2月15日の日経新聞に「科学研究を阻む英語の壁 母国語以外、論文却下が2倍超」が載っていました。
・・・英語はビジネスを中心に世界で広く使われているが、苦手だと感じる人も少なくない。実は科学研究でも英語が大きな壁だ。複数の調査を通じて英語が母語ではない研究者の論文は学術誌に掲載を却下される頻度が2倍以上高く、作成にかかる時間も最大で5割長いと分かった。科学の発展を阻む恐れもある言葉の障壁にどう向き合うべきか。
研究者の母語が英語でないと、論文の出版数が最大で7割も減る――。オーストラリアのクイーンズランド大学が2025年に発表した内容は、国や地域を問わない科学研究の公平さに疑問を投げかけた。論文を科学誌「プロス・バイオロジー」に掲載した。
日本を含む8カ国で約900人の研究者を調べた。そのうちのバングラデシュやネパールなど英語圏以外の発展途上国の女性が書いた査読付きの英語論文は1人あたり平均で約7本で、同24本程度の英国の男性に比べて7割も少なかった。それぞれが研究者になって約20年後の時点で比べた。
なぜこんな不均衡が生じるのか。研究をまとめたクイーンズランド大の天野達也准教授は「非英語圏の科学者は英語の論文を書くのに不利なことが理由の一つだ」と解説する。
英語は科学の「共通語」だ。世界で科学分野の出版物は98%が英語で書かれているともいわれる。また天野准教授が生物学の700以上の学術誌を調べたところ、英語以外で書いた論文を発表できるのは21年末時点で46誌(6%)だけだった。非英語圏の研究者も英語で論文を書かないと業績をあげにくい・・・
・・・天野准教授は23年、英語圏以外の研究者は英語の論文を却下される頻度が2.5倍程度も高いという研究を発表した。英国やスペインなど8カ国で初めて英語の論文を発表するなどした若手同士を比べた。論文が受理された場合も英語の表記などを直す頻度は12.5倍に達した。
英語の論文を読み書きするのにも苦労がいる。この研究によると、日本やスペインなどの研究者は英語圏の人々に比べて最大で5〜9割程度余分に時間がかかった。台湾出身で英語を使う苦労をインターネットで発信している米グーグルのアンドリュー・チャン氏は「英語の意味を正確に理解し、円滑に表現するのは大変だ」と話す。
いくつかの研究が示す英語の壁は科学の進歩を阻む恐れもある。天野准教授は非英語圏の研究者が十分に活躍すれば「人材が多様になり、新たな発見や気候変動などの解決策の提案につながる」と話す。言葉の障壁が高いままだと研究者が能力を発揮できずに、科学の発見や知見が生まれにくくなるかもしれない。
壁を取り払うためにはどうすればいいのか。人工知能(AI)は英語の論文を読み解いたり、母語を英訳したりするのに役立つ。天野准教授の論文の共著者である米スタンフォード大学のバレリア・ラミレス・カスタネダ氏は「AIの登場で英語論文を書く手間などを大幅に省けた」と話す。同氏は南米コロンビア出身で母語がスペイン語だ。
英国の生態学会はAIを使って英語の論文を無償で校閲するサービスを提供している。こうした取り組みが広がれば、英語圏以外の研究者が活躍する場が増えそうだ・・・