カテゴリーアーカイブ:行政

仙台放送に出ました、震災15年その2

2026年9月16日   岡本全勝

「仙台放送に出ました、震災15年」の続きです。
仙台放送『東日本大震災・復興検証42兆円のゆくえ』の第6回に、「「確かなことは何もないということだけが確か」 復興庁元事務次官が語る、復興の反省と教訓」(9月16日)が載りました。

・・・東日本大震災から15年。復興庁の元事務次官として復興の現場に携わった岡本全勝さんは、道路や住宅、堤防などのインフラ復旧が進んだ一方で、人口減少地域におけるまちづくりや産業の再生には課題が残ると振り返る。集団移転や公共施設の整備をめぐる反省、そして次の大規模災害に生かすべき教訓について聞いた・・・

―半島部の小さな集落については、どのような課題があるのか。

宮城県・石巻市を例にすると、半島部にはいくつもの集落が点在している。入江ごとに漁港があり、そこに漁民が住んでいる。そのため、漁港を復旧し、海の近くは危険なので、すぐ後ろ山を造成して集落を移す。私も当初、当然だと思ったが、完成後に住民の意見を聞くと、別の方法もあったのではないかと思うようになった。
小さな集落には、学校も病院も商店もない。子育て世代は町の中心部まで学校や保育園、商店を利用しに行く。高齢者も病院へ通わなければならない。それなら、住宅は市街地の近くに整備し、漁業に携わる人が車で漁港へ通うほうが良いのではないかと。会社員が自宅から職場へ通勤するのと同じだ。
昔は集落の中で生活が完結していたのだろう。しかし、今の時代、学校や病院、商店がない場所は住みにくい。市街地の近くに住宅を集め、働く人が漁港や漁場へ通う方が、住民にとっても便利だったのではないかと思う。小さな集落をたくさん再建すれば、上下水道などの整備費も維持管理費もかかる。20年後、30年後に集落を維持するのは難しい。後継者がいなければ、空き家も増えるだろう。なぜ「住宅と職場を逆転させる」という発想がなかったのか。完成してから、そう考えるようになった。この問題は能登半島地震の被災地でも同じことが言えると思う。

―人口減少を前提にした場合、どのような整備が考えられるのか。

施設ごとに考える必要がある。学校は、将来、子どもの数が減ることが分かっていても、今いる子どもたちのために整えなければならない。住宅も同じで高齢者が多いからと言って、最初から減らすことは難しい。ただし、「場所」を変えることはできる。小さな学校や住宅を離れた場所に整備するのではなく、市の中心部に寄せて通ってもらう、あるいは住んでもらうという考え方だ。
市役所や文化会館については、この際立派なものを造りたいという自治体側の思いもあっただろう。今回の復旧・復興は全額が国費で、自治体の負担がなかった。もし市町村にも少し負担があれば、もう少し考えてもらえたのかもしれない。これは、その後の課題の一つだ。

綸言汗の如し

2026年9月15日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」に、総理の発言も、職員が書き取って、組織的に共用し、持っているものなら、行政文書に当たると書きました。そして、「その中には政策の基礎となった総理指示などもあり、行政文書の中でも重要ですから、1に準じた扱いをすべきでしょう。なお、この場合は行政文書ですから、総理自身も持ち帰ったり、後で直したり廃棄したりすることはできません。総理も「自らの発言は記録として残る」と自覚して、発言するべきです」と書きました。

「綸言汗の如し」という言葉を思い出しました。
元は中国古典の言葉で、皇帝が一旦発した言葉(綸言)は取り消したり訂正することができないという意味です。日本では、天皇の言葉について使われました。
他方で、「過ちては改むるに憚ること勿れ」という格言もあります。

若い日本人の持つ能力の生かし方

2026年9月14日   岡本全勝

9月9日の各紙が、世界各国の学習到達度調査(PISA)の結果を報道していました。例えば、朝日新聞「数学・科学、世界上位を維持 読解力やや低下 15歳国際調査」

・・・経済協力開発機構(OECD)は8日、世界の15歳を対象に、2025年に実施した学習到達度調査(PISA〈ピザ〉)の結果を公表した。日本の順位は「科学コンピテンシー(課題解決力)」が5位(前回22年調査で2位)、「読解力」が4位(同3位)、「数学的リテラシー」は5位(同5位)と上位を維持した。
PISAは00年から3~4年ごとに実施。3分野に即した文章やグラフを読み解く問題で、知識や技能を実生活の課題解決に活用する力を測る。25年の調査には91の国と地域から約76万人が参加し、日本では高校1年生約6500人が受けた。

