カテゴリー別アーカイブ: 世界

パスポート所持率の低下

11月29日の日経新聞「私見卓見」は 鈴木克洋・全日本空輸ウィーン支店長の「パスポートから始まる国際化」でした。

・・・外務省の旅券統計によると、日本人のパスポート所持率は17%で、この5年間で8%減少した。他国と比較してみると、英国は86%、米国は50%、韓国は42%となっており、日本はかなり低位であることがわかる。

パスポート所持率が低い理由はまず円安による影響だ。円の価値の下落により、海外での費用増が挙げられる。また、新型コロナウイルスの影響も依然としてあり、海外での感染を恐れるあまり、渡航をためらうという心理状態から抜け出せていない。
さらに今後の日本にとって大きなリスクになると思われる理由は、「日本から出たくない」という内向き思考である。「日本は最良・最高であり、海外へ行く必要がない」という考えが根本にあると、日本全体が進化の止まる「ガラパゴス化」することにもなりかねない・・・

・・・日本が世界でどのように見られているのか。これまで戦後の日本が培ってきた世界での立ち位置はどこか。そして今後日本が果たすべき役割は何か。特にこれからの日本を背負っていく10代から20代の若者たちにぜひ海外を経験し、国際感覚を身に付けてほしい・・・

車椅子の知人のドイツ旅行記

知人の、元公務員が10月下旬にドイツに行ってきました。彼は車椅子なのです。その旅行記を、インターネットに載せています。

私の海外旅行は旅行会社のパック旅行ですが、彼は自分で計画を立てて、さまざまなところを見ています。美術、音楽、サッカー、建築物、鉄道・・・盛りだくさんです。事前準備が大変だったと想像できます。それも楽しいのでしょうね。
旅行記は、きれいな写真と一緒に記録しています。車椅子での苦労も、書かれています。

本人の了解を得て、紹介します。
38回にもわたるので、お暇なときに少しずつご覧ください。

日本外交、東南アジア重視を

11月17日の読売新聞1面「地球を読む」は、北岡伸一先生の「外交・安保の課題」でした。

・・・とはいえ、日本もトランプ政権の登場に対して、迅速かつ大きな対応が必要となる。今回は外交・安保政策に絞って検討しよう。
第一に必要なのは、日本自身の防衛能力の強化である。
第二が、日米同盟の強化である。
安全保障政策で必要な第三の点は、関係国との安保協力関係の強化だ。米国以外にも、韓国やオーストラリア、インド、さらに英国など欧州諸国との協力強化も重要である。

第四に、私が最も遅れていると危惧しているのが、東南アジア諸国との関係強化である。私は数年前から、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を飛躍的に強め、欧州連合(EU)のような「西太平洋連合」といったものを作るべきだと考えている。
・・・私は、ASEAN全体はもとより、一つひとつの国々と、長年の経済関係と信頼を基礎に、対等の関係を形成することを目指すべきであると考える。

東南アジア各国はみな、中国経済との結びつきを維持するため、中国と対立するのは避けたいと考えている。とはいえ、中国の従属国家になりたくはない。そのために米国のプレゼンスを必要としているのだ。
・・・EUでは、世界の多くの問題について政府や有識者が意見交換するシステムがある。西太平洋でもこうしたことができないか。

第五は、世界の途上国へのアプローチである。
途上国では、先進国の二重基準への拒否感が強い。アフリカの国々は、英仏の長年の植民地支配を忘れていない。「我々が侵略された時、先進国は何もしなかったのに、ウクライナが侵攻されたら大騒ぎする」と、苦々しく思っている。
彼らの先進国に対する反感が、グローバル・サウスやBRICSの力の伸長の背景にある。しかし、BRICSには世界をリードする力も理念もない。
法の支配に代わって力の支配がはびこる世界となって本当に困るのは、小さく貧しい国だ。そうした国々をもう一度、我々の側に取り戻さねばならない。そのために日本が中心となり、他の先進国を巻き込んで普遍的価値を再定義し、途上国に働きかけるべきだ・・・

