カテゴリーアーカイブ:行政

福島県飯舘村、ふるさと1億円の活用

2013年3月27日   岡本全勝

読売新聞「時代の証言者」今月は、福島県飯舘村の菅野典雄村長です。寒村の条件の下、酪農を志し、他方で厚い志を持っておられたことが、回顧録として記されています。
飯舘村は、全村避難を余儀なくされています。3.11までは、充実した幸せな生活を送っておられました。最初に村長にお会いした時、「しっかりされた村長だな」と印象を持ちました。その後も、何度もご一緒していますが、私の尊敬する村長の一人です。
村長は、「村が一丸となって帰るのだ」という信念を、当初から持ち続けておられます。この連載には、その背景が、書かれています。例えば、「村おこし」のために、仮装大会の他、さまざまな取り組みをされたようです。3月25日の「世界から村を見なおす」に、次のような話が紹介されています。
村では、若妻たちをヨーロッパに派遣する企画を行いました。「若妻の翼事業」です。引き続き、「嫁・姑、キムチの旅」「心の翼、家族物語」と、若嫁から始まって、年配婦人、親子、おじいちゃんと孫が、海外旅行に行きます。それも、農繁期に行くことで、ありがたさがわかるようにという配慮もしてです。その人たちが、その後の村づくりの人材となります。すばらしいですね。
さらに、この企画が実現できたのは、竹下内閣が「ふるさと創生事業」として配った、「ふるさと1億円」があったからだそうです。
・・・あの資金は、金塊を買うなどの自治体もあって「地方の無駄遣いの温床」と批判されましたが、我々の村では、その後の地域づくりに大変役に立ったのです・・
ふるさと1億円」と聞いても、若い人は知らないでしょうね。昭和63年度(1988年度)の話ですから。四半世紀前の話です。このように役に立って、評価された自治体もあったのです。1億円があったとき、それを生かすも無駄にするのも、首長の識見です。
当時これを、自治省交付税課で担当した補佐が、椎川忍先輩でした。私はその後を引き継いで、平成2年から、地方債と交付税を組み合わせた「地域づくり推進事業」を担当しました。その頃の考え方は、『地方交付税-仕組と機能』に詳しく書きました。

世界のルール作りの舞台

2013年3月18日   岡本全勝

朝日新聞3月17日経済面「波聞風問」原真人編集委員の「TPP交渉参加、G7ラウンドの幕が開く」から。
・・安倍政権が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を決めた。日本のコメや自動車といった個別の利害得失はともかく、世界貿易にとって意味ある出来事だ。なにしろ、20年ぶりとなる新しい世界の通商ルールを作る舞台の幕開けとなるのだから・・
一昨年末、新しい世界の通商ルールをめざしていた世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドが10年間のマラソン交渉の末に失敗した。150に及ぶ国々の利害調整もたいへんだったが、失敗の最大の理由は、米国がまとめようとした合意案を中国やインドがのまなかったことだった。
おかげで、WTOの立法機能は完全に機能不全におちいり、もはやWTOの新ラウンドは永久に立ち直れない、とさえ語られている・・
そこで米国は、中国ぬきのG7ラウンドで世界ルールを決める道を選んだ。それが世界標準となれば中国も無視できず、いずれその輪に加わらざるをえない。米国はおそらく、そんな大きな戦略を描いているのではないか・・

2008年のリーマンショックのあと、世界が協調して、大恐慌になることを防ぎました。1929年の轍を踏まないようにです。そして、自由貿易体制を堅持しさらに拡大すること、他方、リーマンショックの原因となった金融について国際規制をかけることが、当時の合意事項でした。その際には、G8だけでなくG20が舞台でした。麻生総理のお供をして、国際会議に行き、世界の経済とそのルール作り、さらには国際政治が動く現場を見ました(例えば2008年11月のG20、10月30日の経済対策(国内・国際)、合わせて当時の施策体系)。
熱いうちに打たないと、状況はどんどん変化し、提唱は実現しないうちに尻すぼみになります。次に、どのようにアイデアを提唱し、実現していくか。先進国が作ったルールに従うだけでなく、日本もルール作りに関与しなければなりません。それは、日本が繁栄するという観点からであり、世界が繁栄するという観点からです。

国家公務員、心の病

2013年3月16日   岡本全勝

人事院の調査によると、2011年度の長期病休者(病気やけがで1か月以上休んだ)国家公務員は、5,370人、全職員274,973人の約2%でした。うち、男性が4,186人(全男性職員229,601人の1.82%)、女性は1,184人(全女性職員45,372人の2.61%)です。
原因で最も多いのは、「精神及び行動の障害」の3,468人で、約65%を占めています。この数は、1か月以上休んだ職員ですから、職場にはこの数倍の「心の病の職員」がいます。

官僚の仕事は未来との対話

2013年3月9日   岡本全勝

かつて、イギリスの歴史家E・H・カーは、「歴史は、現在と過去との対話である」と表現しました(『歴史とは何か』1962年、岩波新書)。その言葉を借りると、私たち官僚の仕事は、「未来との対話である」とも言えます。
現在の社会が抱える問題に対し、それをどのように解決していくか。目標を立てて、それを解決する政策を進めていきます。課題を設定し、解決策を見いだし、現在ある財源、職員、ノウハウ、情報を動員します。
私たちが見据えなければならないのは、未来であり、責任を取らなければならないのは、将来の国民に対してです。歴史家や学者は過去を分析しますが、官僚は未来を作らなければなりません。
その際に、工程表を作り、関係者を巻き込んでいきます。「できる官僚」とは、それを上手にできるプロデューサーやディレクターでしょう。目標と時間軸と手法を提示して、作戦を実行することです。いつまでに何をするか。それには、どれだけの人や方法を利用できるか。
復興の仕事をしていて、自分の役割を見なおし、そんなことを考えています。

憲法は見なおすものか、不磨の大典か

2013年3月1日   岡本全勝

読売新聞は政治面で「憲法考」を連載しています。2月28日は「改正、世界では当たり前」です。このHPでもかつて紹介しましたが、日本国憲法は1946年の公布以来、半世紀余り一度も改正されていない、世界でも珍しい憲法です。
記事によると、戦後の憲法改正回数は、次の通りです。ドイツ58回、フランス27回、アメリカ6回、カナダ18回、イタリア15回、韓国9回です。この13年間でも、ドイツ11回、フランス10回、イタリア6回、スイス23回です。
もちろん、改正された内容や各国の事情を考慮しなければ、単純な数字の比較は意味がありません。基本的人権の保障などは、改正されないものでしょう。
しかし、憲法は「不磨の大典」(侵すべからず)という考えは、自らの統治構造や基本的人権を自らの力で見直すという民主主義とは相容れません。これまで、民主的と名乗る勢力が「憲法を守れ」と叫んだのは、ラベルの張り間違えか、民主主義のはき違えでしょう。
ところで、私が習った頃の大学の憲法の授業や教科書は、現憲法の解釈が主で、このような考え方もあるとか、このような改正も考えられるといった、未来への思考がありませんでした。
かつてこのHPで、ある教授の「理系の人間から見ると、文系の先生は過去の分析が主で、過去から現在を見て、現在で止まっているように見える。未来のことはあまり語らない。一方、工学は、現在の部分は産業界がやっているで、工学部はいつも5年先、10年先の未来を考えていないと成り立たない」という発言を紹介しました(2005年6月24日の記事