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地方行財政

三位一体改革73

13日の日経新聞経済教室は、佐藤主光一橋大学助教授の「交付税は財政調整に特化」「補助金で財源保障、機能分離の視点を明確に」でした。(6月13日)
原稿の校正をしていて、HPの間違いを見つけました。「地方案の実現度」の表です。17年秋に官房長官が各省に補助金廃止の割り当て(合計6,300億円)をしました。各省はほとんどそれに答えなかったのですが、いくつかの省が回答しました(合計1,178億円)。もっとも、その中には地方団体が求めていなかったもの(166億円)が含まれていました。それをこの表でどう表示するか、悩ましいのです。例えば、総務省は10億円の割り当てに対し、10億円の満額を回答しました。しかし、そもそも地方団体の要求に、総務省分はなかったのです。今回、各省回答数字を改め、地方案以外は括弧書きにしました。(6月19日)
今日20日の日経新聞は、連載「分権のデザイン、財政から描く」を書いていました。「地方交付税見直し。我田引税、改革遠く」という内容です。夕張市の財政再建団体への記事も、載せていました。(6月20日)
21日の日経新聞は、連載「分権のデザイン、財政から描く」で「自治体の起債自由化、道半ばの市場原理」でした。(6月21日)
21日の日経新聞連載「分権のデザイン、財政から描く」は、人件費の削減でした。(6月22日)
23日の日経新聞連載「分権のデザイン、財政から描く」は、破綻寸前の過疎地でした。(6月23日)
22日の朝日新聞は、坪井ゆづる論説委員と松田京平記者が「骨太、分権置き去り」「作業大詰め、届かぬ地方の声。財政再建に追いやられ」を大きく解説していました。
「昨年までの骨太作りと大きく違う。三位一体改革で論じられた分権の影が薄いのだ。巻き返しを図る自治体側は12年ぶりに、内閣と国会に意見書を提出し、新地方分権推進法の制定を求めるが、地方交付税の減額といった財政再建の大合唱にかき消されている」。ぜひ原文をお読みください。(6月22日)
毎日新聞6月25日の「発言席」は、交付税の削減に関して、井戸敏三兵庫県知事の「過疎地に住むな、なのか」でした。(6月26日)
三位一体改革によって、国と地方の税収配分がどう変わるかを表にして、「国と地方の税源配分」に載せました。また、税目別の国と地方の取り分を図示したものも載せました。どの税金が大きいか、どの税金で地方の取り分が小さいかがよく分かります。「続・進む三位一体改革4」の原稿用に作った表です。自治税務局寺崎補佐の協力を得ました。ご利用ください。(6月23日)
27日から日経新聞で、神野直彦東大教授による「やさしい経済学-地方財政改革」の連載が始まりました。(6月27日)
2日の日経新聞ニュース入門は、地方交付税改革を大きく解説していました。(7月2日)
28日の日経新聞夕刊は、知事に対する地方交付税に関するアンケート結果を載せていました。改革で重視すべき点は、1番が行政サービス維持に必要な財源保障機能の維持、2番が算定・総額決定への自治体の参画、3番が国が特定の事業に誘導する算定方法の廃止、4番が特別会計への直接繰り入れでした。(7月1日)
3日の朝日新聞は、交付税アンケートを大きく載せていました。「削減、小自治体に打撃」です。この記事の当否は別として、近年の交付税の削減は、小規模自治体にきつく利いているはずです。
まず、小さな自治体の方が、交付税依存が大きいのです。同じように交付税が削減されても、財政力の強い団体と弱い団体とでは、効果が違うのです。東京都、名古屋市、過疎の町を比較してみてください。東京都はそもそも交付税をもらっていない、名古屋市は少ししかもらっていないから減っても影響は少ない。ここでは、小さな町=財政力の弱い町と考えています。次に、近年、段階補正と事業費補正を削減しました。これらの補正は全国的な制度ですが、小さな町に大きく利いています。その削減は結果として、小さな町に削減が大きいのです。
この記事では別に、「身にしみる負担」が取り上げられていました。もっとも、これまでその町が独自で行ってきた優遇策が削減されるのなら、それは致し方ないことです。そのための財源を、他の事業を縮小するか増税するかで、確保するしかないのです。どこからも、お金は降ってきません。(7月3日)
(続三位一体改革は?)
7日に、「骨太の方針2006」が閣議決定されました。各紙が、歳出歳入一体改革の具体的方針を決めたことを伝えています。しかし、地方財政・地方交付税については、総額の抑制などが議論になっているだけで、三位一体改革その2や分権については、ほとんど取り上げられていません。8日の日経新聞地方面が、交付税総額減額を回避したことを、いくつかの知事の意見とともに紹介していました。(7月8日)
