カテゴリーアーカイブ:社会の見方

日中韓の間の摩擦

2012年9月30日   岡本全勝

朝日新聞、9月28日オピニオン欄、橋本治さんの「『みんな』の時代」から。
・・「国民」という括りが、日本人の中から遠くなっているように思う。竹島や尖閣諸島の問題で、韓国や中国は「国民的な怒り」を爆発させているが、今の日本にそういうものはない。韓国や中国のやり方に対して怒る人はもちろんいるだろうけれど、多くの人は彼の国の反日行動を見て、「あの人たちは、なんであんなに怒っているんだろう?」と、そのメンタリティを不思議に思うのではないだろうか。どうしてかと言えば、そのような行動をとる習慣も、そのようなことをしてしまうメンタリティも、日本人はいつの間にかなくしているからだ・・
「平和ぼけ」と言われてしまえば確かにそうだが、それを言う前に考えるべきことがある。それは、いつの間にか日本人が「自分たちは日本国の国民だ」という考えをしなくなっていることである。日本人が日本人であることを意識するのは、外国に行って帰って来てラーメンを食った瞬間くらいのものになっているのかもしれない。日本人の多くは、「日本国民の一人」と思うよりも、「自分はみんなの中の一人だ」と思いたいのだろう・・

同じく28日の朝日新聞、村上春樹さんの「魂の行き来する道筋」から。
・・尖閣諸島を巡る紛争が過熱化する中、中国の多くの書店から日本人の著者の書籍が姿を消したという報道に接して、一人の日本人著者としてもちろん少なからぬショックを感じている・・
この20年ばかりの、東アジア地域における最も喜ばしい達成のひとつは、そこに固有の「文化圏」が形成されてきたことだ。そのような状況がもたらされた大きな原因として、中国や韓国や台湾のめざましい経済的発展があげられるだろう。各国の経済システムがより強く確立されることにより、文化の等価的交換が可能になり、多くの文化的成果(知的財産)が国境を越えて行き来するようになった。共通のルールが定められ、かつてこの地域で猛威をふるった海賊版も徐々に姿を消し(あるいは数を大幅に減じ)、アドバンス(前渡し金)や印税も多くの場合、正当に支払われるようになった。
僕自身の経験に基づいて言わせていただければ、「ここに来るまでの道のりは長かったなあ」ということになる。以前の状況はそれほど劣悪だった。どれくらいひどかったか、ここでは具体的事実には触れないが(これ以上問題を紛糾させたくないから)、最近では環境は著しく改善され、この「東アジア文化圏」は豊かな、安定したマーケットとして着実に成熟を遂げつつある。まだいくつかの個別の問題は残されているものの、そのマーケット内では今では、音楽や文学や映画やテレビ番組が、基本的には自由に等価に交換され、多くの数の人々の手に取られ、楽しまれている。これはまことに素晴らしい成果というべきだ。
たとえば韓国のテレビドラマがヒットしたことで、日本人は韓国の文化に対して以前よりずっと親しみを抱くようになったし、韓国語を学習する人の数も急激に増えた。それと交換的にというか、たとえば僕がアメリカの大学にいるときには、多くの韓国人・中国人留学生がオフィスを訪れてくれたものだ。彼らは驚くほど熱心に僕の本を読んでくれて、我々の間には多くの語り合うべきことがあった。
このような好ましい状況を出現させるために、長い歳月にわたり多くの人々が心血を注いできた。僕も一人の当事者として、微力ではあるがそれなりに努力を続けてきたし、このような安定した交流が持続すれば、我々と東アジア近隣諸国との間に存在するいくつかの懸案も、時間はかかるかもしれないが、徐々に解決に向かって行くに違いないと期待を抱いていた・・
一部だけを紹介しているので、原文をお読みください。

