カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

職場の資料整理

先日、職場の資料整理をしました。市町村アカデミーに来てから半年以上が経ちました。
私は、職場で説明を受ける際に、ほとんどの資料はその場で返します。そうしないと、膨大な資料が貯まるのです。とはいえ、いくつかの資料はじっくりと勉強する必要があり、また今後の検討のために保管する資料があります。これが結構貯まるのです。もちろん、私が職員からもらった資料は原本でなく、必要なら担当職員に声をかければもらえるのですが。

年度末や年度初めが、そのよいきっかけですが、学長に就任した当初は、それら資料の重要性の判断がつかず、また分類に悩んでいたのです。半年が経ったことと、新年度が始まったことで、私の仕事のおおよその見取り図ができました。そこで、自信を持って、捨てる判断ができるようなったのです。いくつか手元に置く資料を残して、残りは引き取ってもらいました。手元に残した資料は、分類別に半封筒に入れました。かなりすっきりしました。

職場での資料整理の重要性については、拙著『明るい公務員講座』第4章をご覧ください。心配はそこにも書いたのですが、電子情報の分類と保管です。定期的に整理(分類替え、廃棄)をしないと、どんどん貯まりますよ。もちろん公文書は保存しなければなりませんが、ここで対象となるのは公文書になる前の検討資料などです。
皆さんは、定期的に整理をしていますか。部下や上司に自慢できますか。

社員のやりがいが企業の業績を上げる

5月10日の日経新聞経済教室は、鶴光太郎・慶大教授の「その資本主義、新しい?」でした。
岸田首相が提唱する「新しい資本主義」、アメリカでも見直されつつある「会社は株主のためにある」という考え方、国連が提唱する持続可能な開発目標SDGs)など、現在の資本主義では行き詰まったという意見があります。
他方で、日本においては、失われた30年を反省し、産業再生の途が模索されています。

記事には、次のような指摘があります。
・・・一方、大きな時代・環境変化の中で、時間視野の長さに依存しない「ステークホルダー資本主義2.0」ともいうべき「新しい資本主義」の胎動を感じることも増えた。例えば、今、日本の超優良企業では、働き方改革をさらに進化させ、従業員のウェルビーイング(肉体的、精神的、社会的に良好な状態)を高めることで企業業績を高めようとする取り組みが広まっている。これはやりがいやワーキングエンゲージメント(熱意、活力、没頭)といった要素も含む広い概念だ・・・
・・・(調査では)例えば、従業員のワーキングエンゲージメントが高い企業は利益率も高いという傾向がある・・・また、健康経営の取り組みは企業業績を高めるという分析結果もその好例だ・・・

従業員が仕事に頑張るのは、報酬(給与と地位)とやりがいです。

時間で測る仕事、成果で測る仕事

週休3日を採用する企業の話題が、新聞に出ています。それらによると、1840年代のイギリスで工場の勤務時間を1日12時間から10時間に短縮する運動が盛り上がり、議論になりました。1846年にある工場で実験したら、11時間に減らしても生産量は変わらず、質は向上したのです。
1926年に、ヘンリー・フォードは、給与を下げず週6日勤務を5日勤務に減らしました。数年間の実験で、生産に悪影響が出ないことを確信したのです。

「週4日勤務は、生産性を下げないか」という設問は正しくないでしょう。工場での単純労働なら、このような議論が成り立つのですが、頭を使う仕事では、拘束時間が成果に比例しないのです。
また、在宅勤務を経験して分かったことは、職場に出てこなくてもできる仕事とそうでない仕事があること、時間で測ることのできる仕事と成果物で測ることのできる仕事があることです。
すると、成果で測ることができない仕事では、職場での勤務時間で測るしかないのでしょう。出勤していても成果を出していない社員もいますが、その場合を含めて、勤務時間に対して給与を払う仕組みです。
在宅勤務が変える仕事の仕方2

