カテゴリーアーカイブ:行政

10代の居場所をつくる

2025年7月10日   岡本全勝

6月28日の読売新聞夕刊に「10代の居場所 全国に続々 共働き世帯増、教員不足」が載っていました。

・・・中学生や高校生が安心して過ごせる「居場所」作りに取り組む自治体が増えている。家庭や学校だけでは、悩みが多い若者をサポートできなくなっているからだ。居場所が増えることで、自己肯定感やチャレンジ精神が高まる効果も期待されている。

千葉県柏市のJR柏駅近くにある「中高生の広場」は5月下旬の夕方、70人の中高生でにぎわっていた。
無料の飲み物を手におしゃべりする女子高生や、黙々と自習する男子高生、備品のトランプやボードゲームで盛り上がる中学生もいる。市職員や大学生スタッフの5人は子どもと談笑したり、静かに見守ったりしている。
広場は昨年12月、百貨店だった建物を改装した複合施設の5階に、同市が開設した。月曜日を除く平日は放課後の午後3時半から、土日や長期休みは午前9時から開く。300人以上が集まる日もある。
ボードゲームで遊んでいた高校1年の磯野泰希さん(15)は「無料で自由に過ごせて居心地がいい。秘密基地みたい」と笑顔だ。

居場所作りに取り組む認定NPO法人カタリバ(東京)の調べによると4月時点で、少なくとも40自治体が中高生の居場所を設置している。同法人の吉田愛美さん(33)は「共働き世帯の増加や学校の教員不足もあり、人間関係や進路など悩みの多い10代に、家庭や学校だけで向き合うには限界がある」と指摘する。

こども家庭庁も、2023年末に策定した子どもの居場所作りの指針で、地域のつながりの希薄化や、不登校や虐待の件数が増加する現状を踏まえ、子どもの居場所作りに取り組むよう各自治体に促した。
神奈川県鎌倉市は昨秋、青少年会館の2階に中高生の居場所「COCORU(ココル)かまくら」を新設した。市職員が2人常駐する。市の担当者は「悩みがあっても、学校や家庭で助けを求められない中高生は多い。親や先生以外の地域の大人と信頼関係を築く場所にしたい」と意気込む・・・

福島被災地視察

2025年7月9日   岡本全勝

7月8日9日と、福島県の被災地を視察してきました。原発事故被害地では、避難指示が解除された地域で復興が進んでいます。特に解除が遅くなった町を見てきました。

大熊町では、かなりの面積で稲作が再開されました。田んぼに雑草が生えているのと、稲が育っているのとでは、風景が大きく違います。
最初の復興拠点として開発した大川原地区は、住宅や施設が完成しています。次の拠点となる大野駅前の開発も進み、たくさんの人が作業をしていました。
ゆめの森では、予想以上の数の子どもたちが学んでいます。規格にはめる教育でなく、個性を尊重した教育で、視察も多いとのこと。リンクを張った学校のサイトをお読みください。
双葉町も、駅前の開発が進んでいます。さらに地域を拡大します。工業団地も順次企業が進出しています。浪江町も、駅前開発と工業団地建設が進んでいます。もちろん、まだ着手できない地域もあります。

私は、発災直後は、放射線量の高い地域は、人が戻ることはないだろうと考えました。政府もそれを前提に、全損賠償をしたのです。しかし、放射線量の減衰が予想より早く進み、可能な地域から除染をして、復興拠点を作ることにしました。その際も、ここまで早く街が戻るとは思いませんでした。当時を知る役場幹部と、そのような話をしてきました。
今後も、着実に復興が進むことを期待しています。間違いなく、そのように進むでしょう。先日皇居で、天皇陛下にも「日本国民の力をもってすれば、必ずや復興します。これからもお気にかけてください」と申し上げました。

「サヴァ缶」販売終了へ

2025年7月7日   岡本全勝

6月27日の読売新聞に、「「サヴァ缶」販売終了へ 復興支援の商品」が載っていました。
発売時には、その命名にうなりました。フランス語の「Ça va?」を連想させます。このような理由で販売が終了するとは、残念。

・・・国産のサバを使って岩手県内で製造されていた缶詰「サヴァ缶」が販売を終了する。サバの不漁が主な要因。東日本大震災で被災した漁業者の支援を目的に誕生した人気商品で、惜しむ声が上がっている。
サヴァ缶は2013年に発売。オリーブオイル漬けやレモンバジルなど5種類の洋風な味付けに加え、カラフルなパッケージデザインが話題を呼び、累計約1200万個を売り上げた。

