カテゴリーアーカイブ:行政

フランス流バカンスの取り方

2017年5月25日   岡本全勝

5月21日の日経新聞、フロランス・ゴドフェルノーさん(フランスの出版社広報部長で駐日大使夫人)の発言から。
・・・もう5月下旬。私が広報部長を務める出版社では、みんな夏休みの取得予定を申告済みです。5月に入るとすぐにオフィスの壁に夏休みの日程表を貼りだし、希望日を全員が記入します。子どもがいる社員は学校の夏休みに合わせて7月や8月に3週間ほど休暇を取ることが多く、独身の人はその間を避け、6月に休む人もいます。早めに調整すれば、各自が長期間、休みを取っても夏の間オフィスが無人になることはありません・・・
・・・こうやってなんとか確保する8月の3週間の長期休み、私はひたすら「何もしない」ことに徹します・・・

原文をお読みください。

社会的孤立状態にある世帯

2017年5月20日   岡本全勝

全国民生委員児童委員連合会が、「社会的孤立状態にある世帯への支援」を調査し、その結果を公表しています。「朝日新聞の記事」。
今日の大きな社会問題の一つが、社会的孤立です。近年顕著になった問題であり、明確な所管がなく、対処方法も確立していません。問題を抱えた家族が、どこに相談してよいかわからない。あなたがそのような状況になったら、そうでしょう。行政としては、それが一番の問題なのです。

今回の調査は、福祉の第一線で苦労しておられる民生委員さん、23万人に対する調査結果です。詳しくは、調査結果をお読みください。
民生委員の4人に1人が、社会的孤立の人に対応した経験があります。年齢は高齢者が多く、40歳台、50歳台も多いです。
認知症、近隣住民とのトラブル、外出が困難、うつ病、知的障害、引きこもり、ゴミ屋敷などのほかに、親の年金頼みで子が無職、働く意思や教育を受けようとする意思がない、アルコール依存症、不登校、家庭内暴力、高齢者虐待、児童虐待などもあります。
民生委員は、このようなケースを見つけたときは、しかるべき所につなぐのですが、これが難しいのです。対象者は様々な事情を抱え、かつ複数の原因があります。

かつての福祉は、生活保護が中心でした。経済的貧困などです。しかし、人とのつながりがうまくできないという、新しい型の困難が見えてきました。
経済的支援は手法としては比較的に簡単です。しかし、社会的孤立は他者との関係がうまくできないことで、支援者・支援組織との関係も難しいのです。「放っておいてくれ」と言われたらどうするか。「公権力は家庭に踏み込まない」という制約もあります。かつては、個人や家庭の問題だったのが、社会の問題になったのです。

私は、市町村役場に「包括的窓口」をつくる、国にも窓口になる専門部署をつくるべきだと考えています。まずは、そこがすべてを受け付けるのです。そこから、それぞれの専門部署につなぎます。
現状では、民生委員さんに、過重な負担をかけているように思えます。

私は今、大学の授業「公共政策論」で、これら「新しく生まれた社会の問題」を取り上げるところです。かつて、それを含め「社会のリスクの変化と行政の役割」として、連載をしました。一冊の本にまとめておけば良かったのですが、途中で東日本大震災対応に駆りだされ、連載も中断しました。今回は、再度考え方を整理する良い機会です。
このテーマは、私の行政論の柱の一つです。このホームページに「再チャレンジ」という分類があります。第一次安倍政権で、再チャレンジが主要政策になり、私が担当になりました。そこで、この新しい社会の問題、それに行政がどのように対応するかを考えることになりました。その際は、「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』2007年8月号に、まとめておきました(もう10年も経つのですね)。

不人気な政策を通す方法

2017年5月11日   岡本全勝

5月4日の日経新聞経済教室欄、新川敏光・京都大学教授の「シルバー民主主義を考える
不人気政策のリスク分散」から。
・・・政治家の「予想される反応」に基づく行動パターンはその政策がどれだけ人気があるかに左右される。有権者の間で人気の高い政策の場合、政治家は手柄を争う。社会保障・福祉の拡充は間違いなく人気政策なので、選挙時にはどの政党も争ってその拡充を訴える。人気取りのためには、負担には触れないほうがいい。
こうしてわが国では、1980年代に行財政改革が始まるまで、財政的維持可能性を考慮せずに給付拡充が繰り返された。73年に「福祉元年」が唱えられた当時を振り返れば、「老人問題」が注目されるようになり、高齢者への公的支援の拡充は全国民的支持を得ていたといえる。
再選を目指すうえで人気取り以上に重要なのが、不人気政策にコミット(関与)しないことだ。人は、受けた恩は3日で忘れても、足を踏まれた痛みは一生忘れないといわれる。政治家はまず有権者の足を踏まないように気をつけねばならない。社会保障給付の引き下げや資格要件の厳格化は代表的な不人気政策であり、非難を受けやすいため、政治家は関与を嫌う。

