「日本思想史」

末木文美士著『日本思想史』(2020年、岩波新書)を読みました。
出版社の紹介には、「古代から現代にいたるまで、日本人はそれぞれの課題に真剣に取り組み、生き方を模索してきた。その軌跡と厖大な集積が日本の思想史をかたちづくっているのだ。〈王権〉と〈神仏〉を二極とする構造と大きな流れとをつかみ、日本思想史の見取り図を大胆に描き出す」とあります。確かに、新書という形で簡潔に、古代から現代までを整理してあります。

その点では、よかったです。先生が冒頭に述べられるように、思想や哲学というと、西欧の思想や哲学の紹介でした。本屋に並んでいる哲学や思想の本は、西欧のものか中国古典で、日本のものと言えばせいぜい武士道です。
それに対し、日本の思想を取り上げています。1冊にまとめるのは、難しいことです。

ところで、さらに私が知りたいのは、「日本人」の思想です。
何を言いたいかというと、知識人の最先端の思想でなく、国民・大衆の思想を知りたいのです。
哲学は知識人が人間の在り方について悩むことだとして、ひとまずおいて。思想といった場合は、さまざまな担い手がいます。ところが、思想史で取り上げられるのは、ほとんどが知識人・知識階級の書いたものです。日本では、宗教としては仏教、儒教、神道が、そして政治思想として支配者とその取り巻きの考え方が対象となります。
それに対し、庶民、大衆が何を考えていたかを知りたいのです。
この項続く