日本企業の偽りの優しさと社員の甘え

4月18日の日経新聞オピニオン欄、西條都夫・上級論説委員の「日本企業の「偽りの優しさ」 自己決定重視に転換を」から。

・・・「人は城、人は石垣」と言ったのは武田信玄だ。経営の神様と称された松下幸之助は「事業は人なり」という言葉を残した。アベグレン教授は終身雇用などを日本的経営の三種の神器と定義し、日本企業が世界に飛躍した1980年代後半には伊丹敬之教授の『人本主義企業』がベストセラーになった。
いずれも人材の重要性を説く経営思想だが、今の日本企業とそこで働く人の関係性は互いを高めあうような生産的なものだろうか。残念ながら答えは「ノー」だ。

アジア太平洋14カ国・地域を対象にしたパーソル総合研究所の調査では「現在の職場で継続して働きたい人」も「転職意向のある人」も日本が最低だった。つまり今の仕事にたいして愛着はないが、かといってそこを抜け出して新天地に飛び込むほどのエネルギーもない。そんな無気力さの浮かび上がる結果である。
米ギャラップによると、熱意をもって仕事に取り組むさまを示すエンゲージメント指数で日本は139カ国のなかで132位に沈んだ。日本人には受け身の真面目さはあっても、自発的に仕事に向き合う積極性に欠けるのだ。
「楽しい・わくわく」「自信・誇り」といった正の感情より「心配・不安」「怒り・嫌悪」など負の感情をより多くの人が職場で頻繁に経験する――そんな結果を報告したのはリクルートマネジメントソリューションズ(RMS)だ。ネガティブな感情が支配する職場から、大きな成果が生まれないのは自明である。
データを並べていくときりがない。働く人の気持ちや意欲に問題があるのは、もはや疑う余地がないだろう。以前は仕事熱心と称賛された日本人が、なぜこんな事態になってしまったのか。

人的資本の重要性を唱える一橋大学の伊藤邦雄CFO教育研究センター長は「日本の経営者は『人に優しい』という言葉の意味を取り違えてきたのではないか」と指摘する。経営不振の事業があってもそれを閉じたり売ったりするのは「社員がかわいそう」と尻込みする。経営人材の早期選抜に消極的な会社が多いのも「選に漏れた人がふびん」というある種の恩情がある。
とはいえその事業や人を本気で育てるつもりはないので、経営資源は配分しない。結果は「ビジネスはじり貧。社員は飼い殺し状態になり、自己研さん意欲も湧かない。こんな誰も得しない状態が多くの会社で長く続いてきた帰結が今の停滞ではないか」と伊藤氏はいう。

こうした偽りの優しさから抜け出して、職場を活性化するキーワードが「自己決定」だ。働く人一人ひとりが自らの選択に覚悟と責任を持ち、自律的にキャリア形成するのが本来の姿である。人事部の言いなりではなく、自ら選んだ仕事なら熱心に取り組むのは当然だ。「やらされ感」から解放され、生き生きと仕事をする人が増えれば、職場と会社は活気を取り戻す。
仮に失敗しても自発的な挑戦ならそこからの「学び」は大きいはずだ。最近のジョブ型雇用の流行は、日本の職場でもついに自己決定の重要性が認識され始めた証しである。自分の進路に迷う若い世代には、選択を手助けする環境整備が会社の役目だ・・・

部下に任せる

4月27日の日経新聞「私の課長時代」は、野上麻理・GSKコンシューマー・ヘルスケア・ジャパン社長の「「みんな賢いやん」で改心」でした。

入社4年目で、同期で一番に課長級になります。部下は3人、業務目標の半分がビジネス、残り半分が部下の育成です。成果を出すのに必死で、部下を育てるどころか逐一管理するマイクロマネジメントに陥ります。
自ら出なくてもいい会議に同席し、細かい報告を要求します。期待通りでないと「なんで」と責めたくなり、部下は萎縮して負のスパイラルに。人前で叱った部下が会議室から去ることや、ほかの課長級の下に移動した部下が生き生きと働くことも。

周りに任せる部長級の上司には、自然と人が集まっていました。
「なぜそんなに任せられるのですか」と聞くと一言、「だって、みんな賢いやん」
ここで、野上さんは目から鱗が落ちます。