カテゴリーアーカイブ:社会の見方

経済成長の軌跡2024

2024年3月12日   岡本全勝

経済成長の軌跡2」(2021年)を更新しました。

 

 

 

 

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。
次の4期に分けてあります。「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第1期は18年、第2期も18年、第3期は21年です。
第4期の始点を2012(平成24)年にしたのは、アベノミクスを復活の起点と考えたからです。しかし、その後の経済成長ははかばかしくなく、第3期が続いている(失われた30年)とも見ることができます。すると、4期ではなく、成長の前期(1955~1991年、36年間)と、停滞の後期(1991~現在、ひとまず33年)と見ることもできます。

第4期に税収が伸びているのは、消費税増税と思われます。その他の解説は、「経済成長の軌跡2」(2021年)をお読みください。「経済成長外国比較2024」へ続く。

教員の精神疾患対策

2024年3月12日   岡本全勝

2月20日の朝日新聞教育欄に「先生のための「心の保健室」を 休職6000人超 メンタルヘルス対策、刀禰真之介さんに聞く」が載っていました。詳しくは記事を読んでいただくとして。

・・・文科省の調査では、「精神疾患で病気休職をしたり1カ月以上病気休暇を取ったりした教員」の割合は20年度に全体の1・03%だったが、22年度には1・33%に増えた。一方、厚生労働省の調査によると「1年間にメンタルヘルス不調で連続1カ月以上休職した労働者又は退職した労働者」の割合は、1千人以上の事業所では20年の0・8%から22年には1・2%になった。
いずれも割合が増えたのはコロナ禍の影響だろう。職場に行けなかったりマスクでコミュニケーションがとりにくかったりという環境の変化が主要因と考えている。教員の場合、一般の労働者より精神疾患の割合が高いのは、心の健康への取り組みの水準が極めて低いからだとみている・・・

・・・一般企業は労働安全衛生を守る意識が浸透しつつあるが、学校はその意識が乏しい。新たに休職する人や復帰後再び休職する人を減らす仕組みが不十分にみえる。例えば文科省の有識者会議がまとめた「教職員のメンタルヘルス対策について」によると、校長は休職中の教員に定期的に連絡をとり状況を把握し、復帰の時期を検討する。校長が中心の「一本足打法」といえる。この方法では校長の負担が増え、教員側は管理職の面談をたびたび受けなければならずプレッシャーになる・・・

・・・ キーワードは「信頼」。教員と産業保健職との信頼関係をつくることだ。メンタルヘルスの研修は産業医や産業保健師が行う▽心身の状態が悪くなったとき、同じ医師や保健師に話を聞いてもらえるようにする▽休職中に状態を話す面談もその保健師が担うという仕組みを考えている。「教職員のための保健室」が機能するようにしたい。
少子化が進めば、必要となる教員が少なくなり、採用倍率が高くなる――。そんな考え方は甘いと言わざるを得ない。人手不足で労働力の獲得に各業種がしのぎをけずる時代。病気休職が増え続ける職場を若者が選ぶとは思えない。下がり続ける教員採用試験の倍率を上げ、教育の水準を高めるには精神疾患の問題の解決が欠かせない・・・

『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』

2024年3月10日   岡本全勝

鎌田浩毅先生の新著『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』(2024年、丸善出版)を紹介します。同社が出している「47都道府県百科シリーズ」の一つのようです。

地震や火山活動が活発になって、地学への関心が高まっています。宣伝文には、次のように書かれています。
「現代社会で関心の高い地震・火山についても言及し、また迫力ある図版も交えながら、全国の特徴的で珍しい地質景観/ジオサイトを興味深く解説する。
「地質と地質景観の基礎知識」を第I部に配置することで、誰でも抵抗なく読み通せる内容構成
各都道府県にどのような地質景観があるかがすぐ探せる都道府県別編集
知りたい地質景観がすぐに探せる充実した巻末索引
考古学、化石採掘、天文学、地震・火山、地球科学などの研究をこれから始めようとしている人にとっても知っておくと役立つ内容満載」

図鑑なので、調べやすく、読みやすいです。
参考「鎌田先生の解説、能登半島地震の仕組み

ボーゲル氏が指摘した日本社会のリスク

2024年3月8日   岡本全勝

3月5日の日経新聞に、小竹洋之・コメンテーターの「さらばJTC、今度こそ 株高を経済再生の追い風に」が載っていました。
・・・「アフター2.22」――。日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新したその日に、日本は生まれ変わったかのような喧噪ぶりである。ユーフォリア(陶酔)とは言わないまでも、どこか浮ついたムードが漂う。
企業の稼ぐ力や経営効率が高まり、世界の投資家から一定の評価を得ているのは喜ばしい。賃金と物価の上昇にも好循環の兆しが見られ、バブル崩壊後の長き経済停滞から抜け出すチャンスをつかみかけているのは確かだ。
それでも旧態依然の伝統的な企業を「JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)」と揶揄する声はやまない。国内総生産(GDP)で世界4位に後退した「ジャパン・アズ・ナンバーフォー」の現実が、一夜にして覆るわけではない・・・

原文をお読みいただくとして、ここでは、最後についている警告を紹介します。
・・・米社会学者のエズラ・ボーゲル氏が1979年に出版した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、日本の戦後復興の秘訣を明らかにするとともに、そこから米国が学ぶ際のリスクにも言及していた。①個性や創造性の圧迫②異端者や少数者の冷遇③転職や離婚が招く苦難④外国の製品や人材を締め出す愛国主義⑤完全な合意形成を求めるが故の膠着――である。
私たちにとっては、今も耳が痛い指摘ばかりだ。日本の再生に求められるのは、企業の変革だけではあるまい。広い意味でのJTC、つまり「ジャパニーズ・トラディショナル・カルチャー」のあしき部分との決別ではないのか・・・

経済成長期の東京、スラムの新築

2024年3月7日   岡本全勝

朝日新聞土曜日別刷り連載、原武史さんの「歴史のダイヤグラム」。鉄道を切り口にした、歴史や社会の切り口が興味深く、毎週楽しみに読んでいます。
3月2日は「焦土から木造アパートへ」でした。東京の中央線沿線が、空襲によって焼け野原になったことが取り上げられています。そこに、戦後の風景が描写されています。

次に引用するのは、その後のことです。
・・・もちろん年月が経つにつれ、中央線の沿線でも再び宅地化が進んだ。だが55年ごろからは、「木賃(もくちん)アパート」と呼ばれる木造2階建ての賃貸アパートが急増する。それらは東京西郊に当たる山手線の外側の区域に帯状に建てられ、高度成長期に上京してきた大学生や労働者が多く住むようになった。

社会学者の加藤秀俊は、66年に北米を旅行して帰国した直後に新宿から中央線に乗ってみて、その風景に驚いた。国立の一橋大学に通っていた頃とはあまりにも違う。「いま眼に映るのは、住宅というにはあまりにお粗末な木造アパートである。かつてあった住宅は取りこわされ、六畳一間のアパートがそのかわりに出現しているのだ」(『車窓からみた日本』)
北米の住宅を目にしてきたばかりの加藤にとって、「この住宅地は、あまりにひどすぎる」(同)と映った。「はっきりいって、日本人は、スラムを“新築”しているのである」(同)
表面上の高度成長とは裏腹の現実を、加藤は中央線の沿線に見た。敗戦から20年あまり経っても、日本は真の復興を果たしていないのだ。「中央線の車窓の第一印象は、こんなわけで、いささかの怒りと悲しみをともなうのであった」(同)・・・