一方で、近年は海水温の上昇などでサバ類の水揚げが減少。同県でも21年の2万6800トンから、24年は1万2200トンにまで落ち込み、継続的な製造が難しくなった。在庫が店頭からなくなれば販売終了となる。商品を扱ってきた「道の駅釜石仙人峠」(釜石市)の佐々木雅浩駅長(63)は「販売終了は地元にとっても大きな損失」と惜しむ。販売元「岩手県産」(矢巾町)の坂本昌樹総務企画課長(47)は「全国で取り扱っていただき感謝している。今後、サヴァ缶に代わる新商品を開発したい」と話している・・・

渕上俊則著『地方自治発展史』

2025年7月6日   岡本全勝

渕上俊則著『地方自治発展史【改訂版】』(2025年、盈進社)を紹介します。
元総務省自治行政局長による、日本の地方自治制度と運用の歴史です。

江戸時代の原型から、明治政府による地方制度の形成、憲法制定と地方制度の確立、その運用と発展、戦時下の地方制度、戦後改革、高度成長期の地方行財政、安定成長期の地方行財政、政治主導型政治と地方自治制度、というような章が並んでいます。それぞれに、丹念に説明されています。最後の章は、今後の動向と課題が述べられています。
450ページに上る、詳しい解説です。日本の地方自治の発展を勉強するには、よい本です。

諸富徹教授、「嫌税」の時代

2025年7月5日   岡本全勝

6月25日の朝日新聞オピニオン欄、諸富徹・京大教授の「「嫌税」の時代」から。

税金や社会保険料への忌避感が世の中で強まっている。政治家たちも「負担減」や「手取り増」を競い合い、来月の参院選は消費税など減税の是非を問う場にもなりそうだ。「嫌税」の状況が生まれた背景に何があるのか。見落とされていることはないか。税と社会保障に詳しい経済学者の諸富徹さんに聞いた。

――いま、なぜ税金がこうも嫌われるのでしょうか。
「物価上昇で低・中所得層に生活苦が広がっていることが大きいと思います。3年ほど前から賃上げが進んでいますが、物価に追いつかず、実質所得はむしろ下がっている。第2次安倍政権では消費増税が2回ありました。社会保険料はその前から上がり続けています。そこにインフレが重なった。ただ、これは直接の原因にすぎません」

――どういうことですか。
「根本の問題は日本の産業競争力が低下し、1990年代以降、賃金水準が横ばいだったことです。非正規雇用は約4割に拡大、経済格差も広がりました。昨年の衆院選では国民民主党が所得減税を訴え、躍進しました。本来、賃上げの不十分さを提起すべきなのに、いくつもの政党が税負担ばかりに焦点を当てたのはミスリードでした」

――なぜそうなりましたか。
「賃上げは民間のことなので、政策ではなかなか難しい。一方、税制は国会が決められる、というのはあったと思います」

――ネット上では税・社会保障の国民負担率が5割近いことを年貢になぞらえ、「五公五民」と批判する声もあります。
「言い得て妙というか、ある種の実態を表しています。江戸時代の農民のように、お上に搾り取られるばかりだと受け止められている。負担とセットで受益を実感できず、納税者の権利や、税のあり方を決めるプロセスへの参加の感覚を持てない。ここに大きな問題があります」

――権利と参加ですか。
「そもそも近代国家の税とは、国民が公的サービスを政府に委託し、やってもらうために払うものです。欧米では市民革命を通して、納税者は税の集め方と使い方を決める権利を持つという原理が確立されました。一方、日本はその経験がないまま明治時代を迎えた。大日本帝国憲法で納税は臣民の義務とされ、財政民主主義、つまり税負担と権利・参加をめぐる議論は深まりませんでした」

――日本国憲法で国民は主権者となり、選挙で政権を選ぶ営みを重ねてきました。税をめぐる意識も変わったのでは。
「確かに消費税の導入や増税への反発で、内閣がいくつも倒れたことがありました。ただ、財政支出や負担のあり方、国家の姿を考え、代わりのビジョンを示すものにはならなかった。今も負担面ばかりが注目され、成熟した権利や参加の意識は根づいていないと思えます」

――何が必要ですか。
「今の現象や不満を、政府や政治家、研究者が真剣に受け止め、改革を進めることです。具体的には、産業構造の転換や生産性向上を通じて、企業が持続的に賃上げを進められる環境を整える。そして若い人への投資を増やし、非正規労働者の待遇も改善する。これらは経済や産業、雇用のあり方に踏み込む難問ですが、放っておけば社会の分断が進み、民主社会の基盤が揺らぐと危惧しています」