カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

部門を越えた人事異動

日経新聞「私の履歴書」6月27日、中山譲治・第一三共常勤顧問の「バイオ生産」に次のような話が載っていました。

新薬を発売するにあたり、生産要員の確保が問題になりました。生産要員だけでなくそれ以外の部署でも大幅な要員不足が見込まれました。
しかし、各部門の専門性が高く、人事は別々でした。研究開発と営業の2部門に分かれ、ほとんどが同じ部門で定年を迎えます。他部門への異動は少なく、動いた人たちは、元の部署でのエースではないという偏見すらあったのです。

中山社長は、本社の部門長だけでなく関係会社のトップを集め、「異動に際しては量と質の両方を重視し、エースを出して欲しい。第一三共の未来がかかっている」と訴えます。子会社を吸収合併もします。幹部だけでなく、社員の理解と納得を得るべく、努力します。

東日本大震災の際に、被災者支援本部には、霞が関のほぼすべての省庁から職員を出してもらいました。官邸から指示を出してもらい、各省庁もそれに応えてくれました。ありがたかったです。次に私が考えたのは、この優秀な人たちをなるべく早く各省庁に戻すことでした。彼ら彼女らを引き抜かれて、各省庁は困っていたはずですから。

教員の長時間労働の是正

6月13日の日経新聞教育欄に、青木栄一・東北大学教授の「教員の長時間労働の是正 首長・教育長、役割大きく」が載っていました。青木先生は、教育行政学の第一人者です。『文部科学省-揺らぐ日本の教育と学術』(2021年、中公新書)、「福島市いじめ問題対応改善有識者会議

・・・文部科学省による公立小中学校教員などの勤務実態調査は2006、16、22の各年度に行われた。筆者は研究者チームの一員として調査の企画や結果の分析に関わった。
2年度の調査は携わって3回目にして初めて長時間労働の改善が強く推測できる結果となった。1日の勤務時間に当たる在校等時間(速報値)は16年度比で校長、副校長・教頭、教諭の全職種で減少。教諭では平日は小中ともに約30分、休日は小学校で約30分、中学校では約1時間減った。
平均でこれだけ減ったのは大きな改善である。特に部活動休養日を設定した効果は如実に表れた。新型コロナウイルス禍での行事の縮小なども改善につながった可能性がある・・・

・・・さらに、これだけでは限界がある。文科省は残業を月45時間以内とする指針を定めているが、残業が指針の上限以上に相当する教員は小学校で64.5%、中学校で77.1%に上る。
指針を超える教員がかなり存在する以上、教員文化や学校の職場風土にメスを入れる必要がある。そこで筆者が携わった教員の気質に関するパイロット(試行)的調査の結果を参照しながら、変えるべきことは何かを考えてみたい。
この調査で明らかになったのは教員の極めて強い平等意識である。加えて、学校管理職は過酷な長時間労働を耐えて勤続年数を重ねた「サバイバー」だ。
公立学校は女性管理職比率の低さが問題になる業界だが、当然である。男性並みに働けない限り管理職に登用されることはない。調査では管理職の方が一般教員よりもメンタルヘルスが良好でストレス耐性が高く、仕事の進め方が上手であることが分かった。

病気休職者に占める精神疾患を原因とする教員の割合を年代別に見ると、20代で割合が最も高く年代が上がるにつれて低くなる。これは若手のストレス耐性の低さが問題なのではなく、管理職は耐性の低い教員がいても仕事ができる職場をつくらないといけない。
教頭・副校長は全職種の中で最も労働時間が長い。その教頭・副校長が相互監視の場である「大部屋」すなわち職員室にいて、平等主義が強く「自分だけ得や損をするのは嫌」と考える傾向の強い教員同士が集まって仕事をしている。
そこでは働き方改革の機運が生じることはまずなく、同調圧力によって巻き込まれ型残業が生まれる。定時退勤はもってのほかとみなされ、効率性やタイムパフォーマンス(タイパ)は考慮されない・・・

