カテゴリーアーカイブ:社会の見方

平等社会の負の機能3

2023年5月14日   岡本全勝

平等社会の負の機能2」の続きです。戦後の平等社会思想が生んだ負の機能に、エリートをつくらないことがあります。

平等はよいことです。しかし、組織を動かすときには、全体を考える幹部と、与えられた役割を実行する構成員とで、役割分担することが機能的です。そのような関係をつくらず、全員が同等という組織もあります。同好会や議会です。ホラクラシーと呼びます。「階統制組織と平等的組織

日本人の勤勉さに変わりがないのに、バブル経済崩壊後に日本の経済が停滞したのは、企業幹部、政府幹部、官僚に責任があるのでしょう。社員は、上司に言われたことを実行しているのです。彼らが突然、働かなくなったわけではありません。社員が従前通りに働いていて会社の業績が悪くなった場合は、経営陣に問題があります。

「平等思想」では、管理職と社員の仕事と責任のあいまいさを生みました。なるべく、全員が納得して仕事を進める形がよいとされました。しかし、その組織の進むべき方向を決めたり、新しい仕事の目標と期限を決めたりする場合には、管理職が責任を持って、時には部下全員の同意を得ることなく、決める必要があるのです。ところが、平等思想で育ってきたサラリーマン幹部は、それができませんでした。
平等思想は組織がうまくいっている、売り上げも利益も伸びている条件の下では機能しますが、うまくいっていない場合には機能しません。内向きの論理でしかないのです。「組織構成員の分類その3。階級の区別

管理職教育を受けていない従業員が、選抜されて管理職になります。しかし、よき従業員の能力と、管理職に求められる能力とは異なります。それを、自らの体験で身に付けよというのが、これまでの日本の職場でした。ここに書いた業績低下の問題以外にも、管理職教育を受けていない管理職が部下の指導に困る場合が増えています。従来型の管理職選抜の仕組みに限界が出てきています。

祝日大国ニッポン

2023年5月13日   岡本全勝

4月28日の日経新聞夕刊に「「祝日大国ニッポン」どこへ向かう 年16日はG7最多」が載っていました。

それによると祝日の数は、日本が16日に対して、アメリカ・カナダ・イタリアが12日、フランスが11日、イギリスが10日、ドイツが9日です。他方で有休の取得率はドイツが93%、イギリス・フランス・アメリカが8割台、イタリアが77%で、日本は60%です。

日本人が働き蜂だという説は、職場への愛着度が世界でも飛び抜けて低いことから否定されています。休日の数と有休取得率に見ることができるのは、「みんなで一緒になら休む、休みたい。一人で休むのは(周囲の目があるから)嫌だ」ということでしょうか。

町、「ちょう」か「まち」か

2023年5月12日   岡本全勝

4月28日の朝日新聞夕刊が「「ちょう」or「まち」、あなたの町は 西日本は「ちょう」優勢、境目は長野・山梨」を解説していました。

・・・地方自治体の「町」の読み方は「ちょう」「まち」どちらなのか。転勤や進学で引っ越しが多いこの時期、戸惑うかもしれない。総務省が公表している読み方を元に調べると、中部地方を境に東西で二分される傾向が見えてきた。地域の歴史や文化が影響しているようだ。

NTT東日本と西日本の営業エリアは、東日本は新潟、長野、山梨、神奈川を含む都道県、それ以外は西日本だ。この分けかたに基づくと、東日本は北海道を除けば「まち」の傾向が強く、西日本は「ちょう」が優勢を占めていた。
北海道を除く東日本は265町のうち、「まち」は222の多数派だ。西日本では349のうち「ちょう」は295あり、圧勝だ。北海道は例外的に、森町(もりまち)以外の128町全てが「ちょう」だった。
両方の読み方が共存する長野と山梨の両県が、読み方の境目になっている。全国では「ちょう」が466町、「まち」は277町で、「ちょう」が優勢だ。

なぜ、読み方が東西で分かれているのか。地名の研究をしている日本地図センターの客員研究員・今尾恵介さんは「推測の域を出ない」と前置きした上で、二つの説を挙げる。
一つ目は、現在の市町村制が施行された1889(明治22)年以降、江戸時代に使われた「まち」と区別をするために、「ちょう」と読む自治体が出てきた可能性だ。その後、何らかの理由で、西日本側で「ちょう」が広がった。東日本は、江戸幕府の直轄領が多かった名残で「まち」を維持する自治体が多かった可能性が考えられる。
二つ目は、各都道府県庁が、「まち」か「ちょう」に統一するように、各自治体と調整した可能性だ。その際、近隣の都道府県での読み方に合わせようとしたという説だ。

現存する「町」の多くは、1950年代の「昭和の大合併」と、2000年代初めにピークを迎えた「平成の大合併」によって生まれた。今尾さんは「新しい町をつくるということで、従来の自治体呼称の『まち』と区別したかったのではないか」と話す・・・

平等社会の負の機能2

2023年5月9日   岡本全勝

平等社会の負の機能」の続きです。平等社会という思想が、経済停滞とともに負の機能を発揮している二つ目です。それは「縛られる日本人2」に書いた長時間労働です。

家庭を顧みず、私生活を犠牲にして働くことを、一般の労働者に求めることの「ひどさ」です。私は、エリートが時に長時間労働を求められる場合や、私生活より仕事を優先しなければならない場合はあると思います。それが、エリートの務めです。企業にあっては経営者や幹部、役所にあっては幹部とその候補生・・・。他方で、一般の労働者は、勤務時間内に言われたことを処理すればよいのです。

なぜ日本で、長時間労働や会社など組織への忠誠が求められたか。そこには、「平等社会」の負の機能が働いていると思います。
「上司も部下も分け隔てなく」「上司も部下も一丸となって」といった表現は、うまく機能しているときはよいのですが、そうでないときは逆の機能を発揮するのです。勤務時間が決まっている労働者、給料分だけ働いている労働者に、幹部やエリートと同様の労働と忠誠を求めたのです。
幹部と一般職員とに、はっきりした区分があれば、こんなことは起こらなかったでしょう。

相続土地国庫帰属制度

2023年5月9日   岡本全勝

4月27日から、相続土地国庫帰属制度が始まりました。4月28日の日経新聞「所有者不明の土地抑止 相続時、国への譲渡制度開始 国土の2割が登記未了」が解説していました。

・・・相続で譲り受けた田畑や森林などの土地を国に引き渡せる制度が27日、始まった。管理困難といった理由で手放したい場合、所有権に争いがないなどの10要件を満たせば国の管理下に移せる。法務省などに寄せられた相談は既に3000件超。管理が行き届かず「所有者不明土地」になることを防ぐ効果が期待される・・・

所有者不明土地は、2016年時点で410万ヘクタール、全体の24%にも上るそうです。2040年には720万ヘクタールに増えるとの推計もあります。
かつて土地は、最も重要な財産でした。生産の基盤である田畑や山林を巡って、争いが起きたのです。その財産が、一部の地域では負動産になってしまいました。