また、大橋洋一先生は「グローバル化と行政法」で、国際的約束を実現するために国内法が必要である場合に、法律制定手続きが持つ意味を、次のように整理しておられます。
1 与野党間の利害対立を統制する。
2 実現に向けた行政機関の権限や組織を指定する。
3 実施に向けて紛争が生じた場合の評価規範としての意味を持つ。
4 国民に対して、新規施策を宣伝する。
5 既存法律体系との調整が必要になる。
確かに、果たしている機能から見ると、このようにさまざまな効果があります。
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市町村役場の役割、住民相談
市町村役場では、住民に対し、さまざまな支援(サービス)を提供しています。その一つに、住民相談があります。
どのような肉や野菜を買ったら良いかや、どのような服やスカートが似合うかは、商店に行けば相談に乗ってくれます。しかし、日常の暮らしには、いろんな困りごとや、どうしてよいかわからないことも多いです。子どもの時は、家族や先生に相談し、教えてもらったものです。職場の同僚に教えてもらうことも多いです。最近だと、インターネットで調べたり、聞いたりすることもありますね。
それができない場合、どこで誰に聞けばよいか。親しい人に知られたくないこともあります。でも、直ちに弁護士に相談する人は多くないでしょう。市町村役場が、この機能を担っています。
杉並区の広報4月1日号(p10)に、1ページにわたって、区役所が行っている相談事業が載っていました。
子育てや教育、保健福祉、高齢者、障害者、就労、消費者、家庭内の悩み(離婚、親子の悩み)、住宅、犯罪などなど。ご覧ください。これだけもあるのかと思うとともに、一つひとつなるほどと思うことばかりです。皆さんの住んでいる市町村役場でも、行っています。
相談というのは、見えにくいですが、重要なサービスです。ここで情報を得て安心することもあるでしょうし、それぞれの悩みを解決するために行っている具体サービスや専門窓口(経済支援や入所サービス)に誘導することもあるでしょう。
グローバル化が行政に与えるインパクト
大橋洋一執筆「グローバル化と行政法」(『行政法研究第1号』(2012年9月、信山社)所収)が、勉強になりました。この雑誌は、宇賀克也東大教授が創られた、行政法学のアカデミックな研究論文を掲載する雑誌です。また、大橋先生の論文は、2012年6月にソウルで開催された「東アジア行政法学会第10回大会」の報告の一部です。
詳しくは、論文を読んでいただくとして、私が参考にしたのは、次のような指摘です。
国家を中核的単位として発展してきた行政法学にとって、国家の境界を越えたグローバル化は、大きな変革要因になっている。
グローバル化には、次の3つが含まれている。
1 経済取引が地球規模にまで拡大したことに伴い発生する問題群、「市場のグローバル化問題」。
2 地球規模で人や物、資本ないしサービスが自由に行き来することに伴う問題群、「移動・移転に伴うグローバル化問題」。
3 国家の枠組みを超えて地球規模での対応を必要とする新規政策課題、「地球規模の政策課題としてのグローバル化」。
そして、グローバル化が地球規模の移動を持つ動態的概念であることから、国境という境界線を設定し、その内部での統治、支配、管理、規制といった要素に起源を持つ伝統的国家像に対して修正を迫る傾向を持つ。また、安定的秩序形成を基本的任務としてきた法律制度と法律学に対しても、緊張関係に立つことがある。
国際行政法では、国家の上位に超国家機関を設立して、そこに各国の行政権が持っていた権限を移譲するのではない。従前のように、各国が議会を持ち、行政機関を配置して、国内行政事務に加えて国際行政事項の執行も担わせるという基本形態を維持した上で、国際機関なり国家相互の協議で取り決めた基準や目標を国内において円滑に実現していく。つまり、国家相互間の制度調整問題が、中心的検討事項とされている。
すると、グローバル化は、行政のスタイルの変化も要請する。
例えば、従来の公法学では、行政主体間の調整原理として、官僚組織を念頭に置いた、垂直関係における階層性の調整が重視されてきた。これは指揮監督権に基づく調整ルールである。これに対し、国家相互間の調整や、国内にあっても地方分権や市民に近い行政過程が重視されるようになると、対等主体間の協議ルールや補完性の原則などが重要性を獲得する。従前のように、広域の主体が優位性を誇るといった調整原理ではなく、それぞれの主体が自己の利害や構想を主張する一方で、相手方の利害や立場に対しても敬意を払う相互配慮が調整原理として注目されることになる。
私たち官僚は、行政実務の先端で働いていて、自分が担当している事案や分野では、第一人者になろうと努力しています。しかし、私たちがおかれている環境や課題の変化とそれに対する理論について、全体像を見ることは困難です。マスコミや学者による、鳥瞰図や理論化は、役に立ちます。
サッチャー首相の評価、敵は身内に
イギリスのサッチャー元首相が、4月8日に亡くなりました。衰退したイギリスを立て直したことについての評価は高く、他方、反対者も多いことが取り上げられています。しかし、多くのそして強い反対を押し切って改革を行ったことは、皆が認めるところです。
4月17日の日経新聞経済教室、中西輝政京都大学名誉教授の「サッチャリズムの歴史的評価、党派超え改革路線ひく」から。
・・サッチャー改革の敵は、たしかに野党や労働組合あるいは低所得層の庶民であったかもしれない。しかしその最大の敵は終始、与党・保守党、それも内閣の中にいた「保守穏健派(ウエット)」と称される有力政治家たちであった。市場メカニズムに依拠した経済改革の先陣を切る役割は保守政党によってしか果たし得ないが、その成否は常にこの党内の「ウエット」の抵抗をどう乗り越えるか、という一点にかかっている。
2005年の10月、サッチャーの80歳の誕生パーティーにはエリザベス女王夫妻やトニー・ブレア首相も列席したが、その席上、サッチャー内閣で代表的な「ウエット」の1人でありながら蔵相としてサッチャー改革を支え続けたジェフリー・ハウは、次のように語っている。「サッチャー改革の真の勝利は、(保守党内の抵抗を排して)1つの政党だけでなく2つの政党を変革したことだ。その結果今日、労働党が政権の座に復帰しても、サッチャリズムの大半はもやは不動の政策として受け入れられている」・・
企業の社会的責任
東京財団の亀井善太郎研究員が、「CSR再論―いま、改めてCSRを問い直す」を書いておられます。なかなか興味深いです。
公共空間が、行政だけでなく、企業(市場経済)やボランティア(非営利活動)によって成り立っていることは、このホームページでも、何度も主張しています。また、復興の過程においても、それらが必要であることも取り上げています。例えば、「被災地で考える「町とは何か」~NPOなどと連携した地域経営へ~」(共同通信社のサイト「47ニュース」2012年8月31日)。
企業の社会への貢献は、大きく分けると「善意による支援」と「本業を通じた貢献」の2つになるのでしょう。しかし、多くの人には、前者の義援金、物資の提供、社員のボランティア派遣が、想起されるようです。後者の本業による貢献も、大きいのですが。そこで、復興庁で整理した「民間企業の支援活動の分類」では、最初に事業活動=本業による貢献を書いてあります。
少し範囲が広がりますが、アメリカの大学の教科書に『企業と社会』(邦訳、2012年、ミネルヴァ書房)があります。企業の社会的責任を、広い観点から整理してあります。私は、読みかけて途中で放棄してありますが(反省)。