OECD加盟国(38カ国)全体の科学コンピテンシーの平均得点は、前回と有意な差はなかったが、読解力や数学的リテラシーは下がった。一方、日本が低下したと認められるのは、516点から503点に下がった読解力のみで、OECD加盟国の中では初めて全分野で1位となった。
文部科学省は、課題解決能力の育成を重視した学習指導要領の定着や、1人1台の学習端末環境の整備が、好成績につながったと分析している。
日本、OECD全体ともに、AIを学校の学習で適度に採り入れている生徒ほど科学コンピテンシーの得点が高い傾向がみられた。ただ、日本は学校の勉強におけるAIの利用頻度がOECD加盟国で最も低かった。
今回は3分野とは別にプログラミングツールなどの技術を使った課題解決能力を測る調査も行われた。日本の順位は4位で、OECD加盟国では1位だった・・・

記事では、さらに詳しく説明されています。上位にはいますが、課題もあるようです。
ところで大きな疑問は、高校生までは世界でもこんなに優秀なのに、日本経済はなぜダメなのでしょうか。
・この調査で測る能力と、仕事での能力が異なるから
・高校生までは優秀だけど、大学生になると勉強しないから優秀でなくなる
・成人も優秀だけど、その能力を生かし切れない会社や社会が悪い
・・・・

内閣人事局幹部の公務員論

2026年9月13日   岡本全勝

月刊『中央公論』10月号に、青木栄一・東北大教授、北村亘・大阪大学教授、辻恭介・前内閣人事局総括参事官による座談会「内閣人事局の視点から 国家公務員の変貌とあるべき未来」が載っています。お勧めです。関心ある方は、ぜひ記事をお読みください。

青木先生と北村先生は、『現代官僚制の解剖Ⅱ』(2026年、有斐閣)を出版するなど、現在の官僚研究の第一人者です。その質問に、内閣人事局で総括参事官を務めた辻君が答え、また辻君が内閣人事局で考えていたことを語っています。
国家公務員の離職、やりがいと業務負担軽減と給与の上昇の影響、モチベーション、人材不足、特定の省の離職意思、多様化する職歴、中途採用、労働市場と公務員試験、嫌われる地方勤務、人脈づくりで地方公務員に負けていないかなどなど。最近の国家公務員の動きや志向がよくわかります。

この鼎談や『現代官僚制の解剖Ⅱ』を読むと、官僚論が変わったと感じます。かつては、官僚が国家の政策を支えていること、その誇りや権力志向、政策の作り方、関係者との調整を含めた行動論、組織内での競争などが主でした。優秀な若者(かつては男性)が国家のために官僚を目指すこと、そして就職してからは滅私奉公であることは疑われませんでした。ところが、優秀な若者が官僚を目指さなくなり、中途退職も珍しくなくなりました。「官僚の魅力」を説明しなければならなくなったのです。

記事の最後にもあるように、官僚は名前を出さなくなりました。辻君が実名で出て現状を説明し、自分の考えを述べていることは立派です。同僚や後輩たちも、見習ってほしいと思います。
なお、このような発言に対し、匿名の批判がなされることがあります。意見があるのなら、匿名で無責任な批判するのではなく、責任を持って実名で書いてほしいです。

総理の指示書と閣僚の評価

2026年9月12日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第29回「所管のみ、目標なき役所」(7月10日配信)で、次のようなことを指摘しました。
「役所の各部局には、「任務と所管」は定められていても、「目標」は与えられていない。各省設置法や組織令には任務のほか、所掌事務が詳しく書かれていますが、その目標は書かれていない。何が課題なのかを考え、それら課題に優先順位をつけ、いつまでにどのように進めるのかを考える。そして、大臣や首長の了解を取って、部下を指揮して解決に導く。それが幹部の役割だ」

9月9日の日経新聞に「内閣改造、首相指示書が占う「高市人事」」が載っていました。「指示書」と聞いても、知らない人が多いでしょう。総理は内閣発足時に、各閣僚に何をしてほしいかを紙に書いて渡します。それが指示書です。
総理の政策の重点は、国会での所信表明演説や施政方針演説で示されますが、それを各大臣に示したものと言えるでしょう。各省からすると、各省設置法による任務(各省とも広範です)の中で、この内閣が何に力を入れるかが示されることになります。

内容には具体的なものとそうでないものが含まれているようです。しかし、このように項目として指示が出されると、どこまでそれを達成したかが評価できます。もっと知られてもよいことであり、そしてこれによって閣僚を評価するべきです。

ところで、この指示書は役所の文章としては、どのような位置づけにあるのでしょうか。各大臣からは、職員に対しどのようなかたちで指示が降りてきているのでしょうか。
また、これも秘密事項以外は国民にわかるように、総理官邸のホームページなどに載せればよいと思います(すでに載っていたらごめんなさい)。「高市早苗首相の18閣僚への指示書、全文明らかに」(2025年10月23日づけ日経新聞)