7日の朝日新聞は、地方交付税に関する全国市区町村アンケート結果を大きく解説していました。小自治体に削減の大波。検診やごみ収集有料化、行政の役割問う機会に。公共事業、実質ゼロも。柱は職員数カット、などの見出しです。(7月7日)
月刊『地方財務』2006年7月号が発行されました。拙稿「続・進む三位一体改革」4が載っています。
早速訂正です。p114資料37の注4で「30.094億円」とあるのは「30,094億円」の間違い、注5で「7.393億円」とあるのは「7,393億円」の間違いです。(7月4日)
遅ればせながら、留守中の記事などを紹介します。
(骨太の方針2006)
11日の朝日新聞では、松田京平記者らが「分権、役割論議から」「骨太方針に一括法見直し。カネの攻防一休み」「闘う知事会、色あせ」を詳しく解説していました。
11日の日経新聞は「財政、次への課題・上」で、地方財政を取り上げていました。「かみ合わぬ国と地方」として、骨太の方針2006で地方財政改革が不十分だった点を指摘しています。「財政優先か地方分権優先かの水掛け論をしている余裕はない。税源と権限を地方に移す基本に沿って、国と地方の関係を一体的に見直し、制度を再設計することが求められている」。
12日の日経新聞経済教室「正念場の財政再建、小泉後の課題2」では、小西左砂夫教授が「地方は財政責任果たせ」「国依存から自立を、相互扶助を軸に収支均衡」を書いておられました。骨太の方針と地方財政の将来像について、バランスよく解説しておられます。ぜひご一読ください。
(全国知事会議)
12、13日と松江市で、全国知事会議が開かれました。
13日の日経新聞地方面では、中西晴史編集委員が、これについて「分権改革、論議今ひとつ」と解説しておられました。「三位一体改革推進も闘う知事会議も消えた。12日の全国知事会議最大のテーマは国・地方の税財政改革(三位一体改革)の第1ラウンドを終えた来年度以降の分権改革の進め方だったが、論議は迫力を欠いた・・」。17日の日経新聞は「全国知事会の研究・上」を載せていました。「色あせる闘う姿勢」「陳情復活、目立つ形骸化」です。(7月17日)
11日の読売新聞「論陣論客」では、増田寛也岩手県知事と堺屋太一さんが、「骨太方針、見えぬ分権改革」のインタビューに答えておられました。14日の読売新聞では青山彰久記者が「岐路に立つ闘う知事会」「分権改革の議論停滞。歳出削減圧力に防戦一方」を解説しておられました。(7月18日)
21日に政府は、先に地方6団体が提出した意見書に対する回答を閣議決定し、全国知事会長らに渡しました。回答は、まだ関係のHPには載っていません。日経新聞21日夕刊などによると、回答は「骨太の方針2006」の引用に終始し、事実上のゼロ回答だということです。(7月23日)
24日の日経新聞は、谷隆徳記者の「全国知事会の研究・下」「かすむ分権の理念。市町村に配慮、守りに腐心」を載せていました。「最近の知事会の議論は低調だ・・」「各県トップが一堂に会する知事会議は本来、もう一つの政府である。国のかたちを論議するふさわしい場だ。地方から矢継ぎ早に改革案を突き付けないと、分権改革は小休止になりかねない。知事会の真価が問われている」(7月24日)
産経新聞は25日から、「小泉構造改革の決算」を連載しています。第1回は、規制緩和でした。第2回の今日は、三位一体改革です。「三位一体改革は、地元に補助金を運ぶ代わりに票を集めた地方選出議員にとって最も痛い改革になった」「三位一体改革は、地方財政が抱える問題点を浮き彫りにした。しかし、地方の自立に向けた処方箋は示されていない」。(7月26日)
地方6団体の三位一体改革推進ネットに、6団体からの意見書に対する内閣総理大臣の回答と、それに対する6団体の評価が載っています。(7月26日)
28日の毎日新聞連載「縦並び社会、格差克服への提言」では、「地方の自立へ向けて」として、長野県栄村村長が「交付税を本来の姿に」、石原信雄さんが「経済の原則を抑えると活力がなくなるが、放置すると地域格差が大きくなる。その格差に政治がどうかかわるかが重要だ。ある程度の地域格差はしかたがない。しかし、東京一極集中を放っておくと地方の購買力が低下し、企業の経営や経済全体にも跳ね返ってくる・・・東京に本店のある企業が納める法人税などは、全国で上げた利益によってもたらされる。都会が地方に税金を回すのは当然だ・・・中央省庁が持つ経済政策の権限を道州制で地方に移し、地域が企業にとって魅力ある施策を打ち出せるようにすることも不可欠だ・・」といった趣旨のことを主張しておられます。(7月30日)

