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経済

日本のGDPの軌跡と諸外国比較

拙著「新地方自治入門」p6の図表「日本の国民一人当たりGDPの軌跡と諸外国の比較」を更新しました。2005年までです。
元図2001年では、アメリカが日本を再逆転したところでしたが、その後、差は開いています。西欧諸国も、日本に追いつき、追い抜いています。中国は911ドルから1,732ドルへと、驚異的な発展を続けています。
今回も、山岸君(内閣府経済社会システム)の協力を得ました。

歳出歳入一体改革の役割

6日の読売新聞「論点」は、岩本康志教授の「経済財政諮問会議、将来像議論の司令塔に」でした。
・・昨年に「歳出・歳入一体改革」をまとめたことが重要だ。一体改革では、2011年度に基礎的財政収支を黒字化するために、歳出削減の数値目標を立てている。このような中期の財政計画を立案、実行することは、財政が硬直化して機動的な運営ができなくなる欠点をもつが、政府の放漫財政を抑止する利点が大きい。
諸外国ではこうしたルールの導入で財政規律を確保して、財政再建に成功してきている。一体改革の実現は、毎年の予算編成での首相や諮問会議の主導権をも制約するが、その効能について認識することが必要だ。
従来は、諮問会議が歳出削減を主導しなければ財政再建が進まなかったが、一体改革では5年分の歳出削減の数値目標が与党の合意を経て閣議決定されており、その分、諮問会議の肩の荷が軽くなったと言える・・

日本の経済成長と税収

戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。この表は、「新地方自治入門-行政の現在と未来」p125に載せたものを更新したものです。

次の3期に分けてあります。すなわち、高度経済成長期、安定成長期、バブル崩壊後です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。
第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。
「65歳以上人口比率」以外は、期間の年平均伸び率です。

期 間
1955~1973年
1973~1991年
1991~2008年
名目GDP
15.5%
8.2%
0.3%
国税収入
15.9%
9.1%
△1.6%
地方税収入
17.1%
9.8%
0.7%
参考
65歳以上人口比率
7.1%
(1970年)
12.0%
(1990年)
22.1%
(2008年)
人口増加率
1.1%
0.7%
0.2%

高度経済成長が、いかにすごかったかがわかります。年率15%の成長は、3年で1.5倍、5年で2倍以上になるという早さです。池田総理が「所得倍増論」を唱えました。それは「10年で所得を倍にする」というものでした。名目値では、5年で倍になりました(もちろん物価上昇があったので実質価値では違います)。
税収も同じように伸びていますが、実はこの間に毎年のように減税をしました。累進課税なので、減税をしなければ、もっと激しく伸びたと予想されます。
石油ショック後も結構な成長を続けたこと(近年の中国や東南アジア各国の驚異的経済成長が、8~9%です)。バブル後はそれが止まったことも。
そして、参考(65歳以上人口)に示したように、高度経済成長期は日本が「若く」、社会保障支出も少なくてすみました。当時ヨーロッパ各国は、すでに10%を超えていました。現在ではヨーロッパ各国を追い抜いて、世界一の高齢国になっています。人口の増加率も、もう一つの要因でしょう。この数字は1991年と比べるとわずかに増えていますが、2004年をピークに減少し始めました。

さて、この第3期はいつになったら終わり、いつから第4期が始まるかです。景気は底を打ったのですが、何をもって第4期の始まりとするかです。この見極めは、しばらく時間がかかります。振り返ってみて、あの時点が転換期だったということがわかるのですから。(2007年7月4日)

数字を2006年まで更新しました。1991年までの数字も、見直しの結果、少し動いています。2005年の改訂時は山岸君(内閣府)の協力を得、今回は斎藤君(内閣府)の協力を得ました。(2008年4月22日)

数字を2008年まで更新しました。今回も斎藤君(内閣府)の協力を得ました。2006年までと比べて、GDPの伸び率は下がりました。国税収入伸び率が下がり、地方税伸び率が上がりました。これは、2007年度に実施された3兆円の、国から地方への税源移譲が要素だと考えられます。高齢化率も、着実に上がっています。
この表では、第1期と第2期が、偶然18年間です。第3期が2009年までになると、第3期も18年間になります。(2009年12月13日)

日本国債の格付け

3日の東京新聞が、日本国債の格付けを解説していました。アメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、4月に日本の長期国債の格付けを、AAー(ダブルエー・マイナス)から、AAに引き上げました。「財政再建、金融政策の正常化、構造改革に進展が見られる」との説明です。
2001年までは、最上位のAAAだったのですが、その後、国債発行残高の急増や財政硬直化を理由に引き下げられました。今回の引き上げは喜ばしいことなのですが、手放しでは喜べません。この格付けは、チリや香港並み、G7ではイタリアの次に低いのです。別の会社のムーディーズでも、G7で最低、台湾、チリ、ボツワナより低いのです。
2002年に、日本国債が「ボツワナより下になった」ことが問題になりました。ボツワナには失礼なのですが。その際の議論を、調べたことがあります。財務省は、格付け会社宛の意見書の中で、次のような主張をしました。
「1 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
2 格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
 ・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
 ・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
 ・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高」
これに対し、格付け会社のフィッチ・レーティング社は、回答の中で次のように述べました。
「・・・日本政府は紙幣の発行か債務不履行のいずれかでしか抜け出すことのできない、国内債務の罠に填ってしまうかもしれません。そのようなシナリオでは、日本政府は巨額な国内債務の残高全額の紙幣発行に至るような財務破綻や経済不安のリスクを取るよりはむしろ、債券保有者との債務リスケジュール(返済繰延べ)を実施する可能性があります。」
すなわち、財務省は、日本は対外的に債権国であり、国債はほとんど国内で消化されているから問題ないと主張しました。一方、格付け会社は、巨額の政府債務=国の財政運営を問題視し、国債の格付けを低くしたのです。問題視されたのは日本経済でなく、国の財政運営能力でした。