カテゴリーアーカイブ:社会の見方

中国という実験

2019年9月17日   岡本全勝

9月9日の日経新聞夕刊が、「中国、なぜ「異形の大国」? 民主化なき成長、にじむ覇権主義」を解説していました。
1949年の建国から70年。1978年に改革開放政策で市場経済に転換してから40年。2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから約20年です。

・・・中国の名目国内総生産(GDP)が日本を抜いたのは2010年。今は日本の3倍近い規模です。建国当初と比べると、経済規模は膨大になりました。国民の可処分所得は建国時の567倍に。1億元(約15億円)以上の資産を持つ世帯がおよそ11万に上るという調査もあります。
経済は巨大ですが、発展途上国です。先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)の分類では、先進国の一歩手前の「上位中所得国」で、政府開発援助(ODA)を受け取れます。14億人の人口で割ると1人あたりの経済規模は1万ドル弱と、日本の4分の1程度だからです・・・
・・・一党独裁体制なので、民主主義の先進国からみると違和感を覚える点があります。共産党政権は工業と農業、科学技術、国防の「4つの近代化」を目指し、大きな成果をあげてきました。一方、70年代末に民主活動家の魏京生氏が「第5の近代化」として訴えた民主化は、40年あまりたっても実現していません。
ダライ・ラマ亡命につながった59年のチベット動乱や60~70年代の文化大革命、89年の天安門事件、99年の法輪功弾圧、2009年にウイグル人デモ隊と当局が衝突したウルムチ騒乱と、たびたび国民を武力で抑えつけています。
最近はIT(情報技術)の進歩で個人情報が詳細に把握されやすくなりました。キャッシュレス決済のデータで生活や行動がつかめます。監視カメラの顔認識などの性能も上がっています。
豊かになった半面、格差は大きいのが実情です。都市住民と農村住民は戸籍が違い、出稼ぎにきた農民は社会保障や子供の教育も十分に受けられません。農村出身者を強引に立ち退かせて都市開発するなど、社会の不平等が効率的な発展につながっている皮肉な側面もあります・・・

経済が大きく発展したことは、すばらしいことです。他方で、民主化が進んでいません。国家(共産党)による締め付けは、ITの発達でより強くなっています。WTOに加盟を許せば、民主化が進むと当時の先進国の指導者たちは考えました。今のところ、それは失敗しているようです。
共産党幹部にとって、第一の目標はその体制の維持であり、国民が豊かになるのはその手段だという見方もできます。この後、いつまでこのような状態が続くか。歴史の壮大な実験です。20世紀の大実験だったソ連は、70年で崩壊しました。

「ちょっとウンチク 政治が描き変える建国の瞬間」も若い人には、勉強になるでしょう。民主主義国家ではあり得ないような話です。
・・・1949年10月1日、北京の天安門の上で毛沢東は中華人民共和国の成立を宣言した。この歴史的瞬間を描いた董希文の「開国大典」は、数奇な運命をたどった油絵だ。
当局の依頼で董が絵を描き上げたのは50年代前半。その後、50年代半ば、60年代、70年代と、3回も描き直しを求められた。3度目は董が病気で弟子が作製。董の没後、4回目の「修正」が必要とされ、新たな複製が作られた。
度重なる「修正」の原因は政治変動だ。失脚した要人やときの権力者に恨まれた故人が画面から消えた。歴史に対する共産党政権の姿勢がわかる「名画」といえる・・・

鎌田浩毅先生『やり直し高校地学』

2019年9月16日   岡本全勝

鎌田浩毅先生の新著を紹介します。『やり直し高校地学ー地球と宇宙をまるごと理解する』(2019年、ちくま新書)です。ちくま新書には、「やり直し高校××」というシリーズがあるようです。内容は、表題でわかりますよね。

私は高校では理科4科目、物理、化学、生物、地学を履修しましたが、受験科目は物理と化学を選びました。この2つが、理論的だと思ったのです。すみません、当時は、生物は植物の分類、地学は地層と岩石の学問と思っていました。しんきくさいなあ・・・と。
ところがその後、生物は遺伝子の解析や分子生物学が発達して、面白い学問になりました。地学も、プレートテクトニクスや古生物学など、面白い学問になりました。この半世紀で、ガラッと変わりましたね。
最先端の研究が画期的に進んだのとともに、それを一般人に伝える書物が増えたからでしょう。無味乾燥な分類学や岩石学から、わくわくする科学に変わったのです。

鎌田先生は、科学の伝道師を名乗っておられます。最先端の難しい科学を、素人にわかるように伝えてくださっています。新著も早速に重版になったようです。よく売れているということですね。
素人には分厚い学術書や教科書より、新書版がうれしいです。でも、難しいことを短く書くというのは、難しいのですよ。

