カテゴリー別アーカイブ: 歴史

「感染症と文明」

山本太郎著『感染症と文明ー共生への道』(2011年、岩波新書)と、村上陽一郎著『ペスト大流行ーヨーロッパ中世の崩壊』(1983年、岩波新書)を読みました。
コロナウィルス流行で、関連する書物がたくさん紹介されています。この2冊を選んだのは、村上先生の本はかつて読んで、内容を忘れたので。山本先生の本は、わかりやすそうだからです。

私の関心は、医学的なことより、社会への影響です。その点で、2冊とも概説書、入門書としてはよかったです。
人類の生活の変化がウイルスとの共存を変化させ、疫病の流行をもたらすこと。それが、社会に大きな影響を与えること。戦争では、闘いで死ぬより感染症で死ぬ人の方が多かったことなど。大きな枠組みで、病原体と人類との関係を理解することができます。
ペストの流行がキリスト教への信頼を低下させ、中世が終わりに入ったこと。新大陸になかった感染症を持ち込んだことで、戦う前にインカ文明やアステカ文明が崩壊したこと。新大陸の住民がいなくなったのでアフリカ大陸から奴隷を持ち込んだこと・・・。歴史を変えたことがよくわかります。

しかし、まだわからないことも多いのです。なぜ流行した感染症が消えてしまったのかとか。

仏教の変遷2

「仏教の変遷」の続きです。

なぜ、民衆はその宗教を信じたのか。その分析がないと、各宗教の社会における意義づけにはなりません。近代になって宗教が衰える以前においてもです、例えば、インドで仏教がはやり、そして廃れたこと。日本でも各宗派がなぜ起こり、また衰退したのか。教義を見ているだけでは、わかりません。よい書物があれば、お教えください。
失礼な言い方ですが、民衆に売れるように、商品である教義を変えていった(少しずつ変えた新製品を出した)と理解するのが、わかりやすいようです。

私たちの経験でも、教義まで知っている人は少なく、葬式と法事の際に行われる儀式と読経と説教くらいが仏教との接点です。昔は、おばあさんが朝夕仏壇に手を合わせていましたが。他には、古寺を訪れ古仏を鑑賞するとか。庶民側の宗教意識と、本に書かれている内容とには、大きな隔たりがあります。

教団についても、組織論としての分析を知りたいです。教団として持続するためには、職員(聖職者)の勧誘と生計維持、組織としての経営(お布施などの収入、支出)、そのための顧客の勧誘(信者の獲得)などが必要です。
信仰だけでは、僧侶や牧師さんも生きていけず、食べていく必要があります。禅宗や修道院は自活しますが、ほとんどの宗教は信者からの寄付で成り立っています。その経済的、経営的分析も知りたいです。

宗教学と言われる学問も、私の問には答えてくれないようです。例えば、岩波書店「いま宗教に向きあうシリーズ」も、さまざまな角度から現在の宗教を論じているのですが、私の知りたいことは書かれていません。関係者からは、不信心者とお叱りを受けそうですが。

仏教の変遷

佐々木閑著「集中講義 大乗仏教  こうしてブッダの教えは変容した」(2017年、NHK出版)を読みました。これは、別冊NHK100分de名著シリーズの一冊です。

紹介に、次のように書かれています。
・・・同じ仏教なのに、どうして教えが違うのですか?
自己鍛錬を目的に興ったはずの「釈迦の仏教」は、いつ・どこで・なぜ・どのようにして、衆生救済を目的とする「大乗仏教」へと変わっていったのか・・・

釈迦が説いた仏教と大乗仏教(日本で信仰された仏教)とが全く違ったものであることが、よくわかりました。そして、なぜ大乗仏教に転換し、それが民衆に受け入れられたかも。というか、民衆に受け入れられるために、大乗仏教に転化したのでしょう。その中でも、奈良仏教から天台宗、真言宗、浄土宗、禅宗、日蓮宗と派生していったことも、よくわかります。

さらに知りたいことがあります。
仏教そして宗教に、関心を持っていました。人類の歴史で、長い期間そして多くの人をとらえてきた宗教。それを知りたかったのです。いくつか本をかじりましたが、よくわかりません。不勉強もあるのですが。
私の不満は、宗教について書かれた本の多くが、教団・聖職者側から書かれていることです。教義、教祖の教え、実践すべきことが書かれていますが、それを信じた民衆の側からの記述ではないのです。個人の側から書かれているとすると、ある人が宗教心に目覚める、悟りを開く話です。
この項続く

『物語 チェコの歴史』

薩摩秀登著「物語チェコの歴史―森と高原と古城の国」 (2006年、中公新書)を読みました。西欧の歴史は習いますが、この地域のことは知りませんねえ。勉強になりました。

「物語」と銘打ってあるように、チェコの通史ではありません。時代を代表する人物や出来事を取り上げて、チェコという国がどのようにしてできたかをわかりやすく描いています。
事実の羅列のような通史や、分厚い歴史書より、読みやすいです。膨大な史実から何を取り上げ、何を切り捨てるか。そこに筆者の力量が問われます。
池上俊一先生に、「××でたどる○○史」シリーズがあります。「池上 俊一 著『情熱でたどるスペイン史』

チェコという国が大昔からあったのではなく、19世紀になってつくられたことがわかります。欲を言えば、20世紀以降の記述が少ないことです。チェコスロバキアとの合体と離縁は触れられているのですが。
チェコは20世紀に、ハプスブルク支配から独立、ドイツへの併合、共産主義支配、プラハの春、そして民主化と、激動の時代を過ごしてきました。この本は2006年の出版なので、増補版での追加を期待しましょう。

去年、キョーコさんに連れられて、中欧3都市に行ったので。いくつか関連書を買ったのですが、積ん読でした。少し前に読んだのですが、このページで紹介するのが遅れました。今年は、ヨーロッパには行けそうもないので、記録のために書いておきます。

古関メロディー

2020年春から、NHK連続テレビ小説で、作曲家の古関裕而さんが主人公の番組が放送されます。
古関さんは福島市出身で、地元では大いに盛り上がっています。地元新聞社の福島民報社の企画「あなたが選ぶ古関メロディーベスト30」で、全国投票によりベスト30が決まりました。「高原列車は行く」が一位です。若い人は、知らない曲でしょうかね。

30のリストを見ると、有名な曲がたくさん並んでいます。
例えば、甲子園野球の「栄冠は君に輝く」や早稲田大の応援歌「紺碧の空」は、皆さんご存じでしょう。面白いのは、阪神タイガースの「六甲おろし」と読売ジャイアンツの「闘魂込めて」という、敵同士の曲です。
軍歌「ラバウル海軍航空隊」は私の好きな歌で、元気をもらっています。「暁に祈る」や「若鷲の歌」は、私以上の年代の人は歌えるでしょう。他にもたくさん。

最近の曲と違い前奏が長いので、前奏を聴くとわかる曲が多いです。六甲おろしにしても、暁に祈るにしても、前奏だけで1番分の長さがあります。
いずれも、元気が出る曲です。戦時中、戦後の日本が元気だったころが、時代背景にあるようです。
それにしても、すごい人だったのですね。