パクス・ニッポニカ

10月25日の日経新聞オピニオン欄、イェスパー・コール氏(マネックスグループ グローバル・アンバサダー)の「パクス・ニッポニカは可能である」から。

・・・この21世紀、「パクス・アメリカーナ」も「パクス・シニカ」も世界に受け入れられる解決策ではなかった。ワシントンも北京も、グローバルサウスや欧州が直面する問題に対して、信頼に足る答えを示さなかった。両国の首脳が「我々とともにあるのか、我々に敵対するのか」と言いつのるほど、覇権国家に対する憤りは大きくなり、信頼は失われていった。

だが、「パクス・ニッポニカ」は歓迎されるだろう。日本は新しい秩序の調停役として、世界を穏健化させるのに必要なものを持っている。私が考えるパクス・ニッポニカは、1815年からのパクス・ブリタニカや1945年以降のパクス・アメリカーナのように力ずくで世界を支配するやり方ではない。
強い基軸通貨も、革新的な大手企業も、人材を集める大学も、支配的な軍もない。日本が世界を支配している分野はない。それこそがパクス・ニッポニカが可能な理由だ。

脅威ではなく、恐れられてもいない、真のポスト工業化国である。史上最速で経済発展を遂げ、破壊的な不平等に苦しむことなく、史上最大のデフレサイクルを乗り切れる回復力のある経済を持っている国である。最速の高齢化社会であり、雇用収入に依存するのではなく、資産収入を増やすことで繁栄を生み出す方法を学んでいることなどが世界のロールモデルとなる。
建築、ファッション、食、ゲーム。またスポーツをはじめ数々の分野で西洋文化を輸入するだけでなく完成させ、改良してきた。世界的にみれば日本は東洋でも西洋でもあり、世界の北でも南でも尊敬される文化を保持している・・・

・・・ではいま、日本はパクス・ニッポニカを主導し、組織する準備ができているのか。個人的には答えはイエスである。なぜなら、世界はいまほど信頼できる立派な調停者を必要としたことはないからだ。さらに重要なのは、日本が歴史的な転換点にあるということだ。日本は新たな野心、目標を持たなくてはならない状況にある・・・
・・・ただ、日本のエリートたちの声がいかにも内向きであることに、いつも困惑させられてきた。よりよい世界を築くために役割を果たしたいという願望は感じられなかった・・・
・・・しかし現在の日本は、国家の目標を再設定できるまたとない機会を得た。米国、あるいは中国に対して「ノー」と言うか「イエス」と言うかという問題ではない。世界が待っているのは「我々はこういうやり方を提案します」と言う国だ。東西南北の調停者となりうるパクス・ニッポニカは世界が待ち望んでいる野心であり、日本はそれを受け入れるべきである・・・

日本のホテル会社がアメリカで西洋ホテルをやるのか

10月18日の日経新聞に「星野リゾート、米国で28年に温泉旅館 おもてなし世界へ」が載っていました。

・・・星野リゾート(長野県軽井沢町)は17日、米ニューヨーク州で2028年に温泉旅館を開業すると発表した。四季の移ろいを楽しめる露天風呂を設けるほか、日本文化に親しめるよう趣向をこらす。インバウンド(訪日外国人)需要が活況とはいえ、国内だけでの成長には限りがある。日本の8倍という世界最大の旅行・観光市場である米国に日本のおもてなしで挑む・・・

記事に、次のようなことが書かれています。
星野代表は、アメリカの大学を卒業後、現地の日系ホテルで働いていた際、「日本のホテル会社がなぜアメリカに来て西洋ホテルをやるのか」と何度も問われたそうです。海外の日系ホテルは日本人客を見込むものが多く、地元住民や世界からの認知度は高くないようです。
星野代表は、「日本のホテルチェーンが世界に進出するには、日本らしい温泉旅館しかない」と話しています。