カテゴリーアーカイブ:行政

政策立案での人工知能の利用

2026年9月10日   岡本全勝

9月3日の日経新聞に「霞が関にAI課長? 生産性向上に期待、官僚の役割の再設計迫る」が載っていました。機械を使うことで便利になりますが、下請けに出すことですよね。表計算や調べものなどは、効率化できると思います。しかし、企画立案に使うようでは、職員の能力向上にはなりません。難しいところです。

・・・「概算要求に関する財務省への説明にどの資料を持っていけばいいでしょうか」。8月上旬、総務省の若手官僚が問いかけると、間髪を入れずに助言が返ってきた。相談相手はパソコンの画面の向こうにいる「AI(人工知能)課長」だ。
AIが霞が関官僚の育ての親になる――。そんな未来が少しずつ現実味を帯び始めている。
総務省の事業展開技術課。デジタルインフラの海外展開などを所管する部署で今夏から嶋田信哉課長の「分身」のAIが若手官僚の教育係を担う。政策の起案から議員への説明資料の添削、他省庁との交渉術まで何でも相談できる。
AIには経歴や過去の講演資料から生活習慣まで読み込ませ、嶋田氏の仕事の進め方や政策判断の基準を再現できるようにした。所管する海底ケーブルや通信インフラの最新動向も把握する。
課長本人は海外出張で不在の場合も多い。「時間を選ばず何度でも壁打ちができる」と部下からも好評だ。
嶋田氏自身も国際会議でのプレゼン資料のたたき台作りなどを任せている。ブラックとやゆされる霞が関でも定時帰りがほとんどだ。
「下調べを頼むならAIの方が圧倒的に速い」と内閣府の幹部は語る。「部下に頼むことはだいぶ減った」・・・

・・・AIは使い方を誤れば将来の行政能力を損なうもろ刃の剣にもなる。あるベテラン官僚は「目先の生産性は上がっても次の世代を担う人材まで効率よく育つとは限らない」と懸念する。
大臣らが答弁に使うデータを集めたり、他省庁や企業との打ち合わせの準備をしたり。こうした下積みを通じて若手は霞が関特有の仕事を身につけてきた。先輩の判断を間近で学ぶ職場内訓練(OJT)が日常だった。
「答弁作成ではAIを使わないようにしている」。ある省の課長はそう言い切る。組織の経験知が細ることへの危機感が強い。「ただでさえ外注が増えている。そこにAIまで入れば、部下が自分で手を動かす機会がさらに減る」・・・

非公開の与党事前審査

2026年9月9日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」の続きにもなります。
役所の意思決定にかかる文書は、保存され、情報公開の対象となります。
法律や予算については、政府決定の前に、与党審査が必要です。各省の意向だけでは決められず、与党の承認が必要です。そして、しばしばその過程で原案に修正が加えられます。

ところが、その与党審査はほぼ非公開で、記録も残されません(ですよね)。
与党審査に提出した各省の文書は、保存対象の行政文書に該当するでしょうが、それらがどの程度保存されているのか。また、与党による修正過程が残されているのか。
日本の政治を分析する際に、重要な要素だと思うのですが。

官民転職増加、技能の見える化へ

2026年9月9日   岡本全勝

8月25日の日経新聞に「脱ブラック霞が関へ」「給与減っても官僚にカムバック キャリア形成を多様化、魅力に気づき」が載っていました。

・・・2026年の人事院勧告は中央省庁の人材戦略の転換点を映した。公務員離れの打開策を、給与水準や勤務時間の改善から開放的なキャリア形成の提示にまで広げた。「選ばれる公務職場」をめざし、新人から幹部をめざす単線型の職歴の積み方を見直す。

「民間企業に出て国家公務員は国民生活に直結する仕事ができるのが魅力だと再認識した。私のように官民を行き来する人がより増えるといい」。キャリア官僚から民間に転出して出身省庁に戻り、課長級の役職に就いた浅野彰人さん(仮名)は語る。
浅野さんが民間への転出を決意したのは入省15年目だった。異業種で政策立案とは別のスキルを身につけたいと思った。新天地として選んだのは都市開発やスタジアム運営を手がける大手企業だ。開発や経理の部門などを担当した。
カフェでの会議など働き方の自由さに当初はカルチャーショックを受けた。しかし、6年ほど働いたころ、国家公務員のやりがいに気づき、戻ることを決めた。会社の役員には億単位の年収を得る人もいたが、幸せそうに見えなかった。官僚に戻って給料は3分の2に減った。不満はない。民間で培った経営の視点もいかせる。

民間から霞が関へのカムバックを考えるのは浅野さんだけではない。
公務員の経験がある人を含む民間からの志望者を対象に選考する経験者採用の数字に傾向を見てとれる。25年度の申込者数は2360人と、前年度に比べて74.7%増加した。25年度の申込者に対する倍率は4.1倍だった。
人材が霞が関の内外を行き来する開放的な制度が必要だ。事務次官や局長など幹部に就くことが成功とされる単線型のキャリア形成が多様な働き方を狭めてきた・・・

・・・さらに26年の人事院勧告は「成長できる職場の整備」をうたった。目玉の一つは官僚として得られるスキル(技能)の見える化だ。
人事院は6月、中央省庁で身につけられる57種のスキルを一覧にした。①業務②対人③課題解決の3つに分類したのが特徴だ。①は資料作成力や法令・制度への理解、②はプレゼンテーション力やリーダーシップ、③は国際的視野や課題発見力などを求める。
人事院では秋ごろから始める人事異動の希望調査で一覧の活用を始める。現時点のスキルを自覚し、どの場所であれば自分が成長できるかを判断する一助にする。一覧は一般にも公開しており、民間から官僚をめざす人も参考になる。
明治大の出雲明子教授(行政学)は「スキルを定義することにより、民間からの転職希望者が就きたいポストに求められる能力を把握しやすくなる」と話した。

