カテゴリー別アーカイブ: 社会

社会

「迷惑掛けさせていただきます」

私の嫌いな言葉「させていただきます」についてです。許可を求める場合は納得します。身の回りのことについて奉仕してくれる場合、例えば食事が終わった後、店員さんが「お盆を下げさせていただきます」と言うのは、おかしくないですよね。
でも、相手に迷惑を掛ける、不便を強いる場合に、「させていただきます」と表現されると、「ほんまに相手のことをおもんぱかっているのか」と疑問に思います。

スイカとパスモ(電子貨幣つき乗車券)の発売停止のお知らせに、次のような文章があります。
「世界的な半導体不足の影響を受け、6 月8 日(木)より、無記名の「Suica」及び「PASMO」カードの発売を一時中止させていただいております。」
何か、おかしいと思いませんか。相手に不利益を与える場合に、「させていただきます」はおかしいでしょ。英語の案内では、そんな表現ではありません。

「あんたを殴らせてもらいます」は、新喜劇や漫才の世界です。そのように言われれば「いやです」と答えますよね。「取りやめさせていただきます

日本語教師が足りない

10月20日の日経新聞夕刊に「日本語教師が足りない 外国人留学生「6割増目標」に影」が載っていました。世界から日本に来てもらうためには、日本語教室は必須です。これまで、もっぱら欧米に行って文化を「輸入」をしてきて、外国から来てもらう文化の「輸出」には取り組んでこなかったからでしょう。

・・・新型コロナウイルス禍が収束し各所で人手が足りない状況が目立ってきた。外国人が日本語を学ぶ場に関しては教師不足が深刻さを増す。岸田文雄政権が掲げる「共生社会」の実現に向けて足かせとなる可能性がある・・・

・・・留学生らが日本語を学べる場は「日本語教育機関」と呼ばれる。文化庁によると、各地の大学やインターカルトのような日本語学校、地方自治体が独自に設けている教室などを含めて合計すれば全国に2700カ所超ある。
日本語を学ぶ人の数は直近2022年度の時点で21万9千人だった。あくまでコロナ禍からの回復途上の数字だ。19年度実績でみると27万人超いた。
教える人は慢性的に足りないといわれてきた。日本語教師の数はこの10年で3割増の4.4万人ほどに増えてきてはいる。
それでも生徒の数に比べれば伸び率は小さい。日本語学校や大学が東京や大阪など大都市部に集中しているため、地域間の偏りがあることが分かってきた・・・

・・・政府は教師の数や待遇を直接テコ入れするよりも「教育の質」を担保する施策に比重を置いてきた。
日本語教育機関認定法が5月に成立した。日本語教師を民間の資格から国家資格に格上げする方針を柱に据え「登録日本語教員」という資格の新設に動いた。
新たな制度は24年4月に始まる。基礎・応用の筆記試験の合格と実践研修(教育実習)の修了が付与の要件になる。国がお墨付きを与えた人と機関のみが原則教えることができる仕組みに変えた。
日本語教育の水準のばらつきを改善し、統一の基準を設けて質を底上げする。法整備の狙いに異論は少ない。
それでも現場からは人手不足を和らげる効果は見込みにくいとの声があがる。資格取得の負担の重さなどから現役教師の離職を招く懸念は残ったままだ。職種のハードルが上がったとの受け止めが広がり、なり手不足に拍車がかかる恐れもある。量と質の両面の模索はまだ続く・・・

企業の失敗、野性喪失から

10月8日の日経新聞、野中郁次郎一橋大名誉教授の「企業の失敗、野性喪失から」から。

バブル崩壊後の日本では雇用、設備、債務の3つの過剰が企業を苦しめたとされた。だが企業を本当に縛ったのは、全く異なる3つの「オーバー(過剰)」だったとみる。
――企業にとって「失われた30年」の真因はどこにあったのか。
「雇用や設備、債務もその通りだ。しかしより本質をいうならプラン(計画)、アナリシス(分析)、コンプライアンス(法令順守)の3つがオーバーだった」
「数値目標の重視も行きすぎると経営の活力を損なう。例えば多くの企業がPDCAを大切にしているというが、社会学者の佐藤郁哉氏は最近、『PdCa』になったといっている。Pの計画とCの評価ばかり偏重され、dの実行とaの改善に手が回らないということ。同感だ」
「行動が軽視され、本質をつかんでやりぬく『野性味』がそがれてしまった。野性味とは我々が生まれながらに持つ身体知だ。計画や評価が過剰になると劣化する」

――計画や数値目標なしに経営は成り立たないのでは。
「それらは現状維持の経営には役立つかもしれないが、改革はできない。欧米の科学的管理手法から発展したやり方は、感情などの人間的要素を排除しがちだ。計画や手順を優先させられると人は指示待ちになり、創意工夫をしなくなる」
「計画や手順が完璧であることが前提だけに、環境の変化や想定外の事態に直面すると、思考も停止する。高度成長期には躍動の原動力だったとしても、今では成長を阻害する要因だ」

延命医療選択、韓国

韓国では、延命医療を続けるかどうかを選択できる制度があるそうです。10月9日の朝日新聞「延命医療やめる」制度、韓国の実態 「意向書」など作成・法施行5年で29万人

・・・韓国では2018年2月、「延命医療決定法」と呼ばれる法律が施行された。死が間近の臨終期の患者の心肺蘇生や人工呼吸器装着、血液透析、抗がん剤などの終了を認める。痛みの緩和や栄養・水分の供給は続けることになっている。
臨終期とはどんな時期か。国の担当者は「死の2、3日前」と説明する。担当医と別の医師の計2人がそう判断した場合に適用される。この制度のもとで亡くなる人は年々増え、23年6月までに計約29万人に上った。

終了できる方法は、大別して四つある。(1)事前に本人が意向書を作る(2)末期患者らが要請し担当医師が計画書を作る(3)家族2人以上の意見により患者の意思を推定(4)家族全員の合意がある――。
(1)の対象は19歳以上。希望者は健康な時から、国が指定する施設でカウンセラーらから説明を受けて作成、国のデータベースに登録される。23年6月までに19歳以上の国民の約4%にあたる約184万人が作った・・・

ホテル、脱亜入欧の終わり

先日の日経新聞日曜版に、東京の帝国ホテルが日本料理の直営店を開いたことが載っていました。2021年に開店したそうですが、帝国ホテル130年の歴史で初めてのことです。既にほかの日本料理店が経営する店はあったのですが。
帝国ホテルのホームページにも、次のように書かれています。
「「帝国ホテル 寅黒」は、世界のVIPを日本の心でおもてなしする“和のダイニング”として、2021年11月に開店しました。帝国ホテルが直営する日本料理は、130年を超える歴史の中でもここが初めて。」

なぜか。それは、帝国ホテルが、日本が近代国家として認められるためにつくられたからです。そのためには、フランス料理でなければなりませんでした。東洋の遅れた小さな国が、精一杯背伸びしたのです。

しかし、外国から訪れるお客さんは、日本料理も食べたいでしょうね。かつては、西洋人からすると「変な食べ物」とも思われた和食も、寿司と天ぷらから始まり、いまや世界に通じる料理になりました。日本酒もです。
ホテルにおいても、ようやく脱亜入欧、欧米をうらやましく思う時代が終わったということでしょうか。