国と地方の税源配分

平成18年度
1 国と地方の税源配分(総額)
平成18年度国の予算と地方財政計画の税収を基に、三位一体改革による3兆円の税源移譲を加味した税源配分の姿です。
(税源配分)
現在(A)、国の税収が51兆円、地方の税収が35兆円で、合計86兆円です。国と地方の配分割合は、59:41です。
ここから3兆円地方へ税源移譲すると(C)、国税は48兆円、地方税は38兆円になります。3兆円は86兆円の3%強に当たりますから、3ポイント国から地方へ移ります。税源移譲後の配分割合は、56:44になります。
この時点で、国税と地方税の税収の差は10兆円ですから、あと5兆円税源移譲をすると、国と地方が5:5になるということです。特に、個人所得課税は今回の税源移譲で、B63:37からD51:49になります。大まかに言って、6:4から5:5になります。
平成19年度に税源移譲が実行されると、このようになります。もっとも、それまでに定率減税が廃止されたり、景気動向によって税収が変化しますので、この数字にはなりません。あくまで、18年度予算を基にした試算です。また、地方税収には、このほかに法定外税があります。
(実質配分)
さらに、この国税(C)の中から、交付税や譲与税が地方に配分されますから、地方の取り分はもっと大きくなります。その試算がEです。交付税(法人税については平成19年度以降に適用される34%を用いてあります)、譲与税、地方道路整備臨時交付金を地方の取り分として試算してあります。これでは、国対地方は40:60になります。
単位:兆円
国税
地方税
合計
現行A
50.9(59%)
34.9(41%)
85.8
うち個人所得課税B
15.8(63%)
9.1(37%)
24.9
3兆円税源移譲試算C
47.9(56%)
37.9(44%)
85.8
うち個人所得課税D
12.8(51%)
12.1(49%)
24.9
交付税等を加味E
34.0(40%)
51.8(60%)
85.5

国税は、特別会計分を含む。

地方税は、地方財政計画額。
個人所得課税は、所得税、個人住民税、個人事業税です。
2 課税客体別国と地方の税源配分・税収配分(2006年度試算)
上の表の試算Cを、個人所得課税・法人課税・消費税・資産課税などに分けて、金額の大きさを図示したのが、次の表(エクセル)です。
この図では、縦の幅が課税客体別の税収の割合です。その中を、「国税のうち国の取り分」「国税のうち地方の取り分」「地方税」に色分けしてあります。どの税目が大きいか、どの税目で地方の取り分が少ないかが、一目瞭然です。これで見ると、たばこ税や酒税って小さいですね。消費税での地方配分の小ささがよくわかります。
このHPにうまく描けないので、エクセルファイルで貼り付けてあります。開いてみてください。作成協力:自治税務局寺崎補佐