しかしどうしてもそうした政策に関わらねばならないとしたら、政治家は様々な戦略を用いて非難を回避しようとするだろう。まず不人気政策を再定義することが考えられる。例えば人気のある政策で支持を取り付けておいて、その政策により不人気政策を正当化する。80年代に行財政改革の旗の下で、老人医療費無料化の廃止、健康保険被保険者本人の自己負担導入、基礎年金導入、拠出給付関係の見直しなどが実現した。
次に官僚や審議会などを前面に押し出して、政治家の存在を目立たないようにすること、すなわち政治家の可視性を低下させることが考えられる。政治家が批判の矢面に立たないようにするのである。
段階的な政策遂行は、政策効果の可視性を低下させる効果を持つ。最終的な効果が非常に不人気なものでも、それが明らかになったときには、もはや非難すべき相手が誰だか分からなくなっているか、既に政治の舞台から退場しているといったことになる。
さらにスケープゴート(いけにえ)戦略がある。手柄争いの結果、制度に欠陥が生じても責任を受益者に押し付けて非難する。高齢者バッシングや専業主婦バッシングにはそうした傾向がみられる・・・

原文をお読みください。

なぜ日本国憲法は改正しなくても済むのか

2017年5月9日   岡本全勝

5月2日の朝日新聞オピニオン欄「憲法を考える、70年変わらない意味」、ケネス・盛・マッケルウェイン東大准教授の発言「少ない分量、詳細は個別立法」から。
・・・国際的に比較して、日本国憲法の目立った特徴は、全体の文章が短いことです。英訳の単語数は4998語で、最も長いインドは14万6千語、平均は2万1千語。日本よりも短いのはアイスランド、モナコなど5カ国だけです。
もう一つの特徴は「長寿」です。70年間一度も改正されていない日本の憲法は、現行憲法としては世界一です。2位はデンマークの63年です。
長期間、日本の憲法が改正されなかったのは、憲法9条をめぐって国論を二分した議論が続いてきたような政治の状況だけでなく、憲法そのものの構造的な理由があったと考えています・・・

・・・まず、分量が少ない日本国憲法は、多くの国では憲法本体に書かれている選挙や地方自治など、統治に関する項目が「法律で定める」とされている場合が多い。ノルウェーのように憲法で選挙区まで定めている国と、公職選挙法を60回近く変えても、憲法を変える必要のない日本とでは憲法改正についての条件が異なるのは当然でしょう。
一方で、人権については、制定当時の国際水準からみると、多くの記述がなされており、先進的でした。そのため、例えば男女同権についての新たな規定を憲法に追加するといった切実な必要性がありませんでした。
短いですが、「人権」には手厚く、「統治」は法律に任せていることが、改正の必要がなかった大きな理由だと考えられます・・・

原文をお読みください。
マッケルウェインさんは、5月3日の読売新聞「憲法施行70年」にも、「9条の現状 とても深刻」を寄稿しておられます。

中北浩爾著「自民党」

2017年5月4日   岡本全勝

中北浩爾著『自民党』(2017年、中公新書)を紹介します。選挙制度改革以降の自民党を、多角的にとらえた好著です。新書というコンパクトな中に、必要なポイントを網羅した、かつそれぞれの分析が適確な本です。自民党を語る際の標準的教科書になると思います。
章立て(分析の視角)が良いですね。派閥、総裁選挙とポスト配分(総裁権力の増大)、政策決定プロセス(事前審査制と官邸主導)、国政選挙、友好団体(減少する票と金)地方組織と個人後援会。
制度と運用の実態の双方から、そしてその関係について適確に分析しています。これだけの内容(特に運用の実態となぜそれが成り立っているか)を書くには、かなりの人に取材をされた結果だと思います。国会議員、党職員、新聞記者・・・。またそれを咀嚼し、全体の中で位置づける能力が必要です。

新書という大きさからの制約ですが、これだけの内容の本なら、もう少し大きな版でも良かったと思います。
その際には、今の国政(自民党一強)を成り立たせている要因=野党である民主党との関係、あるいは民主党との政権担当能力との比較を書いて欲しいです。
また、事前審査制なども良く書かれているのですが、官僚との関係や、国会対策委員なども深掘りして欲しいです。
今後の課題ですが、総裁と国会議員との関係、官邸と党との関係、官邸と霞が関との関係は、制度より運営(リーダーである総理総裁の意思とフォロワーである国会議員の意識)による面が多いので(第1次安倍政権と第2次安倍政権とでは選挙制度や内閣制度は変わっていません)、それらの分析も必要となってくるでしょう。
いずれにしても、自民党、そして現在の日本の政治を語る際に必須の教科書です。「砂原庸介先生の書評」も、お読みください。