丸ノ内線の新しい決まり

2019年9月16日   岡本全勝

最近、地下鉄丸ノ内線には、新しい規則ができたようです。
それは、「乗ったら、直ちにスマホを操作すること」です。

今度乗ったら、見渡してください。これだけみんなが同じことをするのは、見ていて異様です。知らない人が見たら、きっと「規則なんだろう」と考えるでしょうね。
附則には「ホームで電車を待つ間も、極力、スマホを操作すること」という決まりもあるようです。(苦笑)

あなたの乗っている電車は、どうですか。この項続く

時代に合わなくなった日本型雇用

2019年9月14日   岡本全勝

9月11日の日経新聞経済教室、八代尚宏・昭和女子大学特命教授の「70歳雇用時代の正社員改革(上) 定年制・年功賃金、矛盾広げる
・・・今後の人生100年時代に対応するためには、年齢に大きく依存した日本の働き方の改革が不可避だ。20歳前後での新卒一括採用、年齢や勤続年数による昇進や賃金、および60歳代での定年退職など、年齢で区切られた現行のライフサイクルの矛盾が拡大している・・・

・・・非正社員の賃金格差の主因は、中高年で特に大きな正社員の年功賃金にある。大企業と中小企業の社員の格差についても同様だ。大企業では、未熟練の若年労働者を新卒一括採用し、企業内で長期にわたり熟練を形成する方式が採られてきた。そのために年功賃金や退職金など、労働者が中途で辞めると不利になる賃金慣行が必要となった。
この大企業の働き方には若年失業の抑制、熟練労働者の形成、円滑な労使関係などのメリットがあった。しかし新卒で大企業の正社員に採用された者とそうでない者の格差は生涯持続する。改正法はその格差の期間を政府の権力でさらに5年間延長させるものだ。
1990年代以降の長期経済停滞の下で、正社員に対する生涯を通じた訓練投資はもはや過大となった。情報化技術や人工知能(AI)の発展の下では、特定の企業内で蓄積された熟練が急速に陳腐化するリスクも小さくなく、むしろ雇用の流動性がより必要だ。現に大企業の男性の年功賃金は00年時と比べて40歳代前後で顕著に低下しており、市場の調整圧力が働いていることが分かる(図参照)・・・

同日の読売新聞、鶴光太郎・慶応大大学院商学研究科教授の「「日本型雇用」変えるとき…
・・・人口減少や女性の活躍、ワーク・ライフ・バランス推進など企業を取り巻く環境が大きく変化しています。日本型の雇用システムは適応するための変革が求められています。
日本の雇用システムの特徴は〈1〉終身雇用〈2〉年功型の賃金体系〈3〉遅い昇進――にあるとされます。会社に従業員を定着させ、時間をかけて育てるための仕組みだと言えます。欧米からの新技術導入など産業の大規模化に伴い、労働者を確保するため1920年代以降、大企業を中心に定着したのです。
中でも年功型賃金は他国との違いが際立ちます。日本では40歳代を過ぎても給料が上がり続けるが、欧米では30歳代後半でストップする。年齢とともに生産性が上がり続けるわけではないからです。
社員が様々な部署を経験しながら長く働くため、社内のコミュニケーションは密になる。微調整を重ねて高品質な商品を作り上げる「すり合わせ」の技術で日本の製造業が強みを持つことを後押ししました。

しかし、バブル経済が崩壊して低成長時代に入ると、ひずみが生じました。労使は中高年の雇用維持を優先したため、しわ寄せされる形で就職氷河期世代や大量の非正規社員が生まれたのです。
こうした日本型雇用のより根源的な問題として、近年指摘されているのが「無限定正社員」という特徴です。仕事の内容や勤務地、労働時間が限定されていない就労形態を指します。
辞令ひとつでどこへでも転勤しなければならず、残業を伴う仕事を命令されても断りにくい。働き過ぎを助長しかねず、ワーク・ライフ・バランスや女性の活躍を阻害してきました。
欧米では職務の内容などがあらかじめ決まっている「ジョブ型」が主流で、日本のような働き方は非常に少ない。産業構造が変わる中、これまで形成されてきた仕組みが最適との認識を捨て、「無限定」のシステムから転換する必要があります・・・

香港市民抗議運動、リーダー不在で100万人

2019年9月13日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞オピニオン欄、周保松・香港中文大学副教授へのインタビュー「香港、自由への闘い」から。

・・・今回の運動はリーダーが見当たりません。
「私自身、不思議に思います。雨傘運動は数人のリーダーがいました。今回はネットでつながり、意見交換をしているだけ。催涙ガスを防ぐマスクをして集まり、互いに誰か知らないまま、一緒にいる。誰が主催しているのかも知らない。でも互いに信頼している。何か運動が提起されると、1週間後に十数万人が参加する。創意工夫を凝らして長期、大規模に闘っています。世界史においてまれな運動ではないでしょうか」
「中国共産党・政府には理解しがたい状況でしょう。交渉したり標的にしたりする相手がいないのですから。中国政府は香港の民主派政治家らを非難しますが、運動とは無関係です。米国をはじめ外国勢力が裏で関わっているとも非難していますが、これもおかしな話。外国勢力が香港市民を100万人も動員できますか?」・・・