地方案の実現度

(平成16年)
平成16年8月に、地方6団体が、政府の依頼により国庫補助負担金の廃止案を提出しました。それに対する各省の対応(回答)と、政府決定を表にしました。この表を見ると、改めて各省の「不熱心さ」、首相指示への抵抗がよく見えますね。
表中「16年度決定分」とは16年中の経過を書いたもので、政府与党合意は17年度と18年度に実行されます。
(平成17年)
また、17年春には、政府は未達成の6,000億円分の案の作成を、再度依頼しました。地方団体は、約1兆円の案をもって、答えました。17年11月の決着は、表の通りです。
なお、17年度決定の各省回答額は、次のような経過をたどりました。
官房長官からの指示に対し、各省の回答(10月17日)はゼロでした。次に、官房長官から各省に割り当て(合計6,300億円)が行われましたが、それに対しては11月14日に289億円の回答、再度の要請に対して11月21日に269億円、25日に620億円の回答がありました。これらの合計は1,178億円ですが、この中には地方案になかった166億円が含まれており、それを除くと地方案に対しては1,012億円の回答となります。
地方6団体は、当初提案した改革案3兆2,282億円に対し、達成したものは3,893億円で12.1%、義務教育を含めると1兆2,393億円で38.4%と計算しています。
表1 補助金の性質別             (単位億円)
平成16年度決定分
平成17年度決定分
 合計   
 地方案 
各省回答
  成果  
 地方案 
各省回答
  成果   
補助金(経常)
5,742
229
980
2,185
421
421
負担金(経常)
6,437
581
1,232
2,584
591
591
施設整備
5,712
0
0
5,203
0
670
公共事業
5,889
0
0
0
0
0
義務教育
8,504
0
8,500
0
0
0
小計
32,284
810
10,711
9,973
1,012
1,682
12,393
国民健康保険
6,851
平成16年度分
7,093
児童手当など
166
4,862
合計
32,284
810
24,655
9,973
1,178
6,544
31,199
表2 補助金の省庁別
平成16年度決定分
平成17年度決定分
合計
地方案
各省回答
 成果 
地方案
割り当て
各省回答
成果 
内閣府
11
0
0
0
0
総務省
95
95
87
0
10以上
(10)
0
文部科学省
11,458
0
8,707
1,427
170以上
0
170
厚生労働省
9,454
713
876
4,762
5,040以上
109
609
農林水産省
3,089
0
247
359
340以上
(118) 222
222
経済産業省
281
3
126
101
70以上
59
59
国土交通省
6,598
0
641
2,448
620以上
620
620
環境省
1,298
0
27
876
50以上
(38) 2
2
小計
32,284
810
10,711
9,973
6,300以上
1,012
1,682
12,393
国民健康保険
6,851
平成16年度分
7,093
介護その他
166
1,479
児童扶養手当
1,805
児童手当
1,578
合計
32,284
810
24,655
9,973
1,178
6,544
31,199
( )書きは、各省回答のうち地方案にないもの。166の内訳。
2006年6月19日訂正
(協力 小椋純一郎事務官、鈴木雄介事務官)