海外に目を向けると、官民を行き来したキャリア形成や省内外での公募制度が定着する。米国では各省庁の上層幹部は政治任用で決まる。民間企業や法律事務所などからの指名は珍しくない。
新卒で採用して人材を育てていく日本の人事制度に近い英国や韓国でも幹部職員にはポストごとの公募制度がある。24〜25年の英国政府の調査によると、部長級以上の任用候補者の13%は直前のポストが民間だった。
韓国も組織内外から幹部ポストを公募するものの、現役官僚で合格者が占められることが多い。職務内容が特殊なため、民間志望者の職歴をどう考慮すればいいか判断が難しいからだ。人事院のスキル一覧はこうした課題の克服につなげる狙いもある。
官民交流には行政という特殊な経験を担った人材を確保できる点で民間にも利点がある。企業側にとっても受け入れ環境の整備が急務だ・・・

総理のSNS投稿は行政文書か3

2026年9月7日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」の続きです。総理の発言などの保存についてです。

3 総理のその他(行政の長として以外)の発言
与党総裁としての発言など。これは、現在の行政文書の定義には含まれないでしょう。しかし、総裁として公約を掲げ、それを総理として実行するなら、これも行政にとって重要な資料です。高市総理のSNSの一部も、これに含まれるでしょう。
総理や大臣に関して、法律を作るか閣議了解などで、これら政務に関する資料を保存するようにしてはどうでしょうか。国立公文書館や国会図書館憲政資料室で保管し、一定年限後に公開するとよいでしょう。

4 総理の個人的記録
総理の日記などです。これも、3と共に重要な資料です。アメリカの大統領博物館などでは、保存・展示されています。総理が歴史に名を残すために、これらも保存・展示する仕組みをつくりたいものです。

理想は官邸内に担当官がいて、総理のところに入った資料、総理や秘書官のメモ、SNS原稿などをまとめて、任期終了後に公文書館に送るなどすると、内閣のよい記録になるでしょう。アメリカのケネディ大統領は記録に残すために、若き政治学者のアーサー・シュレジンジャー・ジュニアをホワイトハウスに補佐官として入れ、情報に接する権限を与えました。その記録を基に書かれたのが『ケネディ――栄光と苦悩の一千日(上・下)』(河出書房、1966年)です。

病児保育、増える利用、苦しい現場

2026年9月7日   岡本全勝

8月21日の朝日新聞に「病児保育、増える利用、苦しい現場」が載っていました。

・・・少子化が進むなかでも、利用者が増加傾向にある病児保育。「予約がとれない」という切実な声も少なくありません。背景には、コロナ禍を経て感染症への向き合い方が変化したこともあるといいます。現状や課題について、全国病児保育協議会の杉野茂人会長(70)に聞きました。

―病児保育の利用者が増加傾向なのはなぜですか。

一つは、社会構造の変化です。共働き家庭がさらに増え、核家族化も進みました。
もう一つは、コロナ禍を経て感染症への考え方が変わったことです。以前は多少の風邪症状があっても保育園などで預かってもらえることもありました。しかし現在は、熱がなくても、感染防止の観点から「念のため」と受診やお迎えを求められるケースが増えています。
単なる「かぜ」ではなく、アデノウイルスや溶連菌などの診断がつくと、保育園では一定期間預かれません。そうした時に、病児保育が必要とされる場面が増えています。

―こども家庭庁の調査では、病児保育が「足りている」「余裕がある」とする自治体が8割にのぼります。それなのに「予約が取りにくい」のはなぜですか。

利用者数と定員数を比べると足りているように見えます。しかし、病児保育が足りているかどうかは、充足率だけでは判断できません。
病児保育で預かる子どもの多くは、急性期の感染症です。施設内で感染が広がらないようにしなければなりません。発熱などの原因が分からない子どももいます。この子とこの子は別の部屋で預かろう、担当する保育士も分けよう、といった、病児保育特有の判断が必要になります。
定員に達していなくても「今日はこれ以上、受け入れない方がいい」と判断することもあります。単に充足率で見るのではなく、一人ひとりが必要な時に、安心して使えたかが大切です。

―同じ調査で、赤字の施設は6割を超えます。運営面の課題は。

まず、季節によってニーズに波があることです。夏や冬の感染症流行期には予約が集中しますが、そうでない時期は1週間以上利用者がゼロということもあります。一方で、人員は確保しておかなければなりません。
さらに、当日キャンセルが相次ぐという問題があります。子どもの体調が回復したのならいいのですが、保護者のなかには「どうしても仕事を休めない。どこかには預けたい」と、複数の施設を予約する人もいます。
病児保育では人数だけでなく、利用する子どもの病状なども踏まえて受け入れを調整します。そのため、利用の可否が決まるのは当日朝になることも少なくありません。キャンセルが出た時点でほかの利用希望者に空きを案内しても、すでに仕事を休んでいるなど、利用につながらないことがあります。一方、施設側は人員を確保しているため、人件費は発生します。
全国調査でも、キャンセル率は5割近くにのぼり、施設運営の面で大きな課題です・・・