カテゴリーアーカイブ:社会の見方

復興庁批判、具体的な指摘と抽象的な批判

2012年9月14日   岡本全勝

9月14日の復興推進委員会の中間報告は、具体的に良い点と悪い点を、指摘していただいています
それに引き替え、記者の中には「復興庁ができたのに、復興が進んでいないとの声があるが、どうか」という質問・批判をする人もいます。私は、「また、ワンパターンの批判か」と思いつつ、「それは誰が、どのような事案で言っていますか。それを教えていただいたら、私たちも改めます」と切り返します。多くの場合、「いえ、みんなが言っています」という答えです。これでは、議論は進みませんわ。
先日紹介した読売新聞のアンケート(9月11日の記事)では、8割の市町村長が復興庁を評価してくださっています。ワンパターンの質問をする記者には、「読売新聞で『復興庁を評価する』と答えた首長に、『なぜ、良い評価するのですか』と質問してください』と言いたくなります。「すべてを肯定的に評価してくれ」とは言いません。「どこがどのように悪いか」を指摘してほしいのです。
若い記者が、先輩の受け売りの「ワンパターン政府批判記者」になっては、良い記者になれませんよ。もっと、勉強しましょう。

外交の民間委託

2012年8月24日   岡本全勝

これまた、買って読もうと思っていた本をようやく読んだので、その紹介です。高木徹著『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』(2005年、講談社文庫)です。
1992年、ユーゴスラビア連邦から独立を宣言したボスニア・ヘルツェゴビナは、ユーゴスラビアとその主体であるセルビア(人)との間で、内戦状態に入ります。ボスニアの外務大臣(外交は素人の大学教授)を支えて、アメリカや国際社会の同情を集め、「ユーゴスラビア=悪、ボスニア=被害者」というレッテルを貼ることに成功した広告代理店の話です。ついには、ユーゴスラビアを国連から追放することにも、成功します。
どうやら実態は、そんな簡単なものではなく、「セルビアもボスニアもどっちもどっち」だったようですが。この広告会社の活躍で、欧米の主要マスコミにセルビアが一方的に悪いという認識を植え、国際世論を誘導することに成功します。キーワードとして「民族浄化」「強制収容所」といった言葉をはやらせ、写真をつけて一人歩きさせるのです。
まあ、読んでみてください。おもしろいです。もちろん素材は「おもしろい」という言葉では不適切な、多くの人が死んでいる内戦です。
外交および国家の国際宣伝を、民間会社に外注したという観点からも、読むことができます。また、マスコミを動かすテクニックを学ぶことができます。嘘をついたり嘘の演出をする広告会社もあるようですが、この会社はそのようなことをせず、ぎりぎりの「危険な用語」を使い効果的な演出を行います。このほんの副題では「情報操作」となっています。勉強になります。もちろん、いつもこんなにうまくいくとは思えませんが。
会社や役所の広報担当は、日頃の記者との付き合いを先輩たちから教えられます。最近は、事故を起こした際の「危機管理」を勉強しています。しかし、そのような「起こった際の対応」「ダメージを抑える広報戦略」という「後ろ向きの広報」ではなく、ある方向に誘導する「積極的な広報戦略」「前向きの広報」です。広報担当者には必読の文献だと、思うのですが。

政治を支える制度と文化

2012年8月22日   岡本全勝

読売新聞8月19日「地球を読む」は、フランシス・フクヤマ氏の「長引く欧州危機」でした。そこで、最近よく言われる「二つの欧州」についての指摘があります。通常は、EUを拡大した際に、プロテスタントが多く、勤勉で規律ある北部諸国と、怠惰で浪費癖があるカトリック・ギリシャ正教諸国が、対比されます。
しかし、フクヤマ氏は、次のような主張をします。これら二つの欧州の違いは、「政治的恩顧主義」がはびこる欧州と、そうでない欧州との違いである。イタリア、ギリシャなどは、政党が血縁、地縁関係を利用して支持者を集め、政府の役職を支持者に分配することで、権力を争った。官僚機構が、選挙で選ばれた政治家に利用されてきた。他方、ドイツやイギリス、オランダは、そのような恩顧主義的な政党に支配されたことがない。
通貨同盟を創設したマーストリヒト条約には、それに対応する財政同盟を欠いていた。だが、それ以上に問題なのは、欧州人としての共通意識を醸成できなかったことである。EUの諸制度は、高度な専門知識を持つ官僚によって作られた。だた、汎欧州的な愛国心をどう生み出すかについては、誰も腐心しなかった・・
詳しくは、原文をお読みください。私が学生の頃、文化人類学や比較文化政治学という学問が、盛んだったことを思い出します。政治を支えるものには、制度だけでなく「文化」や「意識」「歴史と伝統」がありますね。
それでも、その差を乗り越えようと挑戦する欧州は、立派だと思います。

祝賀パレード

2012年8月20日   岡本全勝

今日20日、東京銀座で、ロンドンオリンピック日本代表メダリストのパレードが行われました。「行かなければ」と思っていたのですが、忘れていたのと、仕事が忙しくて・・。土曜か日曜にやってくれれば良いのに。たぶん、いろいろな事情があったのでしょう。
新聞によると、50万人が詰めかけたそうです。新聞記事の写真をご覧ください。球場ではなく、あの広くない道路に50万人ですよ!球場でも、せいぜい5万人ですから。暑かったでしょうね。
(これだけの人数になると、輸送、誘導のほか、トイレ、急病人の手当、迷子のお知らせなど、裏方は大変な準備が必要になります。ちなみに、首都直下型地震の際の、想定される東京駅の帰宅難民が47万人です。)
オリンピック・メダリストのパレードは、今回が初めてだそうです(これもびっくり)。このようなイベントは、もっとやっても良いですよね。野球やサッカーなど、地元球団が優勝したら、みんなでお祝いしましょう、御堂筋でも、県庁前通りでも。
「政治は劇場だ」という説もあります。狭い劇場もありますが、広い劇場は盛り上がりますよね。

民間軍事会社

2012年8月16日   岡本全勝

気になって買ってあった、菅原出著『民間軍事会社の内幕』(2010年、ちくま文庫)を読みました。イラク戦争で、アメリカが民間の警備会社を雇っていたことは有名です。軍隊並みに武装し、警備や輸送などに従事しています。その実態から、「民間軍事会社」と呼ばれています。
その中には、軍隊並みの仕事をする会社、軍隊の補給や基地の炊事洗濯を請け負う会社、人質救出の交渉をする会社、危険地帯に行く人(取材記者)を実地訓練する会社など様々です。
戦闘地域やその周辺で活動するので、とても危険です。日本人社員(兵士)が、巻き込まれて死亡したこともありました。
アメリカ軍の経費や職員削減を受けて、「事業」を外注に出すことが広がったとのことです。確かに、基地の炊事や洗濯を外注に出すことは違和感がありませんが、武装して政府要人を警護することになると、ここまで外注ができるのかと、感心します。捕虜収容所で捕虜の通訳をすることも理解できますが、尋問をすることまで請け負うとなると・・。まあ、中世ヨーロッパでは、軍隊自体が傭兵で外注していたのですから、できないことはないですが。
一方、受託する会社は、軍のOBそれも特殊部隊の経験のある元兵士を雇っています。軍人の給料は安く、軍事会社の報酬は高いです。ここに、兵士=従業員の需給が成立します。
記者が取材地で反政府勢力にとらえられた場合を想定した訓練(もちろん有料)を、受けた経験が載っています。平和な日本にいると理解しがたいですが、危険地帯に行く記者や外交官などは、必須の教科でしょう。