三位一体改革72

23日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」では、谷隆徳編集委員が、地方6団体の交付税改革案を解説していました。交付税削減の声に対抗して、改革案を提示しているという点です。(5月23日)
(マスコミ)
昨日、朝日新聞社説「交付税改革、分権進めて『共有税』に」を紹介しました。今日、HPの読者から、お便りをいただきました。「昨日の朝日新聞社説は、地方寄りだけれど、制度の中身を理解したうえでの社説のように感じました。それに比べ、今日23日の読売新聞社説は、制度理解がないまま、財務省の話をそのまま載せたように感じます」。読者にこう読まれるようでは、Y社の社説も・・・。また、振り付けた××省も・・・ですね。新聞がどのようなもであるかといったことが、国民に理解されることは重要なことだと思います。そういえば、Y社は、一昨年昨年に、教育関係者による「国庫負担金がなければ教育が守れない」という趣旨の全面広告を載せた新聞でした。 (5月23日)
24日の読売新聞では、青山彰久記者が「地方が意見提出権行使へ。国の制度改革に参加」を書いておられました。提出権は、地方6団体が、地方自治に影響を及ぼす法律などについて、内閣や国会に意見を提出することができるというものです。12年前に一度使われ、それが前回の分権改革につながりました。(5月24日)
26日に竹中大臣の「地方分権21世紀ビジョン懇談会」が、最終報告書案をまとめたそうです。27日朝の日経新聞は、大きく伝えていました。ただし、日経新聞p3の解説では、交付税の総額は2006年度で14.6兆円、最も多い時期で17兆円余りと書いてあります。????。地方団体に配分される交付税総額は、2006年度は15.9兆円です。最も多かったのは、2000年度の21兆円です。たぶん、日経新聞の記事は、国の予算、しかも一般会計の歳出予算額ではないでしょうか。少なくとも、総務省詰めの記者、地方交付税を知っている記者が書いたようではないようです。あるいは、単純な間違いかもしれません。私が間違っていたら、ごめんなさい。地方財政関係者は、私が指摘なくてもおわかりでしょうが、念のため書いておきます。(5月27日)
28日の日経新聞社説は、「地方の自立につながる行財政改革を」でした。(5月28日)
(進まない改革)
31日の日経新聞地域面に、「知事会議、交付税に沸騰」が載っていました。30日に開かれた全国知事会議で、「知事らが政府主導で進む地方交付税改革論議に対する不満を相次いで表明した」とのことです。何人かの知事の発言内容も、紹介されていました。
(三位一体改革第2期はどうなった)
昨年までの3年間、知事会議は三位一体改革に期待をかけ、攻勢に出ていました。政府からの「補助金廃止案をまとめよ」との試験にも、答えました。それに比べると、今年は全く様変わりです。三位一体改革第2期の見通しも立ちません。なぜ、こうなったのでしょうか。
(地方の意向は)
また、地方交付税は、「地方団体固有の共通財源」とされています。交付税のあり方を議論する際に、地方の意向が反映されてしかるべきです。配分を受ける立場としても、地方団体の意向を聞くべきでしょう。さらに、国と地方は対等の立場になったのです。最近の議論の進み方は、この点から問題があるように思います。(5月31日)
2日の読売新聞「論点」は、麻生全国知事会長の「地方分権改革の行方、安定した交付税に再構築」でした。「地方分権改革はどこへいってしまうのか。政府の経済財政諮問会議で進んでいる『骨太の方針2006』の議論には危機感を抱く。基礎的財政収支を黒字化するための方策、財政の帳尻合わせの議論しか聞こえてこない。分権改革とは、無縁のものになっている」
諮問会議は、平成13年に国の財政再建の議論から始まりました。最初から、国の財政再建のために、公共事業・社会福祉とともに、地方財政・交付税が削減の対象になったのです。それを、補助金改革・税源移譲と「心中」させたのが、片山大臣の「三位一体改革」提案だったのです。この経緯は、「進む三位一体改革ーその評価と課題」をご覧ください。
諮問会議に分権を期待しても、無理があります。地方が圧力をかけない限り、国は動きません。先日も書きましたが、このままでは、三位一体改革は、2006年度は「一休み」になってしまいます。(6月2日)
4日の産経新聞「紙面批評」では、五十嵐敬喜さんが「自治体の多様な事情に視点を」として、「骨太の方針2006」に向けての交付税圧縮議論についての各紙の主張を批評していました。「産経や読売が強調するように、職員厚遇や無駄な公共事業など地方が抱える問題も少なくないが、地方交付税の削減で国が財政再建を果たしたとしても、その結果税収が少ない自治体と財政力のある自治体の格差が広がるのであれば社会は、むしろ不安定になる。地方経費の膨張の背景に、地方団体が国の政策の実行機関として位置づけられてきた構造的な要因があることを踏まえると、国の関与を減らす仕組みづくりが税財政改革の重要な視点だ」
