組織構成員の分類その3。階級の区別

組織構成員の分類その2。能力差」の続きです。その1で、次のように説明しました。
B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

諸外国の職場や、戦前の軍隊など、この階級差ははっきりしていて、給与や処遇だけでなく、食堂や便所まで違う場合もあります。
この区分をあまり際立たせない、なるべく平等にするのが、日本型職場でした。会社の中に「身分」や「階級」をつくらない。これが戦後日本の民主主義や平等意識の反映であったと、小熊英二著『日本社会のしくみ』(2019年、講談社現代新書)は指摘しています。

それが、かつては職場の生産性を上げ、近年では生産性の低さを生んでいると、私は考えています。
多くの組織において、目標を効率的に達成するには、管理職・中間管理職・職員という階級区分が必要です。それは、軍隊でも会社でも役所でも同じです。管理職は、その組織が何をすべきかを考え、それを中間管理職に指示します。中間管理職は、管理職の指示に従い、業務を達成するために、職員に指示し職員の仕事ぶりを管理します。職員は、中間管理職に指示されたことを実行します。
日本の職場でも、管理職、中間管理職、職員(社員)の区分はあります。しかし、その区分による職務の違いが、明確でないのです。
上司も部下も、みんなが一体となって一つの仕事に取り組む。それは、組織への一体感をつくり、全員で仕事をやり遂げるという長所を持っています。職場でのカイゼン運動は、その一つの表れです。
ところが、それが管理職と社員の仕事と責任のあいまいさを生みました。なるべく、上司による命令や指示という形を取らず、部下から意見をあげていく、全員が納得して仕事を進める形がよいとされました。稟議制もその現れです。しかし、その組織の進むべき方向を決めたり、新しい仕事の目標と期限を決めたりする場合には、管理職が責任を持って、時には部下全員の同意を得ることなく、決める必要があるのです。

管理職が、管理職の仕事をすること。部下の合意取り付けに労力をつぎ込むのでなく、責任を持って指示を出すことが必要なのです。管理職が責任を果たしていないことが、日本の職場の生産性の低さの原因の一つです。
この文章は、「管理職、中間管理職、職員の区分」で書いたことの要約・再掲です。参考「フランスの経済エリート
この項続く