会社の業績低迷と士気の低下

中條高徳著『陸軍士官学校の人間学 戦争で磨かれたリーダーシップ・人材教育・マーケティング』(2010年、講談社+α新書) を読みました。あるところで紹介されていたので。
中條さんは、陸軍士官学校で終戦を迎え、アサヒビールに入社。戦前は75%の市場占有率を持っていた会社が、戦後の解体、キリンビールとの戦いに負けて、キリンが6割・アサヒが1割にまで落ちます。スーパードライをヒットさせて、大逆転した立役者です。そのいきさつは本を読んでいただくとして、次のようなくだりがあります。

キリンの拡大、アサヒの凋落に対し、中條さんたちは危機感を持ちます。ところが、中には「給料はそこそこもらえているし、アサヒは老舗の会社なのだから、変わらなくてもいいでしょう」と言ったり、中條さんが生ビールで勝負しようとしたら「そんな簡単にいくわけがないよ」と反対する人がいます。
会社の上層部には戦前からの社員がいますが、彼らは大卒のエリートで、「人生を比較的スムーズに歩んできた恵まれた人々のせいか、少しでも壁にぶち当たると意気消沈してしまい、陰口をたたいたり、弱音を吐いたりするようになる。
私が恐れたのは、やる気がある他の社員が彼らの影響を受けてしまい、ネガティブな意識が会社全体に広がってしまうことでした。かの有名な「グレシャムの法則」は「悪貨は良貨を駆逐する」と説いていますが、そんな状況に陥ってしまったら、本当にアサヒは死んでしまうと思ったのです」90ページ。

1982年、アサヒビールは業績不振の極みでした。当然、社内には鬱屈したムードが流れていた。
私のように「このままではアサヒは駄目だ。なんとかしなくてはいけない!」という急進派と、「下手に動いて元も子もなくなるより、現状を維持できるよう努めよう」という穏健派、そして「アサヒは老舗の大企業だ。今日明日、会社が潰れるわけじゃない・・・」という無気力派に別れていたのでした。143ページ。
参考「社風をつくる、社風を変える」「組織運営の要諦2