「地方の歳出削減への取り組みぶりに加え、『貧しい地方』が全国水準の行政サービスを維持できなくなっている事例はないのかという点にも留意して改革の現場に関する記事をさらに充実させてほしい」(6月5日)
読売新聞7日夕刊は、次のように伝えています。
「地方6団体代表は7日昼、総務省で竹中総務相と会い、『国と地方の協議の場』の法定化などを求めた『地方分権の推進に関する意見書』を提出した。同日午後、河野衆院議長と扇参院議長にも提出する。内閣と国会に対する意見提出を認めた地方自治法の規定に基づくもので、地方6団体がこの意見提出権を行使したのは、12年ぶり2度目」
この4年間、このような意見書を出さなかったのに、三位一体改革は進みました。なぜ、今、このような行動になるのか。今執筆中の「続・進む三位一体改革」続編(月刊「地方財務」6月末発行号に載る予定)では、なぜ改革は進んだか、なぜ進まないかを解説する予定です。(6月7日)
8日の読売新聞は「分権改革停滞に危機感。地方6団体、12年ぶりに意見書」を大きく伝えていました。「分権改革では、昨年まで政府と地方6団体が進めてきた三位一体改革の後の道筋が定まっていない。一方で、政府・与党が進める歳出・歳入一体改革では、地方財政の歳出削減が大きな焦点となり、国税の一部を地方交付税として地方に配分する割合である『法定率』の引き下げも取りざたされている。地方には『分権改革は置き去りにし、歳出削減を押しつけようとしている』という反発が強い」「6団体は7日、以前から求めていた政府の経済財政諮問会議への出席をようやく実現させた」「日ごろは足並みをそろえる地方6団体と総務省の呼吸も、最近は微妙にズレている」(6月8日)
経済財政諮問会議での地方6団体の主張は、次の通りです。
1 “国から地方へ”の改革に終わりはなく、平成19年度以降もさらなる地方分権改革を行う必要がある。地方六団体は、分権型社会のビジョンとして7つの提言をまとめ、地方自治法に基づき、内閣と国会に対し意見書として提出した。以下のような改革を、パッケージとして実施すべきである。
・「新地方分権推進法」を制定すること
・「国と地方の協議の場」の法定化し、「地方行財政会議」を設置すること
・地方が担う事務と責任に見合う国と地方の税源配分とし、地方税の充実強化により地方の自立を図ること
・ 地方交付税が、地方の固有財源であることを明確にするため「地方共有税」とすること
・地方の改革案を実現し、国庫補助負担金の総件数を半減(一般財源化)すること
2 地方の歳出の大半は、国が法令等によりその実施を義務付けたり、配置基準を設定しているもの、あるいは国庫補助負担金に伴い支出するものである。さらなる歳出削減を進める場合は、国による関与、義務付けの廃止・縮小、国庫補助負担金の廃止、国と地方の二重行政の排除などを推進し、国・地方が一体となって削減努力を行っていくべきである。
3 公営企業金融公庫改革について
公営企業金融公庫の廃止後については“国から地方へ”の流れに沿って、地方自らが主体となる全国ベースの共同法人を設立し、個々の地方団体の資金調達の補完を自律的に行っていきたい。
4 “骨太の方針”の取りまとめに際しては、以上のような地方財政の自立に繋がる改革を盛り込むべきである。平成19年度以降の地方分権改革を進めるため「国と地方の協議の場」を早期に再開することを求める。
(6月9日)
地方6団体から、自治法に基づく国への意見書の提出、経済財政諮問会議への出席と、国と地方の関係を変える動きが続いています。これに関連して、地方自治法の改正を紹介しておきます。
先日成立した地方自治法改正には、国から地方6団体への報提供制度が創設されました。すなわち、国が新たに地方団体に事務や負担を義務づける施策を立案する際には、事前に地方六団体に内容を知らせなければならないことになったのです。これまでも、各省は総務省に協議しなければなりませんでした。また、地方団体には、各省から事前にお知らせすることはありましたが、今回はそれが義務づけられたのです。施行はまだですが、これも一つの前進でしょう。(6月10日)

2006.06.02

大阪市立大学の北村亘先生たちが、「テキストブック地方自治」(村松岐夫編、東洋経済新報社)を出版されました。はしがきには、「本書は、地方分権改革以後の地方自治の教科書である。・・この間、地方自治の教科書は、内容を大きく変える必要に迫られていた。しかし、地方分権改革以後、政治、法律、財政をはじめ、多少の個別分野を内容に含んだ地方自治の教科書はない」とあります。どうぞご覧ください。