あらこんなところに××が

オクラホマミキサーのメロディーに乗せて、「あらこんなところに牛肉が。玉ねぎ玉ねぎあったわね。ハッシュドビーフ。こんなに美味しく出来ちゃった」という歌を覚えていますか。
1991年に放映された、ハウス食品ハッシュドビーフの宣伝だそうです。若い人は、知らないか。

冷蔵庫や冷凍庫の中で、肉や野菜などが隠れんぼをするのですよね。乾物置き場では、もっと古いものが隠れんぼをしています。その際の歌は、ちあきなおみさんの「喝采」で、「あれは三年前・・・」です。

かつては、執務机の上で書類が積み上げられて、隠れんぼをしました。最近はパソコンのおかげで、紙の書類は減って、電子媒体としてパソコンの中に保管されます。
紙の場合は、積み上げすぎると見栄えが悪く(整理できない奴だと思われる)、倒れてきたり、上司から注意を受けるので、それ以上は保管できません。ところが、パソコンの中は、かなりの容量があります。冷蔵庫と違い、格段に隠れやすいのです。
みなさんの職場では、隠れんぼをさせないために、どのようにしていますか。

ところで、私も高校で踊ったオクラホマミキサー。近年も学校で行われているのでしょうか。女子校や男子校では、難しいですよね。

その場しのぎの繰り返し

5月27日の朝日新聞オピニオン欄、大月規義・編集委員の「続く「その場しのぎ」回るツケ」から。

・・・汚染水と、放射性物質をおおむね抜き取った処理水は、地上タンクにため続けた。13年にはタンクからの水漏れが問題になる。それでも安倍晋三首相(当時)は、汚染水の状況を「アンダーコントロール」と世界に発信した。地元は現実との違いに落胆した。
そんな国と東電が、建屋に入る前の地下水を海に流すために漁業者の説得に使ったのが、処理水は「関係者の理解なしには処分しない」という15年の約束だ。実際は、タンクが敷地に満杯になるまでには「理解」が進むだろうという楽観に過ぎなかった。
3年後には処理水に、取り除かれているはずのストロンチウムなどが基準を超えて含まれていることが発覚。東電は情報をホームページには載せていたと釈明したが、処理問題を話し合う国の会議では説明を省いていた。信頼や理解が地元に根付かないのは、こうした経緯があるためだ。

当座をしのぐ対応は、他にもある。福島県内の除染で出た汚染土を、国は原発近くの双葉、大熊両町の中間貯蔵施設にためている。当初は最終処分場にするはずだったが、「中間貯蔵」と言い換え、「30年後に県外に運び出す」と約束し2町を説得した。その後、除染土の県外搬出は法律に明記されたが、見通しは全く立たない。
国は各地で原発の再稼働や新増設を進めようとしている。だが、増え続ける高レベル放射性廃棄物の処理など、深刻な問題から目をそらし続けた。そのツケが必ずどこかに回ってくることは、福島の現実が示している・・・

リーダーは組織ができない決断をする

5月25日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、星野佳路・星野リゾート代表の「組織ができない決断を」でした。

――コロナ危機からいち早く回復し、攻めに転じています。不安が大きい中、組織をどう動かしましたか。
「組織が決断できないことを決断するのがリーダーの仕事です。組織が決められないこととは、優先順位の変更です。コロナで生き残るために、基本の三大方針として順に『現金をつかみ、はなさない』『人材を維持し復活に備える』『CS(顧客満足)・ブランド戦略の優先順位を下げる』とみんなに伝えました」

「無駄遣いをしてきたわけではないのでコストを削減しましょうといってもできません。ところがトップがCSの優先順位を下げると決めた途端『ここも、あそこも削れる』とアイデアが出てきました。みんながアイデアを出してくれたからGo To キャンペーンが始まる2020年夏まで持ちこたえられました」

「優れたリーダーは、いわゆる『優秀な人』というより、チームをうまくまとめ、フラットな組織でスタッフの力をフレキシブルに活用できる人だと思います」