「身の回りのこと」カテゴリーアーカイブ

美の脇役

朝日新聞の連載「京ものがたり」11月11日の「司馬と井上の二條陣屋。歴史の裏側、見事な美の脇役」に触発されて、井上博道写真『美の脇役』(2005年、光文社、知恵の森文庫)を読みました。というか、そこに載っている美しい写真を見、付されている解説文を読みました。原本は、1961年(昭和36年)に出版されています。京都や奈良を中心に、神社仏閣などの建物や仏像など、ただしその主役ではなく、脇役と言うべきものを、白黒写真に切り取っています。四天王に踏みつけられている邪鬼、建物の木組み、石畳など。解説を読むと、なるほどと思います。出てくる場所の多くは、私も行ったことがあるのですが、「こんなところもあったんだ」「こんな見方もあるのだ」と改めて気づきます。
ところで、原本が出版されたのは昭和36年、今から半世紀前のことです。しかし、ここに載っている光景やモノの多くは、今も健在です(と思います)。取り上げられているモノの多くが、数百年の歴史をへたものですから、彼らにとって、50年くらいはたいした年月ではないのでしょう。「美の脇役」と銘打っていますが、「日本の隠れた伝統の美」という副題も似合うかなと思いました。
版元切れのようですが、アマゾンで中古(ほぼ新品)を買うことができました。便利なものです。

読書案内

月刊『ジャーナリズム』(朝日新聞社)2014年9月号は、「特集 時代を読み解く珠玉の200冊」です。紹介しようと思いつつ、読み終えてないので、放ってありました。いつものことです(反省)。
ジャーナリストや学者が選んだ、お薦めの本です。18人が10冊ずつ、6人が3冊ずつ選んでおられます。
専門家や先達の読書案内は、役に立ちます。本屋で手に取った時に、「まあいいか」と思った本でも、紹介文によって、「この本は、こう読むのか」と、参考になります。既に読んだ本は、「私も読みましたよ」と満足し、買ってあったけど読んでない本も、読もうという気にさせてくれます。
そして読みたくなった本は、紀伊國屋に買いに行ったり、アマゾンで中古の本を注文しては、読み切れずにたまっていくのです・・。
ところで一つ注文を。本の紹介にする際に、著者名、書名、出版元とともに、発行年は重要な要素だと思うのですが。この冊子では、それぞれの本の紹介に、その出版年が添えられていないのです。

文庫本の巻末の解説

岩波書店のPR誌『図書』8月号p32、斎藤美奈子さんの「文庫解説を読む」から。
・・文庫本の巻末についている「解説」はなんのためにあるのだろう。
岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』(ちくま学芸文庫/1992)の「あとがき」には、こんな文章がある。
本書の文庫化に際し、〈わたしがいちばん危惧したのは、それにいわゆる「解説」というものが付けられてしまうのではないかということであった〉。単行本から数年もたたずに文庫本化された本の解説は〈著者への追従か、著者と解説者のあいだの仲間意識の再確認か、さらには解説者自身の小さな自我の発揚かのいずれか〉であり、優れた作品でも、解説のせいで〈現世的な世界に引きずり込まれ、書物が書物としてもっているべき自律性を失ってしまうことになる〉・・
・・古典的書物の解説に求められる要素は、大きく次の3つほどと考えられる。
①テキストの書誌、著者の略歴、本が書かれた時代背景などの「基礎情報」。
②本の特徴、要点、魅力などを述べた読書の指針になる「アシスト情報」。
③以上を踏まえたうえで、その本をいま読む意義を述べた「効能情報」。
①はともかく、問題は②③である。難解すぎて「解説の解説が必要だ」のレベルだったり、「今日もなお本書の意義は失われていない」で終わりだったり・・

2代目の夏椿

玄関横の夏椿が、3輪花を咲かせました。先代を枯らしてしまったので、今年3月に植えてもらった2代目です。早速、花を咲かせました。土も入れ替えたのと、キョーコさんが毎日水をやってくれているので、今度は簡単には枯らしません。
先日から、小さな白い丸いつぼみが膨らんできたので、そろそろと思っていました。きれいな花なのですが、一日しかもちません。はかないところに、また価値があります。

講談社現代新書、50年

講談社現代新書が、創刊50年だそうです。講談社のPR誌『本』で、その特集を組んでいます。
私も、高校生の頃からお世話になりました。岩波新書、中公新書に次いで、この新書を知りました。本棚にたくさん、あのクリーム色の表紙(前の装丁です)が並んでいます。最初は「軽いなあ」というのが感想でした。でも、それが持ち味なのですよね。それぞれの新書(出版社)で「文化」「社風」が違って、特徴があります。
講談社現代新書は、もちろん岩波新書を意識して作られました。そのほか、この特集を読むと、いろいろと創刊当時のいきさつが書いてあります。
戦前にあった岩波文化に対抗した講談社文化を生かしたこと。当時、講談社が落ち込んでいて元気がなかったこと。社内で反対が強く「講談社新書」と名乗ることができずに「現代」が入ったことなど。
岩波新書や中公新書とは違う路線を歩んだことは、正解でしたね。最近はいろんな会社が新書を出していて、本屋で目当ての本を探すのも大変です。