カテゴリーアーカイブ:社会の見方

チャーチル著『第二次世界大戦2』

2024年9月19日   岡本全勝

ウィンストン・チャーチル著『第二次世界大戦2―彼らの最良のとき』(みすず書房)が出版されました。
いよいよチャーチルが首相になって、劣勢で困難なイギリスを率います。

昨年8月に『第二次世界大戦1―湧き起こる戦雲』が出版され、今年が第2巻です。それぞれに約900ページの分厚さです。チャーチルは、よくこれだけのものを、しかも晩年に書けたものですね。

最低賃金では、従業員が集まらない

2024年9月18日   岡本全勝

8月30日の朝日新聞に「最低賃金では、もはや人が来ない 観光地、活況でも人手不足 「仕事逃す」時給上げても募集」が載っていました。

・・・全都道府県の最低賃金(時給)の改定額が、激しい引き上げ競争の末に決まった。ただ、最低賃金水準ではもはや働き手が確保できず、最低賃金を大きく上回る時給での募集も目立つ。

全国有数の観光地・奈川県箱根町。今月のお盆期間中、箱根湯本駅前の商店街は国内外の観光客でにぎわっていた。「2019年以降、地震や台風の被害、新型コロナと続いた。ようやく長いトンネルを抜けつつある」。同町観光協会の佐藤守専務理事はそう評価しつつ、「コロナで離職者も多く、今は人手不足が深刻だ」と語る。
箱根町を管轄するハローワーク小田原の求人(6月分)で最も多いのはサービス業で、パートの有効求人倍率は3倍近い。募集時給の下限は平均1311円で、現状の最低賃金(1112円)より199円も高い。
神奈川県の最低賃金審議会は今回、国側の目安通り50円増の1162円に引き上げた。審議の場で、使用者側は大きな不満を述べるというよりも、「仕事が目の前にあっても見送らざるをえないことがある」と人手不足を訴えた。
採決でも、使用者側は一人も反対しなかった。10年度以来、14年ぶりの全会一致だった・・・

Q 日本の最低賃金は他の国と比べてどうなのか。
A 労働政策研究・研修機構の調査によると、先進国の中で低水準だ。1月時点では、日本はオーストラリア、ドイツ、英国、フランスの半分程度で、カナダ、米国、韓国よりも下回っている。

各国の最低賃金(2024年1月1日、円換算)が図で載っています。オーストラリアが2241円、ドイツが1943円、イギリスが1893円、韓国が1082円、アメリカ(連邦)1040円。日本は1004円です。

『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』

2024年9月17日   岡本全勝

小野寺拓也・田野大輔著『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(2023年、岩波ブックレット)を、積ん読の山に見つけて読みました。
宣伝文には、次のように書かれています。
「「ナチスは良いこともした」という言説は、国内外で定期的に議論の的になり続けている。アウトバーンを建設した、失業率を低下させた、福祉政策を行った――功績とされがちな事象をとりあげ、ナチズム研究の蓄積をもとに事実性や文脈を検証。歴史修正主義が影響力を持つなか、多角的な視点で歴史を考察することの大切さを訴える」

本書では、それらの「俗説」を取り上げ、「その政策がナチスのオリジナルな政策だったのか」「その政策がナチ体制においてどのような目的を持っていたのが」「その政策が「肯定的な」結果を生んだのか」という3つの視点から検討します。
どの政策も、ナチス独自で考えたものではなく、既にドイツや他国で試みられていたものであること。各政策が、それぞれに適切な目的を持っていたこともあるが、次第に戦争へと利用されること。フォルクスワーゲンも、国民には1台もわたらなかったように、かけ声倒れが多かったことを、説明します。

ヒットラーと側近も、国民の支持を獲得するために、様々な国民向けの政策を、大胆に実施します。もっとも、それが持続し、成果を出すところまで行っていないのです。
誤解を恐れずに言うと、その目的や結果を別にして「既にドイツや他国で試みられていたものを、ナチスが大々的に実行した」ことは、評価されてもよいと思います。それができないのが、通常の政治ですから。「だから独裁政治が良い」とは言いません。

ブックレットなので、100ページあまりで、読みやすく、お勧めします。

エスカレーターで歩かない。名古屋で定着

2024年9月16日   岡本全勝

8月31日の日経新聞夕刊に「エスカレーター「歩かない」定着 名古屋市、条例浸透で9割超に」が載っていました。

・・・エスカレーターで歩かず、立ち止まって利用することを義務付けた名古屋市の条例が市民の間で定着してきた。市は人工知能(AI)を活用し、人の動きに合わせて音声で注意を呼びかける装置や、立ち止まって2列で乗るように促す啓発スタッフを駅に配置するなど独自の施策を展開。市の分析では、立ち止まって利用する人が9割超に上った・・・

・・・昨年10月の条例施行後、市内15の駅で「なごやか立ち止まり隊」が定期的に活動している。「STOPしてね」と書かれた手のひら形の看板を背負い、空ける人が多い右側に立ち止まり「2列乗り」の流れをつくる市の啓発スタッフだ・・・

メンタル不調と経済的困難の悪循環

2024年9月15日   岡本全勝

8月30日の日経新聞オピニオン欄に、渡辺安虎・東京大学教授の「メンタル不調と経済的困難の悪循環」が載っていました。

・・・厚生労働省によると、精神疾患を有する総患者数は2020年で600万人を超える。単純計算では国民の20人に1人が、何らかのメンタルの不調を抱えて受診していることになる。診断を受けていない人も多いと考えられるため、実際に症状のある人はさらに多いだろう。
メンタルヘルスの悪化は大きな社会的な問題だと長らくいわれてきた。経済的な影響についても様々な試算がされている。日本でも、患者数に就業率の低下などの仮定をあてはめた簡便な計算結果に、医療費などの直接的な費用を加えた試算が複数存在する。

しかし、メンタルヘルスの悪化が経済主体としての個人の認知や行動、そして経済状況に与える影響はどのようなものだろうか。そもそも、メンタルヘルスの不調が個人に与える経済的な影響や治療の経済的効果は、どの程度わかっているのだろう。
米エール大学とニューヨーク大学の研究者らは、デンマーク政府の250万人分の行政データを用いて、精神疾患が長期のキャリアに及ぼす影響を分析している。労働と医療という異なる分野の行政データを、個人レベルで接続することができるからこそ可能となる研究だ。
この研究では、うつ病や、そう状態とうつ状態を繰り返す双極性障害の受診者は、10年後の所得を約10〜20%低下させていた。そして、この所得低下は20代の早期治療によって大幅に抑えられていた。一方、その改善の程度は個人の社会経済状態から大きな影響を受けていた。親の資産が上位25%の患者と、下位25%の患者を比較すると、後者の改善の程度は、前者の約3倍にもなった。経済的に困難な状況に置かれた人への治療が、経済的に大きな効果を持つことを示す結果だ・・・

・・・早期発見・治療の医学的な重要性は従来からいわれてきた。経済的な要因は発症に関わることに加えて、早期発見・治療は経済的にも大きな効果を生む。経済的な困難と早期の発見・治療をより結び付けた対策で状況が改善することを願いたい・・・