アジアの知的貢献

2012年9月27日   岡本全勝

9月24日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、羽場久美子・青山学院大学教授の「アジアの連携、国家超え『知』結集の場を」から。
・・世界の課題はいまや、20世紀には考えられないほどの広がりと緊急性を持っている。テロ、防災、温暖化、原発事故、国境管理、金融の変動、移民、エイズなど、20世紀の国民国家の枠組みでは対応しきれないものばかりだ。
私はこの10年間、国家を超えたアジア地域統合の問題を、欧州の地域統合と比較しながら研究してきた。痛感するのは、アジア地域の「知の結集度」の低さだ。
近代の技術・情報・知の発展は、圧倒的に欧米の成果に依拠する。それを支えてきたのが欧米の強大なシンクタンクやトップクラスの大学・大学院であった。ハーバード大、欧州政策研究所、欧州大学院研究所などの研究機関は知的成果を上げるだけでなく、世界の政治や経済・科学技術の若手リーダーを養成する場としても機能している。
これに対し、アジアは教育水準が高いにもかかわらず、国家を超えた世界レベルの問題を共同で検討するシンクタンクや知的作業の場を欠いている。欧米と連携を保つ各国共同の研究・教育機関・ネットワークをアジアに設立することは、この地域の将来にとって緊急の課題である・・
アジアの人口、経済規模、経済発展を考えたら、至極もっともな発想です。いつまでも、欧米に留学し先端知識を持ち帰るだけでは、発展はないのでしょう。羽場先生は、緊張が続くアジア各国間の協力も、述べておられます。原文をお読みください。

フランスの売り上げを支える日本人

2012年9月22日   岡本全勝

9月22日の朝日新聞経済欄に、フランスの高級食材店フォションの最高経営責任者のインタビューが載っていました。
日本では高島屋百貨店などで売っています。日本での売り上げは年間約99億円、世界での売り上げの56%だそうです。
へ~。半分以上が日本とは。ルイヴィトンの売り上げの多くが、日本人だと聞いたことがあります。
日本人って、フランスが好きなんですよね。かくいう私も、若い頃にパリで、フォションの紅茶を買ってきました。あの金色の缶です。
かつて三越や高島屋では、イギリスフェアやフランスフェアが定番でした。次にイタリアフェアになりました。日本人のあこがれでしたが、日本も豊かになり、海外旅行も珍しくなくなって、最近はかつてほどの輝きがないです。
それでも、日本人が買っているのですね。次は、中国人が買うのでしょう。
日本が考えなければならないこと。それは、日本のおいしい食品や産物を、成長著しいアジア諸国に売り込むことです。日本の果物は、結構高い評価を得ています。日本ブランドで、もっと売りましょう。そして、国内より国外での売り上げが多いというように、なりませんかね。

成功の負の遺産

2012年9月19日   岡本全勝

9月15日の読売新聞解説欄、東京大学学長室顧問のステファン・ノレーンさん(元駐日スウェーデン大使)のインタビュー「秋入学、東大改革の好機」から。
「大学の国際化は、不可欠な時代になったのか」という問に対して。
・・日本の大学も企業も、グローバル化が進む世界で、競争にさらされている。国際的な感覚や語学力などを身につけて行かないと、日本は負けてしまうと思う・・

「学生に限らず、日本の政治や社会も内向きになっていると言われる」という問に対しては。
・・日本はある意味で、自信の成功の犠牲者と言える・・
「成功体験にとらわれているという意味か」
・・その通りだ。日本は戦後、自力で国を再建し、経済成長した。だが、同じ方法はもう通用しない。経済は一段と国際化している。企業はその流れに乗っていくしかない・・
「変わるしかないと」
・・米国のケネディ元大統領の言葉を引きたい。彼は「変化は人生の法則だ(チェンジ・イズ・ザ・ロー・オブ・ライフ)。過去や現在しか見ない人たちは、必ず未来を失う」と言った。私は社会の変革の必要性を話すとき、いつもこの言葉に立ち返る。日本は1950年代から90年代にかけ、偉大な成功を手にした。しかし、私たちはもう50年前の世界には戻れないのだ・・

武装警備員の是非

2012年9月17日   岡本全勝

9月17日の日経新聞の法務欄が、海運業界が海賊対策として、民間の武装警備員が乗船できるように法制の整備を求めていることを、解説していました。
ソマリア沖での、海賊による商船襲撃は続いています。世界での海賊発生件数は昨年は439件、うちソマリア沖が237件です。日本の船も被害に遭っています。海上自衛隊が、護衛活動に派遣されています。このホームページでも、何回か紹介しました。
しかし、自衛隊による護衛には限界があり、船主協会は、自衛官の乗船か、無理なときは武装警備員の乗船を求めています。アメリカやイギリスは、武装警備員の乗船を認めているとのことです。日本船籍の船は、日本国に管轄権があります。一方、日本の銃刀法では、武器の所持を制限していて、武装警備員は認められていません。
先日、紛争地域での、外国の民間軍事会社を紹介しました(8月16日の記事)。あれは外国のことだと思っていましたが、そうでもなさそうです。