249回「政府の役割の再定義ー国民の意識で変化する「この国のかたち」」が発行されました。

地方に若者が、特に女性が戻らないことが、日本全体の人口減少と連動しています。少子化を止めるためには、若い女性が地方に戻り、家庭を持って安心して子育てができるようにしなければなりません。日本全体の人口が増えないと、各地域で子育て支援金を増やしたりして人口の社会増に力を入れても、「限られたパイの奪い合い」、いえ「縮小するパイの奪い合い」になってしまいます。各地域ではそれぞれに工夫を凝らしながら、政府は全体の人口が増えるような最適解を考えなければなりません。

成果・結果から見ると、30年以上にわたる経済停滞は、経済・産業政策に失敗したという結果にほかなりません。また、地方の活力低下は、国土の均衡ある発展を唱えながら、それに失敗したということです。少子化も、かなり古くから指摘されていながら好転しないのは、これまでの取り組みが失敗だったということです。

非正規労働者にしろ、結婚しない若者にしろ、地方に戻らない女性にしろ、彼ら彼女らに主たる原因があるのではなく、そうせざるを得なくしている社会の側に問題があります。非正規労働者が雇用者全体の4割近くになっている状況で、「努力が足りない」とか「非正規雇用を選んだ本人が悪い」とは言えないでしょう。困っている対象者への支援はもちろん必要ですが、社会の側を変えなければ、根本的な解決にはなりません。
大都市に偏っている雇用の場。保育園の送り迎えが難しい長時間労働や長距離通勤。都会への憧れ。これらの仕組みと意識は、豊かになろうとした国民と企業がつくり上げたものです。多くの国民がおかしいと思いながら、そして住民が負担を感じながら出来上がり、国民は仕方なくそれを受け入れてきました。しかし、この仕組みと意義はもう役割を終えました。

日本が直面しているのは、「夫は私生活を犠牲にして職場で働く、妻は家庭を守る」という「昭和の働き方」から、「男女共同参画で、仕事も私生活も両立させる暮らし」への転換です。その昭和の働き方は、憲法が定めたものでも政府が主導したものでもありません。経済成長に邁進した国民と社会がつくったのです。
「この国のかたち」は社会の隅々まで行き渡り強固なものに見えますが、変化しないものではありません。例えば、日本の街は清潔できれいです。海外旅行から帰って来ると、実感します。ところが、かつてはそうでもなかったのです。また、日本社会は時間に正確です。鉄道は数分遅れただけで、お詫わ びの放送を繰り返します。学校や会社では「5分前集合」と教えられ、少しでも遅れると叱られます。これも明治以降のことのようです。

環境省管理職研修講師

2026年2月16日   岡本全勝

今日2月16日は、環境省に呼ばれて、管理職研修の講師を務めてきました。出席者は37人、オンライン受講が22人です。
前半は私の講義、後半は班別討議です。秘書課と一緒に、班別討議の課題を考えました。
中間管理職ならよく直面する「あるある」問題です。それを、どのように切り抜けるか。簡単な正解はありません。答えとともに課程が重要です。参加型研修は、盛り上がります。人数が多いと難しいのですが、これくらいならなんとかできました。
前現の秘書課長も参加してくれたので、講評をしてもらいました。突然に振って、ごめん。

環境省は、省庁再編時に1100人だった定数が、現在では原子力規制庁を入れて3300人に膨れ上がっています。さまざまな職種の職員もいて、管理職研修に力を入れています。
今日の研修が少しでも役に立って、研修生たちの悩みが減ったらうれしいです。

補足 紹介した「明るい課長講座」は、このページです。

自治大学校で講演

2026年2月12日   岡本全勝

今日2月12日は、自治大学校で講演をしてきました。第1部、第2部、第1部・第2部特別の3課程合同の講演です。合計170人の研修生が聞いてくださいました。
私は、2010年夏から2011年春まで、校長を務めました。3月11日に東日本大震災が発生し、その1週間後に首相官邸から呼び出しを受け、被災者支援にあたり、戻ることはありませんでした。

研修生たちは、今後、各自治体の幹部になる人たちです。そこで、「未来の自治体幹部に望む」と題してお話ししました。仕事をしていく上で考えてほしい「日本の現状」を述べ、良い管理職になるだけでなく幹部にさらに首長になってほしいと話しました。人数が多いので、班別討議など参加型の研修は断念し、質疑の時間を長めに取りました。
幹部候補なので、みなさん熱心に聞いてくれました。質疑も大いに盛り上がりました。

補足、お詫びの仕方はこちら

連載「公共を創る」第248回

2026年2月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第248回「政府の役割の再定義ー「生活者中心の社会と暮らし」への変化を」が発行されました。地方の問題である人口減少と活力低下に対して、政府や地方自治体が取り組んできた政策が成果を挙げていないことを説明してきました。

次に、日本の問題である少子化と人口減少についてです。地方での活力低下と、日本の少子化・人口減少は、連動しています。
少子化・人口減少の背景にも、「経済的要因」と「国民意識」があります。少子化は「夫婦が子どもを持たなくなっていることが原因だ」といわれますが、それは間違っているようです。その前に、結婚する若者が減っているからです。子どもの数を増やすには、子育て支援の前に、未婚対策を行わなければならないようです。

経済的要因では、長期不況で非正規労働者が増え、その人たちは給与が低く、将来の生活にも不安があり、結婚に踏み出せないのです。婚姻数を増やすには、非正規労働者を減らして安定した職にするとともに、家族生活が可能な水準まで給与を上げる必要があります。考えられる一つの対策は、短時間正社員制度です。
「リストラ」「小さな政府」という主張の下、人件費を削ってきたツケが回ってきたとも言えます。若い人の給与を引き上げ、身分を安定させること、そのためにも日本経済の再生が少子化対策の肝でもあるのです。

意識調査では、若い人の結婚願望は昔と大きく変わっていません。「結婚したいけどできない」という人も多いのです。雇用を中心とした暮らしの安定と、将来の子育てについて、自信が持てないからでしょう。少子化の原因は、若者が結婚したくないという意識を持つかどうかにあるのではなく、若者に安心して子どもを持てるような環境を提供していない社会の側にあります。
働き方改革が進みつつありますが、残業が多かったり、育児休業が取りにくかったりすると、子育てができません。保育園を増やすといった直接的な支援だけでなく、社会の仕組みと国民全体の意識を変えていく必要があるのです。子育ては、働き方改革と男女共同参画型社会実現の結節点にあります。

通勤地獄と長距離・長時間通勤も変えなければなりません。これは、夫が働きに出て、妻が家庭を守る「昭和の働き方」だからできたのです。
企業内保育園への子どもを連れての出勤、あるいは自宅近くの保育園への送迎は、職住が離れていては難しいのです。大都市集中を改善しないと、子どもの数は増えないでしょう。
これらの問題は、企業が取り組まないと改善しません。