カテゴリー別アーカイブ: 歴史

二つの東京オリンピック

9月8日の朝日新聞夕刊、來田享子・中京大教授・日本オリンピック委員会理事の「研究してきた五輪、どう変える」から。

「1964年の東京大会が日本の国際社会への復帰を象徴する出来事であったのに比べ、21年の大会は国際社会に立ち遅れている日本を象徴する祭典でした。昭和の高度経済成長期を回顧し、21世紀に入っても、その郷愁を核にした幻影を追い求める感覚が随所にみられたのは、残念でした」

具体例で挙げるのが、16年リオデジャネイロ五輪の閉会式。次回の開催都市である東京に引き継ぐ「フラッグハンドオーバーセレモニー」で当時の安倍晋三首相が人気ゲームのキャラクターに扮して登場した。64年大会で生まれた東京五輪音頭のリメイク版もいかにも焼き直しに感じたという。
「新しい時代の扉を開こうとする感性の欠如に加え、若い世代の倫理観にもとづいて物事を進める意識が乏しかった」

なぜ、そんな風になってしまったのか、についての考察は明快だ。
「上意下達的な組織、そして時代を的確にとらえるリーダーの不在です。組織のガバナンスやコンプライアンスの国際基準、時代や社会の変化に伴って変わるオリパラの理念をつかめていませんでした」

外国人が好きなコンビニエンスストア

9月8日の日経新聞に、中村直文・編集委員の「訪日客は何しにコンビニへ? 「うまい」日本を再発見」が載っていました。

・・・日本のどこへ行っても外国人であふれかえっている。東京や大阪、京都などはもちろん、地方都市でもインバウンド(訪日外国人)が目立つ。彼らが決まって利用するのがコンビニエンスストアだ。目を輝かせながら品定めする外国人を見ると、なぜか誇らしげな気持ちになる・・・

詳しくは、本文を読んでいただくとして。
コンビニで売れているのは、菓子類(駄菓子は日本独特と聞いたことがあります)、サンドイッチ(日本のような柔らかいパンのは、海外にはあまりないのだそうです)。

外国人が驚いたものに、次の3つが上げられています。
・温水洗浄便座や排便音を隠す機能を備えたトイレ
・真ん中で割ると手を汚さずにジャムなどが塗れる容器
・エレベーターで行き先階を間違えたとき「ダブルクリック」で取り消せるボタン

チャーチル著『第二次世界大戦1』

ウィンストン・チャーチル著『第二次世界大戦』が、完訳版で出版されます。みすず書房から伏見威蕃さんの訳です。
まず、『第二次世界大戦 1――湧き起こる戦雲』が今年8月に出版され、これから毎年1巻ずつ出るそうです。

チャーチル・元イギリス首相は、この本でノーベル文学賞を受賞しました。本人は、ノーベル平和賞を欲しかったそうですが。首相退任後、関係書類を持ち帰る(独占する)ことを許可され、それを元に執筆したとのことです。
20世紀の一番大きな出来事の、当事者の記録です。それだけの価値があります。

私は、河出書房文庫の縮約版で読みました。英語版もいつか読もうと買ってあるのですが・・。今回出版された第1巻だけでも、900ページ近くの分厚いものです。

人類の成長と格差の理由

オデッド・ガロー著『格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか』(2022年、NHK出版)を、これまたかなり前に読み終えました。

出版社の宣伝には、次のようにあります。
「30万年近く前にホモ・サピエンスが誕生して以来、人類史の大半で人間の生活水準は生きていくのがぎりぎりだった。それが19世紀以降に突如、平均寿命は2倍以上に延び、1人当たりの所得は地球全体で14倍に急上昇したのはなぜか?
この劇的な経済成長の鍵は“人的資本の形成”だったことを前半で説く。
それを踏まえて後半では、なぜ経済的な繁栄は世界の一部にとどまり、 今なお国家間に深刻な経済格差があるのかを検討する。制度的・文化的・地理的要因に加え、“社会の多様性”が根源的な要因だったと論じる。人類史を動かす根本要因に着目した〝統一理論〟にもとづいて、究極の謎を解き明かした世界的話題作!」

そこにあるように、前半は「何が成長をもたらしたか」を説明し、後半は「なぜ格差が生じたのか」を説明します。壮大な人類の歴史を遡り、この2つの究極の問に答えようとします。問の立て方が良いですよね。それぞれに筆者の説明には納得するのですが、統一理論といえるかというと・・・。

南北朝鮮の経済格差

7月28日の日経新聞に「朝鮮戦争休戦70年、経済力「54倍」開いた南北」が載っていました。

・・・朝鮮戦争の休戦から27日で70年がたった。北朝鮮と韓国の1人当たり国内総生産(GDP)は2021年時点で韓国が北朝鮮の54倍まで開いた。南北間の人の往来も途絶え、統一に向けたビジョンが描きにくくなっている・・・

記事によると、国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計によると、1970年の1人当たりGDPは北朝鮮が328ドル、韓国が276ドルで北朝鮮が上回っていました。2021では、韓国が34,940ドル、北朝鮮は644ドルです。
1990年に統一したドイツの場合は、統一前の1人当たりGDPは、東ドイツが西ドイツの40%程度の水準だったとされます。それでも、統一後に格差を埋めることに苦労しました。